ちょこっと まめ知識

知っておくとためになる、少し役に立つ雑学集

こんなものまでオーストラリアン?

Wi-Fi、ノートパッド、ペニシリン…日常で、オフィスで、そして医療現場で普通に使われている、いや、なくてはならない品々。実はこれらはすべてオーストラリアの発明品。まさしく“必要は発明の母”を体現するこれらの品々は、今や世界中の人々の生活、生命をも助ける存在となっている。先人の知恵と情熱の詰まった「えっ、こんなものまで?」を、今一度概観してみよう。

●表記の年は、発明品が発明品が初めて世の中に出た年。 ●写真は、発明当時のものや、現在のもの、イメージ画像も含まれています。 ●CSIRO(※)=Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization オーストラリア連邦科学産業研究機構


受取人払いの不便を解消
先払い郵便:1838年
Prepaid Postage

郵便物はすべて着払いで、受取人にお金がないと受け取ることができなかった当時、イギリス人改革主義者のローランド・ヒルが郵便システムの全面改革を提案して却下。翌年に郵便局長のジェームズ・レイモンドよって、ヒルの提案が採用され、ニューサウスウェールズ植民地印の型押しが付いた、初の先払い郵便が導入された。


やっぱりビールの国ですから
冷蔵庫:1855年
Refrigerator

Geelongで製氷機械を発明した、技術者で政治家のジェームス・ハリソンが開発した圧縮型エーテル冷蔵庫が、世界初の実用的な冷蔵庫と言われている。当時、イギリスとオーストラリア大陸間の輸送品が多く、特に肉を運ぶための冷蔵システムが必要とされていた。最初に商業利用したのはBendigoのビール工場。


現在の工具の礎
電気ドリル:1889年
Electric Drill

スコットランドの電気技師(後にメルボルン市の電気技師)アーサー・アーノットが、メルボルンの電気会社で働いていた頃、岩に穴をあけ石炭を掘り出すための機器として発明され特許を取得した。当初のものは採鉱用で大きく持ち運びに不便で、現在のピストルグリップ型はアメリカのBlack & Decker社によるもの。


ちょっとした工夫が今に繋がる
ノートパッド:1902年
Notepad

タスマニア州で文房具会社を経営者していたJ.A.バードコールは、当時販売されていた12枚の紙を半分折にした箱入り“ノート”を不便に思っていた。取引先のイギリスの製紙会社に“紙を小さくして厚紙で台紙を付け、上辺を糊付けしては?”と提案。試作品“Silver City Writing Tablets”が完成、商品化された。


生産工場の閉鎖で消滅かも
ユート:1934年
The Ute

ビクトリア州のある農夫の妻が、オーストラリア・Ford社に、日曜には教会へ行き、月曜には市場へ豚を運べるような、1台2役の車を作って下さい、と手紙を書いた。2年後、カーデザイナーのルイス・バントが、乗用車(フォード V8クーペ)に軽トラックの機能を備えたクーペ・ユーティリティーを発表した。


先割れスプーンとも違う
多機能フォーク:1943年
Splayds Cutlery

パーティーで膝の上に食器を置いた女性の写真を雑誌で見掛けたウィリアム・マッカーサーは、フォーク、スプーン、ナイフの刃が一体化したカトラリーを思い付いた。1943年~67年まで、妻がシドニーに持つカフェで使用、販売され、60年にはこのデザインを国内の食器製造会社に売り、大量生産するようになる。


世界初の抗生物質
ペニシリンの実用化:1944年
Penicillin

アレクサンダー・フレミングが、ブドウ球菌の培養実験中にカビがバクテリアの繁殖を妨ぐことを発見(1928年)。10年後、オーストラリア人のハワード・フローリーと研究チームは、フレミングの発見したペニシリンを精製し、製剤にする方法を開発。第二次世界大戦中には、多くの負傷兵や戦傷者を感染症から救った。


本家はご近所さんかも
回転式洗濯ロープ:1945年
Hills Clothes Hoist

復員早々に奥さんから「庭のレモンの木が、2本の棒に渡した洗濯ロープの邪魔になる」と言われたランス・ヒルズは、鉄の筒とワイヤーで回転式の洗濯用ロープを作ったところ評判となり、兄弟でビジネスを始めた。しかしこれより前、回転式洗濯用ロープの特許を取り、製造販売していたヒルズ家のご近所さんの存在も……。


発明は陶器会社の創設者
使い捨て注射器:1949年
Disposable Syringe

オーストリア人移民のチャールズ・ロサウザーは世界で初めて、プラスチック製の使い捨て注射器を開発。最初の製品は熱に弱いポリエチレン製だったため、注射器を使用前に薬品で滅菌消毒する必要がありコストが掛かった。このため1951年には熱処理可能なプラスチック製の注射器が作られた。


弱い力で時間を掛けて
歯列矯正:1956年
Begg Orthodontic Technique

矯正歯科医のベッグ・レイモンドは、アメリカで開発された従来式の歯列矯正法(エッジワイズ法)が、強い力で歯を矯正するのに対し、弱い力で持続的に歯を動かすことを思い付いた。矯正医が希少だった当時、遠方から通ってくる患者に朗報だったうえ、ワイヤーも金やプラチナなどの強硬で高価なものからステンレス製に。

Collection: Museum of Applied Arts and Sciences, Sydney.


航空機事故の謎を解く
ブラックボックス:1961年
Black Box Flight Recorder

1953年、防衛科学技術機関(DST)の航空技術者だったデイビッド・ワレンは、世界初のイギリス旅客機Cometの墜落事故の原因調査をしていた。たまたま訪れた見本市で、世界初小型テープレコーダーを見て、操縦席での会話を事故直前まで録音できたら原因究明に役立つのではと思い付いた。実用化されたのはイギリス。

Collection: Museum of Applied Arts and Sciences, Sydney.
Photo: Marinco Kojdanovski


海では救命ボートにも
航空機非常用滑り台:1965年
Inflatable Escape Slide and Raft

最初の非常用滑り台はAir Cruisers社のジェームス・ボイル(第二次世界大戦の救命胴衣を発明)によって発明された。1956年に意匠登録されたが、キャンバス地で設置に時間が掛かった。このため、1965年、カンタス航空のジャック・グラントが膨らまし式にし、更に海上への緊急着陸時には救命ボートになるように改良した。

写真提供:日本航空(株)


ワインを大量に安く売る
箱入りワイン:1966年
Wine Cask

1960年代半ば、南オーストラリア州のワイナリー経営者が赤ワインを大量に安く販売する方法を考えていた。瓶では開封すると数日で味が落ちてしまうので、ヨーロッパで古くから使われている革製のワイン袋をヒントに、4.4ℓ入りのポリエチレンの袋を箱に入れることで保管と輸送に便利で経済的な専用容器を考案した。


始まりは市民の声から
ボタン式信号機:1967年
ATPD Pedestrian Button

ニューサウスウェールズ州のある目の不自由な男性が、Roads & Traffic Authority (RTA)に、“聞こえる”信号機の設置を願い出た。早速、ベル音とブザー音で歩行と停止の聞き分けができる信号機を設置。その後改良を重ね、80年初めに、大きなボタンが付いた耐衝撃性鋳造アルミニウム製の現信号機が登場した。


胎児の様子をモニターで
超音波技術:1976年
Ultrasound Technology

当時、胎児の様子はX線での検査だったが、1961年、連邦超音波音響研究所のデイビッド・ロビンソンらが“CAL”と呼ばれるオーストラリア初の超音波スキャナーを開発。翌年、CSIRO(※)の超音波研究センターがグレースケール画像を開発し、人体内の軟組織への反射波を利用して画像化、TVモニターで視覚確認ができるようになった。


乳児から使える
新生児用安全シート:1984年
Baby Safety Capsule

乳児への安全基準が一般化されていなかった当時、オーストラリアのチャイルドシート・メーカーRainsfords社(現Britax社)が、土台の中にゆりかごをセットし、シートベルトで固定できる乳児用カプセルを考案。事故で衝撃が加わると、内側のゆりかごが動き、衝撃は背中全体で受けて分散、土台の衝撃吸収材で安全性が高まった。


再利用で環境にも優しい
プラスチック製紙幣:1988年
Plastic Banknotes

オーストラリア準備銀行(RBA)とCSIRO(※)が共同で開発し、まずは$10紙幣を発行。当初の、色褪せや折り曲げにくさなどの問題を解決し、1996年に世界で初めて全紙幣がプラスチック製になった。耐久性は紙のお札の約10倍、透明窓や光の角度で絵柄が変わる特殊加工で偽造がしにくいうえ、リサイクル対策も万全。


始まりはブラックホール
無線ネットワーク:1992年
Wi-Fi

CSIRO(※)の天文学者で科学者のジョン・オサリバンが電波天文学の研究で、ブラックホールの爆発で生じる電波を探索中に電波障害を減らす方法を発見した。彼と研究チームは不明瞭な信号を除去するコンピューターチップを開発。これにより従来の5倍以上の速さのワイヤレスネットワークが可能になった。


発注者はオーストラリア外務省
偽造不可能パスポート:1994年
Passport Security

アメリカ3M社のグレアム・マンはオーストラリア外務省の依頼で、偽造が難しいパスポートの開発に取り組み、透明接着剤の重層構造で写真を含む、すべてのパスポート情報を一度にスキャンできる技術を開発。接着面を剥がそうとすると情報も破壊され、写真の偽造も普通の電灯下で見て分かる工夫がされている。


多国籍研究チームによる開発
連続使用コンタクトレンズ:1999年
Long-wear Contact Lens

ニューサウスウェールズ大学とアメリカのコンタクトレンズ会社CIBAやスイスのヘルスケアの会社の研究チームに、CSIRO(※)の科学者が加わって開発。薄くて耐久性があり、角膜を健康に保つために酸素過透性がある素材として、シリコン製ジェルでできたソフトコンタクトレンズを発表、特許を取得した。


デンマーク人兄弟がシドニーで
グーグル・マップ:2003年
Google Maps

アメリカでエンジニアとして働いていたデンマーク人のラスムッセン兄弟が、当時の自動車専用地図検索サイトを、映画館やレストランなどの検索用地図に作り直せないかと発案。その後、シドニーに移り住んだ兄弟は、Where 2 Technologiesを設立し、C++言語で利用者ごとにダウンロードするソフトを開発した。2004年にGoogle社に売却。

Imagery ©2016 Data SIO, NOAA, U.S, Navy, NGA, GEBCO, Landaat, Map data ©2016 Google


参考:W: australia.gov.au,australiangeographic.com.au, W: buzzfeed.com, W: combi.co.jp, W: csiro.au, W: daikoshika.jp, W: dinkumaussies.com, W: dsto.defence.gov.au, W: gizmodo.com.au, W: motor.history.sa.gov.au, W: icrar.org, W: kidscyber.com, W: nichikyosen.com, W: samemory.sa.gov.au, W: toolbox.greenworks.co.uk, W: wisegeek.net、, W: graemeclarkoration.org.au, W: halimk.iics-k12.com

(2016年7月号 Dengon Net)