海外在住日本人向けにオンラインカウンセリングを提供している日本の精神科医/心理士の首藤まり子です。
4月から3ヶ月間、本コラムでメンタルヘルスについて発信しています。最終月の3回目は本格的な冬を迎える季節に合わせたテーマを選んでみました。
はじめに
環境変化はストレスとなり、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性があることは4月にお話ししました。環境変化には「季節変化」も含まれます。寒くなるに従い、インフルエンザや新型コロナ感染症の流行が始まっていますが、今回は冬の季節がメンタルヘルスに与える影響について焦点を当ててみます。
メルボルンの冬
メルボルンの冬は最低気温は平均6°C、最高気温は14°C前後ですが、二つの大きな特徴があります。
① 高い湿度: 平均湿度は75%を超えます。
② 日照時間の大幅な減少: あるデータによると、6月のメルボルンの日照時間は120時間前後まで短くなります。これは1日平均で4時間程度に相当します。
短い日照時間とセロトニン
冬季の曇りがちな天候、とりわけ日照時間の減少は、「セロトニン」と呼ばれる脳内の神経物質の活動を低下させます。「セロトニン」はうつ病の発症に関連する脳内の神経物質として知られていて、日照時間の減少によるセロトニンの機能低下は、「冬季うつ」と呼ばれる不調の原因となります。また日照時間が関係しているため、冬季だけではなく長雨の時期や曇天の時期など、冬以外の悪天候でも同じような不調を認める方がいらっしゃいます。
季節性感情障害
この「秋または冬に抑うつが始まり、春や夏になると治まる」という特有のサイクルを繰り返す気分変動を「反復性冬季うつ病」または季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder; SAD)と呼び、うつ病の一種に分類されます。
【症状】
一般的なうつ病と似ていますが、一般的なうつ病では「眠れない」「食欲がない」ことが多く見られます。SADの場合は「過眠」「食欲が増す」「甘いものが欲しくなる」ことがあります。
治療とセルフケア
【治療】
一般的なうつ病の治療法に準じて行います。実際に医療機関で実施しているところは稀ですが、ユニークな治療法として「光療法」があります。人工的に調整された高照度の強い光を1時間程度浴び、セロトニンの働きを改善させる方法です。通常の室内照明の数十倍の強さの光が必要となりますので、「ライトボックス」と呼ばれる専用のものを使います。
【セルフケア】
◆日光浴: 晴れた日の屋外の光の強さは、治療に用いるライトボックスの強さに近い照度があります。晴れの日が少なくなる冬ですが、可能な範囲で日光浴を行いましょう。また、「朝はなるべく照明で室内を明るくする」「カーテンを開け太陽光を取り入れる」なども効果的です。
◆トリプトファンの摂取: セロトニンの生成に必要なアミノ酸の一種で、健康的な食事であれば不足することはあまりありませんが、以下の食材には比較的トリプトファンが豊富に含まれています。
・バナナ ・大豆製品(豆乳) ・乳製品(牛乳、チーズ)
◆ストレッチなどの軽い運動: セロトニンは運動でも分泌されることが分かっています。
まとめ
メルボルンの冬が本格化するこの時期、適切な知識とセルフケアで、心身ともに健やかな状態を保ちましょう。ご自身でどうにもならない時や辛い時は、我慢する必要はありません。適切なサポートを探しましょう。
3ヶ月という短い間でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。HPの方では引き続きメンタルヘルス情報を発信していきますので、ご興味あればのぞいてみて下さい。
MARIKO COUNSELLING
Mariko Shudo 精神科医/産業医/公認心理士(日本)
・MARIKO’s Wellness (HP)
・カウンセリング詳細/予約
・お問い合わせ E: mariko@doctoraiko.com
一人ひとりに向き合った医療を提供
富田愛子 Dr. Aiko(Tiarni)Tomita
W: doctoraiko.com.au
E: admin@doctoraiko.com 診療場所: MIDTOWN MEDICAL CLINIC メンタルヘルス サポートとして、経験豊富な精神科医首藤まりこ先生が、オンラインカウンセリングをしています。 |