愛子先生の診察室便り

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低い自己肯定感へのアプローチ:精神科医Marikoの視点から(2024年5月)- 愛子先生の診療室便り

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低い自己肯定感へのアプローチ:精神科医Marikoの視点から
 

海外在住日本人向けにオンラインカウンセリングを提供している日本の精神科医/心理士の首藤まり子です。
4月から3ヶ月間、本コラムでメンタルヘルスについて発信しています。2回目は「カウンセリングでよくある相談内容」と、その中から具体的に一例を紹介します。

はじめに
環境変化はストレスとなり、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性があります(前月記事参照)。海外での生活は多くの挑戦や環境変化を伴い、日本とは異なる課題や困難に直面することが多くなります。

カウンセリングでよくある相談内容
以下は、国内海外問わずに共通してみられる相談内容です。

仕事でのストレス: 業務内容や業務負荷、職場の人間関係
低い自己肯定感: 自己評価が低く、自分を好きになれない

一方で海外在住の方の場合、異文化の中での生活や、色々な文化的背景を持つ人とのコミュニケーションから、以下のような悩みを抱えやすいです。

文化的適応の困難: 日本とは異なる行動様式や価値観を理解し、適応していくストレス
孤立感とアイデンティティの喪失: 居場所がないと感じ、アイデンティティを見失う
国際結婚をした場合: パートナーやその家族との付き合い方

これらがいくつか絡み合い「うまくいかない」「私はダメなやつ」と、更なる自己肯定感の低下に繋がることがあります。

カウンセリングケースの一例「自己肯定感が低い」
症例: Aさん(女性)はオーストラリアへ移住し就労している方。仕事もそれなりにこなせているが、なんとなく同僚とのコミュニケーションにぎこちなさを感じ、たわいない会話に入れない。休日は、健康や交友関係を広めるために外出したい、と思うもののなかなか出られない。家事や炊事も、もう少しきちんとしたいのに疲れて手が回らない。

日々の小さな「もやもや」が積み重なり、彼女の自己肯定感は徐々に低下していきました。
【カウンセリングでのアプローチと成果】
Aさんは「こんな自分じゃダメだ」「もっとがんばらないといけない」「周りの人はもっとうまくやっている」と自己評価が低く、とても辛そうでした。そこで自己評価を変えられるようアプローチしました。

①自己受容と自己肯定の重要性を学ぶ
ありのままの自分を受け入れ、否定せず肯定的に受け止めることは、前向きに生きるためにとても大切であると理解してもらう。
②「できていること」「頑張っていること」にも焦点を当てる
「ダメな自分」「できない自分」だけを見るのではなく、その逆の自分にも目を向けてもらうよう、毎日できるごく簡単な課題をこなしてもらう。
③自分の得意は他人の不得意の可能性がある
人はそれぞれ得意不得意があり、「Aさんが得意とすることはBさんの不得意である」可能性がある。またその逆の可能性ももちろんある。つまり、「周りの人よりできない」ことがあると同時に「周りの人よりできている」こともあり、他人と比較する必要があるのか考えてもらう。

セッションを通じて、Aさんの自己評価は次第に「今の自分のありのままで良いのだ」「私も十分がんばっている」と改善していきました。

まとめ
海外生活には特有のストレスや困難があり、それらが組み合わさって自己肯定感の低下につながる方は珍しくありません。カウンセリングは、それらのストレスへの対処スキルを改善させ、自己肯定感を高める一つの解決方法です。

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Mariko Shudo 精神科医/産業医/公認心理士(日本)
・MARIKO’s Wellness (HP)
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