
日本では2025年3〜4月の時点で、すでに前年の年間報告数(4,054例)を上回るペースで百日咳が流行しており、大規模な感染拡大が続いています。そしてここオーストラリア・ビクトリア州でも、百日咳の報告数が顕著に増加しています。今回は、百日咳について改めて整理し、予防や対策の重要性を共有したいと思います。
百日咳とは?
百日咳(英語名: Bordetella pertussis、通称 : Whooping cough)は、非常に感染力の強い呼吸器感染症です。感染者の咳やくしゃみによって飛沫が空気中に放出され、それを吸い込むことで周囲の人に感染が広がります。
初期症状は風邪に似ており、くしゃみ、軽い乾いた咳、微熱、鼻水などから始まります。その後、息を吸い込む際に「ヒュー」という特徴的な音(Whooping sound)を伴う激しい咳が出現し、咳は最大で3か月(=約100日)続くこともあります。
ビクトリア州での流行状況
周期的な流行
百日咳は数年ごとに流行が拡大する傾向があり、2024年は例年に比べて著しく高い発生率となりました。
年齢別傾向
報告例の約40%が9〜12歳の学童であり、同時に乳幼児の重症化リスクも高まっています。
感染の特徴
初期は風邪と見分けがつきにくく、治療を受けても咳が数週間から数か月続くことがあります。
百日咳ワクチンについて
オーストラリアでは、百日咳単独のワクチンはなく、『破傷風・ジフテリア・百日咳の3種混合ワクチン(dTpa)』として提供されています。
また、該当者には国家予防接種プログラム (National Immunization Program)で、無料の百日咳ワクチンが提供されています。興味のある方は、コチラのサイト(英語)で確認してください。
接種のポイント
- 乳児: 生後6週から定期予防接種が始まり、複数回の接種が行われます。
- 妊婦: 妊娠20〜32週の間にワクチンを接種することで、胎児に抗体が移行し、出生後の赤ちゃんを守る効果が期待されます。
- 成人および子ども: 必要に応じてブースター接種(追加接種)を行います。免疫を維持するため、10年ごとの接種が推奨されています。
- 症状のある方: 咳などの呼吸器症状がある方は、乳児との接触を控えてください。無症状でも感染源となる可能性があります。
診断と報告診断と報告
検査方法
急性期にはPCR検査や培養検査が有効です。特に咳が強く出ている時期に診断精度が高まります。
報告義務
百日咳はビクトリア州で「報告義務のある感染症(Routine notifiable condition)」に指定されており、診断後5日以内に医療機関や検査機関が保健当局に報告する必要があります。
最後に: 冬の感染症にも注意を
冬季は、百日咳に加えアデノウイルス・ライノウイルス・RSウイルスなどの風邪症候群、さらにはインフルエンザや新型コロナウイルスの流行も重なります。これらの多くにはワクチンがあり、特に高齢者や乳幼児、基礎疾患のある方は予防接種が重要です。また、日頃からの体調管理や睡眠・栄養・手洗いの習慣が、感染症全般の予防に役立ちます。
最近では、薬局でも複数のウイルスに対応した簡易検査キット(インフルエンザ・コロナ・RSウイルス等)が販売されており、「風邪かな?」と思ったときに活用するのも有効な手段です。病院に行くことが辛い時は、オンライン診療などもありますので、かかりつけ医にぜひご相談ください。
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![]() 富田愛子 Dr. Aiko(Tiarni)Tomita
W: doctoraiko.com.au
E: admin@doctoraiko.com 診療場所: MIDTOWN MEDICAL CLINIC メンタルヘルス サポートとして、経験豊富な精神科医首藤まり子先生が、対面/オンラインの両方でカウンセリングをしています。 |