愛子先生の診察室便り

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検診の受け方を考える その1 - 乳がん検診(2024年7月)- 愛子先生の診療室便り

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検診の受け方を考える その1 - 乳がん検診
 

今回から2回にわたり、オーストラリアでの検診の受け方について考えてみます。1回目は乳がん検診について。

オーストラリアが推奨している乳がん検診とは?
乳がん集団検診(スクリーニング)は、症状が出る前にがんを早期発見して治療することで、乳がんで亡くなる女性を防いだという確固たる研究「Effectiveness of Breast Cancer Screening」に基づき、1980年代から90年代にオーストラリアや他の多くの先進国で導入されました。
このスクリーニングプログラムは、特定の年齢層の女性に焦点をおき、定期的な乳がん検診を提供するものです。 オーストラリアではBreastScreenプログラムと言われ、40歳以上の女性は2年ごとに無料でマンモグラフィ(乳房専用のX線画像診断装置)検査を受けることができます。50~74歳の女性には積極的に参加するよう検診のお知らせが送付されています。

過剰診断もある?
但し、スクリーニングの結果、顕微鏡下では「がん」のように見えたため、治療を即開始したものの、経過観察するだけで大丈夫で、“腫瘍”と見られたものの悪性進行が進むことがなかったケースもたくさん実在します。
この“過剰診断・治療”により、一部の女性は、治療を受けるメリットよりも、むしろ有害となり得る不必要な手術、放射線・ホルモン療法を受けていることも見られます。

先に個々の乳がんリスクを推定する
乳がんで死亡するリスクの減少が、女性の全生存率の改善にどれだけつながるのかは現時点では不明です。そのため、相対的なリスク VS ベネフィットを考える必要があります。
最近では、スクリーニングの恩恵を受ける可能性の高い女性(ハイリスクの女性)を対象に検診として行うことが大事だと考えられています。 このような「リスクベースのアプローチでは、まず、個々の女性の乳がんリスクを以下のような要件から推定することから行います。

・年齢
・乳房の密度
・乳がんの家族歴、遺伝
・BMI
・月経開始年齢と終了年齢、出産歴など

リスクの高い女性は、40歳前でもスクリーニングを開始し、より頻繁にスクリーニングを行う、または感度の高い画像検査を使用することが推奨されます。
反対に、低リスクの女性は、遅めにスクリーニングを開始したり、画像検査を受ける頻度を減らすことが適切となるでしょう。
 「適切な」スクリーニングアプローチの考え方は、がんの早期発見によるスクリーニングの恩恵を受ける可能性が最も高く、少数の女性に時間とリソースを向けるという考え方が進んできています。このアプローチにより、リスクが低い多数の女性が、偽陽性や過剰診断による危害を受ける可能性が軽減されます。

私、そしておそらく殆どの医療従事者の目標とする医療は、患者さんに合わせた診療・検査や治療を考えることです。検査をすることのメリット、デメリット、そして検査結果が陽性・陰性だったらどうするか、ということまでカウンセリングをして、患者さんとチームワークで進めていきたいと思っています。

次回は、ご自身にあった健康チェックについて一緒に考えましょう。

Dr. Aiko Tomita Dr. Aiko Tomita Logo 一人ひとりに向き合った医療を提供
富田愛子 Dr. Aiko(Tiarni)Tomita
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