
オーストラリア在住の農業専門家がお届けする、コラム「マイ・ベジパッチ」
今回のテーマは、
美しさは“種”から始まる
~オーストラリアで出会うアンチエイジング・シードの魅力~
オーストラリアの主要スーパーマーケットである、WoolworthsやColesの店内に足を運んだことのある方なら、一度は目にしたことがあるかもしれません。「Macro」や「Wellness Road」といったブランドがずらりと並ぶ“種子専用コーナー”。チア、キヌア、フラックス、パンプキン、ヒマワリ、ヘンプなど、多様な種子がスーパーマーケットで日常的に手に入る。これが、現在のオーストラリアの食環境です。
出所:Woolworthsホームページ
一方、日本ではこうした種子がまだ「特別な食品」として扱われる傾向が強く、日常に取り入れている方は少数派です。健康食品店やオーガニック専門店を訪れない限り、目にすることすら少ないかもしれません。
では、なぜオーストラリアでは“種”がこれほどまでに身近なのでしょうか?
その背景には、世界有数の穀物・豆類・種子の生産国であること、そして、広大で乾燥した気候に恵まれたこの国では、農薬や遺伝子組み換え作物の規制が非常に厳しく、クリーンで高栄養な“ナチュラルシード”が日常に根付いているのです。こうした安全で栄養価の高い“種子文化”が、食と健康への意識とともに根づいていることが、オーストラリアの魅力の一つといえるでしょう。
“種”は、植物の「生命の卵」
種は、芽吹くその瞬間まで、植物が生きるために必要なすべての栄養を閉じ込めています。
まるで鶏卵が動物にとっての栄養の宝庫であるように、植物にとっての“卵”がこの「種」なのです。
美容とアンチエイジングの観点から注目すべき栄養素は以下の通りです:
- 肌や髪の再生に不可欠なたんぱく質
- シミやシワの原因となる酸化を防ぐビタミンEや抗酸化物質
- 代謝や血行を支えるマグネシウム・鉄・亜鉛
- 細胞の炎症や老化を抑えるオメガ3脂肪酸
こうした成分を、自然なかたちで効率よく摂取できるのが“種”の最大の価値なのです。
筆者が“種”を勧めたい理由
私は農業や食品の現場に関わってきた立場として、「どれだけ栄養価が高くても、続けられなければ意味がない」と常に感じています。
その点、“種”は次のような点で日常生活に取り入れやすい存在です:
- 準備がほとんど不要
- 長期間保存が可能
- 加熱不要なものも多く、すぐ使える
- 料理の風味を邪魔せず、アレンジしやすい
- 手頃な価格で、毎日続けられる
美容や健康を意識する方が、無理なく「今日から始められる」こと。それが、“種”を選ぶ一番の理由です。
Macroブランド 種子製品一例とアンチエイジング効果
種子名 |
主な栄養素 |
美容・健康効果 |
摂り方の例 |
チアシード |
食物繊維、オメガ3、カルシウム |
肌の潤い、腸内環境改善、炎症予防 |
ヨーグルト、スムージー、プディング |
フラックスシード |
食物繊維、リグナン、オメガ3 |
ホルモン調整、肌のハリ、腸活 |
焼き菓子やシリアルに混ぜて |
キヌア |
完全たんぱく質、鉄、ポリフェノール |
髪・肌の再生、貧血予防、糖化防止 |
ご飯代わり、スープ、サラダ |
パンプキンシード |
亜鉛、ビタミンE、マグネシウム |
肌の再生、免疫強化、老化防止 |
おやつ、サラダにトッピング |
ヒマワリの種 |
ビタミンE、セレン、たんぱく質 |
保湿、くすみ予防、爪・髪の健康 |
グラノーラ、パン、ベーキング |
ヘンプシード |
オメガ3・6、必須アミノ酸、鉄 |
炎症抑制、ホルモン調整、肌トラブル予防 |
スムージー、ヨーグルト、サラダ |
筆者が最も勧める「種」
Macro LSAミックス
出所:Woolworthsホームページ
Macroブランドの「LSAミックス」は、安価にも関わらず、以下の3種の栄養を一度に摂取できる優れた商品です:
- 主成分:亜麻仁(Linseeds)50%、ひまわりの種35%、アーモンド15%
- 価格:250g 約$3.50(2025年4月時点)
- 栄養価(100gあたり)
- たんぱく質:19.4g
- 食物繊維:22.8g
- ビタミンE、マグネシウム、オメガ脂肪酸、ミネラル類が豊富
- たんぱく質:19.4g
- 摂取例:ヨーグルト、スムージー、サラダ、ベーキングなど
3種類の種子をバランスよく、しかも手軽に取り入れられるこの商品は、時間に追われる日常の中でも「一歩先の健康習慣」を後押ししてくれます。
最後に:今日の“ひとさじ”が、未来の肌をつくる
高価な化粧品やサプリメントに頼る前に、日々の食事をほんの少しだけ見直す。
たとえば:
- 朝食のヨーグルトにLSAミックスをひとさじ
- サラダにパンプキンシードをふりかける
- スムージーにチアやデーツを加える
こうした小さな習慣が、数年後の肌や体調に確かな変化をもたらします。
「美しさは内側から」とよく言われますが、オーストラリアで日常に根付いた“種子文化”は、その考え方を無理なく実践できる環境を与えてくれます。
あなたも、まずは“ひとさじ”から始めてみませんか?
筆者紹介:
今林 丈二 (Joji Imabayashi)
豪州在住の農業ビジネス専門家。日本で農業ビジネスに従事後、2011 年に渡豪。
三菱ケミカルとビクトリア州政府が共同運営する植物工場プロジェクトや、現地企業が運営する日本いちご栽培プロジェクトに参画。Bisnis Asia のコンサルタント(農業分野)としても活躍中。現在はオーストラリア発祥の植物工場スタートアップのマネジャーとして、農業ビジネスの最前線にいる。
共同通信グループNNAオーストラリア発行の農業専門誌「ウェルス」で、
「オーストラリアで始める農業ビジネス!」を好評連載中。