ちょこっと まめ知識

知っておくとためになる、少し役に立つ雑学集

ハーブのある暮らし 前編

ハーブとは一般的に、根、茎、葉、花などが食用、薬用、香り付けなどに使われる植物を指します。料理用にスーパーで買い求め、使いきれずに冷蔵庫の中でダメにしてしまった…という経験がある方も多いのでは。ハーブはそれぞれの特徴に注意さえすれば、実は育てるのは簡単。自分で育てれば、新鮮なものを必要なときにいつでも収穫できるし、オーガニックで育てるのも簡単、そして何より経済的です。広い庭がなくても、ベランダやキッチンの窓辺に置いたポットで十分育てられます。

これからはハーブを育て始めるのにぴったりの季節。たくさん種類がありますが、どんな料理に使いたいかを考えて自分好みのハーブを選び、そのハーブが好む環境を作ってやるように心掛けましょう。ぜひ、ハーブのある暮らしを楽しんでみて下さい。


BASIL バジル

インド、中東、東南太平洋諸島が原産。地中海地方では何千年にもわたり育てられていますが、その他の西欧諸国に伝わったのは16世紀に入ってから。タイバジルはタイ原産のハーブで、茎は赤、葉は紫がかった色味で、カレーやラクサなどによく使われます。

育てるバジルは半耐寒性の1年草で、収穫は初夏から秋。早春から夏にかけて種をまきます。元々アジアのハーブなので、暖かい気候と湿度を好みます。水はけの良い肥えた土を使い、暖かくて雨風を凌げる日当りの良い場所で育てます。温室や日当りの良いパティオに置いた大きなポットで育てると良く育つほか、キッチンの窓辺などで育てるのにも適しています。太陽の光を好む一方で土の乾燥は嫌います。水は、やり過ぎに注意しながらしっかりと。夕方ではなく朝方に行います。トマトの側で育てれば虫除けになるほか、一緒に水やりと収穫ができ、お勧めです。常に摘んで新しい葉の成長を促しましょう。1年草なので、シーズンの終わりに種を集めたら掘り起こし、翌年の春にまた種をまきます。タイバジルも他のバジルと同じく種から育てられ、高温多湿を好みます。

食べるスイートバジルはトマトやニンニクとよく合います。バジルはぺーストとしてよく使われます。冷凍保存の時は葉の両面にオリーブオイルを塗ると他の葉に付着するのを防げ、香りを閉じ込められます。乾燥は難しいのでお勧めしません。


CORIANDER コリアンダー

ヨーロッパ南部と中東が原産。3000年以上にわたって育てられており、種は紀元前1085年-945年のエジプトのお墓からも見付かっている程。コリアンダーの名はギリシャ語の『koris』に由来します。これは「南京虫」という意味で、独特の強い香りから付けられました。

育てるコリアンダーは耐寒性の1年草で、葉の収穫は初夏から秋の初め、種の収穫は秋。植え替えを嫌うハーブなので、育てる場所に種を直接まいて育てます。春の間に数回に分けて種をまけば、シーズン中いつも新鮮な葉を収穫できます。日当りと水はけの良い場所で育てます。室内でも育てられますが、狭いと育ちにくいので大きめのコンテナを使いましょう。土が乾燥しないように水はたっぷりやりますが、夕方は水をやりすぎないように注意します。葉を常に摘むのがうまく育てるコツです。霜の心配がなければ寒い時期も外に置いて構いません。1年草なので株が成熟すると種をつけます。種からオレンジの香りがし始めたら花のついた茎ごと刈り取り、乾燥させて保存するか、種が緑色の段階で収穫して新鮮なまま使います。株は抜いて処分し、翌春また種をまきます。

食べる葉と種はそれぞれ香りが異なります。種はカレー、トマトチャツネなどによく使われます。つぶしてラタトゥイユに入れるほか、ビスケットやアップルパイに入れるのもお勧めです。そのままスープに入れても楽しめます。葉はカレーやサラダなどアジアや中東の料理によく使われます。


LEMONGRASS レモングラス

インドの熱帯地方が原産ですが、スリランカやウガンダでも広く育てられています。古代エジプト、ギリシャ、ローマ人にも知られ、オーストラリア固有のCymbopogon種は薬草としてアボリジニの人々が使っていました。

育てるレモングラスは非耐寒性の多年草で、収穫の時期は初夏から秋にかけて。春まきで種から育てるか、若い苗の状態から育てます。種から育てるときは十分温かくなってから。発芽には1ヶ月程かかることがあります。スーパーなどで入手した茎から育てることもできます。グラスに張った水の中に、茎の固い部分を漬けておけば数週間で根が伸び、ポットに植え替え、暖かい所で乾燥させないようにすれば緑の葉と新しい茎が生えてきます。暖かい気候を好むので、屋内のポットで室温が7度以下にならないように注意し、育てるのがお勧めです。日当りの良い場所に置き、肥えた土で育てましょう。水を好むので、春から夏の成長期にはしっかりと。冬は殆ど水やりの必要はありませんが、寒さを嫌うので十分暖かい所で育てるようにします。株分けで増やすことができます。

食べる根元から切り取って葉と茎の両方を使います。魚料理に合うほか、タイカレーやラクサなどのアジア料理によく使われます。茎をつぶしてシロップに漬けたものをケーキやプリンにかけたり、ハーブティーやレモネードにして楽しむこともできます。


CHIVE チャイブ

中国では紀元前3000年もの昔から愛されており、優しいネギの味を楽しむだけでなく、解毒や止血に利用されてきました。ヨーロッパで育てられるようになったのは16世紀以降で、マルコポーロによって伝えられました。

育てるチャイブは耐寒性の多年草で、収穫の時期は春から秋にかけて。 苗や株分けで育てられることが多いですが、種からも育てられます。種まきは春になり土が十分温かくなってから、株分けは数年おきの春または秋に行って下さい。他の植物から15cmくらい間隔を空け、程よく日が当たって湿り気のある肥えた土に植えるとよく育ちます。土が痩せていると葉は黄色く、葉先は茶色になってしまいます。水を好むハーブなので、植え替えた春は特にしっかりと水をやり、夏は乾燥しないように気を付けます。花をつけると葉は固くなり味が落ちるので、咲く前に茎ごと取り除きます。冬になると地上部分は枯れますが、春になるとまた育ち始めます。半日陰の窓辺やポットでもよく育ちます。

食べるドライハーブには不向きです。密閉袋で冷蔵庫に1週間保存できるほか、刻んで冷凍も可能です。オムレツや炒り卵などの卵料理やスープ、サラダなどに加えれば、見た目が華やかになり香りも楽しめます。香りが飛ばないように調理の最後に加えます。


DILL ディル

ディルという名は、なだめる、あやすを意味する『dylle、dilla』に由来すると考えられています。5000年前のエジプトの医者が使ったハーブのひとつだと言われており、イギリスにあるローマ時代の遺跡からディルの遺物が見付かっています。

育てるディルは耐寒性の1年草で、葉の収穫は初夏から秋、種の収穫は秋。種から簡単に育てられます。植え替えは嫌うので、育てる場所に直接種をまきます。春から夏にかけて数回に分けてまけば、シーズン中いつも収穫できます。フェンネルの側で育てると異花受粉してしまうので、近くに植えないようにします。日当りが良くて水はけの良い、痩せ気味の土を好みます。光がよく当たる窓辺に置いたポットでもよく育ちます。風の当たらない場所で育てるようにしましょう。水はしっかり与え、つぼみがついた茎は取り除くようにします。成長が早いハーブなので、種をまいてから8週間程で葉を収穫できるようになります。シーズンの終わりには種をつけるので、コリアンダーと同じように収穫して保存しましょう。

食べるディルの葉と種の違いは辛みの強さです。種の方がシャープな味で、ラムシチューやスープなどの香り付けによく使われます。葉はスモークフィッシュのような魚料理やサラダなど、さまざまな料理に使われます。食欲を増進させ消化を助けるハーブです。


MINT ミント

ヨーロッパが原産ですが、北米、オーストラリア、日本など世界のさまざまな地域で自生、古代から薬効成分を求めて育てられてきました。日本でも少なくとも2000年前からメンソールを得るために育てられています。ペパー、スペア、アップルなど、種類も豊富。

育てるミントは耐寒性の多年草で、収穫の時期は春から秋にかけて。苗、挿し芽、株分けで育てます。非常に繁殖力の強いハーブです。異なるミントと交雑やすいため、種類ごとに離して植えるようにします。繁殖しすぎを防ぐため、大きめのポットで育てるのがお勧めです。地植えの場合も、底のないバケツやコンテナを土中に埋めて、その中で育てるようにします。水はけの良い肥えた土で育てます。メルボルンの夏の強い日差しは苦手なので半日陰におき、水が好きなので土が乾燥しないように注意します。十分に育ったら新芽が出るように剪定しましょう。シーズンが終わる頃にはポットは屋内に取り込みます。さび病が出た場合は冬の間に根を殺菌します。ベトナムミントは高温多湿を好みます。寒さは苦手なので、冬の間は屋内に取り込みましょう。

食べる生のまま使うか、花が咲く前に葉を収穫して乾燥または冷凍させて保存できます。魚、肉、ヨーグルト、果物などさまざまな用途に使えます。また、ペパーミントはお茶として広く愛飲されています。

(2013年10月号 Dengon Net)