コレステロールは血液中の脂質の一種で、人体の形成には必要不可欠な要素であり、体の動きをなめらかにするものです。
善玉(HDL)コレステロールと悪玉(LDL)コレステロールとよく聞かれると思いますが、悪玉コレステロールばかりが悪さをするわけではありません。体内で一定量バランス良く保たれていることが必要です。
コレステロールには、家族歴、普段の食事や運動が大いにかかわってくるので、今回はまず、家族歴のある人のお話から。
「家族性コレステロール高脂血症」と併せて考える
オーストラリアでは、患者さんが若い時から、コレステロール剤を使うことに躊躇する声が医師仲間から聞こえてくることがあります。しかし、40歳未満にもかかわらず、健診などでコレステロール値が高いと指摘された方は、「家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia)」の可能性があります。その場合、家族歴がない人よりも、早期に対応する必要があります。
「家族性高コレステロール血症」の疾患・リスクがある人は、遺伝的に血液中の悪玉コレステロールを適切に処理する能力が低いので、コレステロールの血中濃度が高くなってしまいます。
血管壁にコレステロールがへばりつくと動脈硬化の進行、すなわち血管が細くなり、血管が詰まってしまいます。血管が詰まってしまうと心筋梗塞や狭心症を引き起こします。
症状がないだけに怖い
若い時は、高コレステロール血症の自覚症状などはまったくありません。ただ、人によっては、手、足、まぶたなどの皮膚に黄色いぶつぶつ(コレステロールが沈着して起きる皮膚黄色種)が見られることがあります。 それ以外は、ご自身もいわゆるメタボ(メタボリックシンドローム・生活習慣病)の所見や傾向を通常の生活で感じることはありません。
しかし、家族歴など動脈硬化性疾患リスク因子を抱える人においては、20~30代頃から心筋梗塞を発症するケースがあります。そのため、親、兄弟、叔父、叔母など血縁にコレステロール値が高い人がいる場合は、普段からの生活習慣に気を付けることはもちろん、早期の検査、治療が大変有効となります。
<初期検査>
・絶食時の血液検査
・家族歴調査: 高LDLコレステロール血症、若年(男性55歳以下・女性65歳以下)での心筋梗塞や狭心症の家族がいないか。
<そのほかの検査>
・アキレス腱の厚さのチェック
・頸動脈エコー
・運動負荷心電図、シンチグラフィー
・心臓CT、冠動脈造影検査
などが追加で行われることがあります。
悪玉LDLコレステロール値を下げる努力を
私は、悪玉LDLコレステロールが高い人には、家族歴があるなしにかかわらず、LDL数値を下げるべく指導しています。悪玉LDLコレステロール値が高い=動脈硬化性疾患のリスクが高いと考えて下さい。
但し、悪玉LDLコレステロールをどれほど厳重にコントロールして下げるかについては、個人差があることに留意します。それぞれのリスク因子、そのほかの血液検査結果、プロファイルによります。例えば、善玉HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)、血糖値などとのバランスを見ていきます。
悪玉LDLコレステロール値が高いと言われたら、まずは生活習慣の改善(適度な運動、食習慣の見直し、禁煙など)から始めるようにしましょう。
もし、前回の血液検査がお手元にあれば、ご自身の結果を見直してみることをお勧めします。
次回は、善玉HDLコレステロールや中性脂肪とのバランスについて考えてみます。
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