愛子先生の診察室便り

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発達障害シリーズ 第2回 自閉スペクトラム症(2023年8月)- 愛子先生の診療室便り

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発達障害シリーズ 第2回 自閉スペクトラム症
 

発達障害シリーズの2回目は、自閉スペクトラム症(ASD)について考えてみましょう。

どんな特性か
自閉スペクトラム症(ASD)は、言葉や、言葉以外の方法、例えば、表情、視線、身振りなどから相手の考えていることを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが得意ではない、いわゆる“コミュニケーション障害”、そして、特定のことに強い興味や関心を持っていたり、こだわり行動があるといったことによって特徴付けられます。

この障害は先天的な理由、例えば遺伝など、多くの要因が複雑に関与していると言われています。親の子育てが原因となるわけではありません。トラウマなど経験したあと、自分の殻に閉じこもってしまう後天的な病気とも違います。生まれつき、脳内の情報処理をする部位に特性があるため、できることとできないことに極端にばらつきが見られることにより、日常生活で色々な困難が生じてしまいます。

診断基準は?
以下の2つが挙げられます。
1. コミュニケーションが困難である
例: 相手の立場に立って考えることが苦手。言葉を文字通り解釈する。想像力が乏しい。
2. 強いこだわり・興味の偏り・感覚過敏
例: 仕事を忘れてゲームに没頭してしまう。ルーティンに外れたことが困難 。融通がきかない。変化に対する不安や抵抗が大きい。

二次的な症状
上記の症状・特性から周囲から「配慮が足りない」「空気が読めない」と判断され、社会(学校・職場)で浮いてしまうことが多いかもしれません。人間関係で孤立してしまうことから、引きこもりやうつ病を発症してしまうことがあります。
また、不安や恐怖に対して過敏なため、パニック障害や対人恐怖症などの不安症を併発することもあります。
発達障害の別の要因である注意欠陥多動症(ADHD)を合わせ持つこともあります。

これらの特性から、本人が受ける過度なストレスやトラウマが引き金となり、自信喪失し、さまざまな身体症状、そして精神症状が現れるのです。

自閉スペクトラム症(ASD)の二次障害 →引きこもり、暴言・暴力、自傷行為

身体症状例 精神症状例
・頭痛
・腹痛
・食欲不振
・チック
・不安
・うつ
・緊張
・興奮しやすさ

自閉スペクトラム症の治療やサポート
自閉スペクトラム症(ASD)や併存する障害を和らげるのに必要なのは、周囲のサポートです。但し、ASDの二次症状があり、その症状が生活に支障をきたしている場合は、薬物療法を検討します。

現在はさまざまなサポートを受けることが可能です。お子さんの場合は、学校からのサポート、大人の場合は障害者職業センター、発達障害者支援センターなど。サポートグループなどもあります。 その他、GP、ライフコーチ、心理士などのサポートが可能です。

周囲が実践できること
ASDの特性があるに人は、以下のような周囲の理解・支援が必要です。
・過敏症のため過多の刺激を避けるよう環境を整える。
例: 壁向きのデスクを用意する。学校・職場に協力を求めるなど。
・臨機応変を求めない。指示は明確に、具体的に伝える。
例:「ちょっと」ではなく「5分」、「なるべく早く」ではなく「2週間以内」など。
・視覚的に伝える。映像、グラフなどを使用し、明確に意思表示する。

どの年齢においても、自閉スペクトラム症への対応で最も大切なことは、できるだけ早く個人の特性に気付き、周囲が理解・支援し、ストレスを感じにくい生活習慣や環境を整え、二次的な問題を最小限にとどめることです。

ご自身が生きづらいと感じて、困っている場合は、まずGP(一般開業医)に相談しましょう。一人で悩んだり、解決しようとせず、まずは不安要素を共有してみて下さい。

Dr. Aiko Tomita Dr. Aiko Tomita Logo 一人ひとりに向き合った医療を提供
富田愛子 Dr. Aiko(Tiarni)Tomita
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