愛子先生の診察室便り

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隠れ肝がん予備軍 - 非アルコール性脂肪肝 (Non Alcoholic Fatty Liver -NAFL)(2023年4月)- 愛子先生の診療室便り

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隠れ肝がん予備軍 - 非アルコール性脂肪肝 (Non Alcoholic Fatty Liver -NAFL)
 

皆さんは血液検査を受けた時に、肝臓の異常を指摘されたことがありますか?
人間ドックなどの統計から、アルコールを飲まないのに「非アルコール性脂肪肝」と判断されるケースが、全体のおよそ35%と推定されています。そのうち約15%は、「非アルコール性脂肪肝炎(Non Alcoholic Steato Hepatitis - NASH)」へ進行すると言われています。この状態を放置しておくと、肝硬変、肝がんへと悪化するので、十分留意する必要があります。

肝臓はアルコールを分解するだけではない
そもそも肝臓には多くの重要な役割があります。ひとつは代謝と言って、胃腸で分解されたものを体内に必要な栄養素に変えて貯蔵・供給していること。また、脂質の消化吸収を助ける胆汁を作り出し、血中コレステロールの濃度の調整もしています。アルコール、食品添加物、アンモニアなどの有害物質を解毒する働きも担っています。

肝臓の病気というと、ウイルスやアルコールなどにより肝細胞を破壊する「急性肝炎」や、多量の飲酒を長年続けていると起こる「アルコール性脂肪肝」を思い浮かべる方が多いと思います。ですが最近では、過食、肥満、運動不足などが原因で「脂肪肝」になる人が増えてきているのです。

脂肪肝とは?
肝細胞の30 %以上に、中性脂肪が溜まっている状態のことを脂肪肝と言います。

<脂肪肝の原因>
●アルコールの過剰摂取。
●非アルコール性(アルコール、ウイルス、薬剤以外)のもの。
・生活習慣の乱れ、肥満、ストレス、運動不足。
・糖尿病、高血圧、脂質異常症などの基礎疾患。
・遺伝
・加齢

<非アルコール性脂肪肝とは>
脂肪肝という名前から、油物の過剰摂取が脂肪肝の原因と思いがちですが、必要以上の糖分や炭水化物の摂取は中性脂肪として肝細胞の中に蓄えられるため、油物をたくさん食べていなくても、脂肪肝が発生します。
脂肪肝になると、肝臓の栄養コントローラーとしての機能バランスが崩れ、肝臓内外で静かなる暴動が起き始めます。結果、肝臓内で炎症(肝炎)が起き、非アルコール性脂肪肝炎となります。その状態を長く繰り返すと、肝臓は硬くなり、肝硬変、更には肝がんに繋がる恐れがあります。

<脂肪肝の症状>
脂肪肝に特化した症状はありません。ただ、血流が悪くなるため、全身に酸素や栄養分がいきわたらず、だるさや疲れを感じるようになります。

<脂肪肝の診断方法>
血液検査、腹部超音波・CTスキャンなどの画像検査を行います。

<脂肪肝の治療法>
●基礎疾患の管理
・糖尿病や高血圧・脂質異常症が原因の場合: それぞれの疾患の治療。
・ウイルス性や自己免疫性などが原因の場合: ウイルス治療や原因薬剤の除去など。
●生活習慣の見直し
・肥満や内臓脂肪が原因の場合: 減量や過度な食事を控える。適度な運動をする。
①食事療法: カロリー制限: 過剰に摂取している炭水化物や脂質を減らし、減量を続ける。現在の体重の7%減量できれば、脂肪肝が改善するという報告があります。また、コーヒーの摂取は1日 1-2杯にとどめる。
②運動療法: 適度な有酸素運動やレジスタンス運動を続ける。
③サプリメントの摂取: ビタミンEは体内の活性酸素を除去し、肝組織を改善するため有効と言われています。

“沈黙の臓器” 肝臓を守る
肝臓には痛みを感じる神経がないので、なんらかの自覚症状が出る頃には、脂肪肝が始まっている可能性があります。脂肪肝を誘発する状態を少しでも減らすべく心掛けることが大切です。

どの疾患も同じですが、最も効果的な治療法は生活習慣を見直すことです。ご自身では健康でいるつもりでも、年齢と共に必要とされるカロリー量や運動も異なってきます。
コロナ禍で生活環境が変わった方も多いと思うので、これを機に掛かり付け医にご相談されてはいかがでしょう。

Dr. Aiko Tomita Dr. Aiko Tomita Logo 一人ひとりに向き合った医療を提供
富田愛子 Dr. Aiko(Tiarni)Tomita
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