ユネスコ無形文化遺産登録を祝う、日本酒の特別な一日
—— 在メルボルン日本国総領事公邸に日豪の要人、造り手、関係者が集う——
2025年12月11日、メルボルン・トゥーラックにある在メルボルン日本国総領事公邸にて、「日本酒のユネスコ無形文化遺産登録」を祝う特別なレセプションが催された。
穏やかな初夏の日差しが公邸を包む午後2時過ぎ、会場には日本から、そしてメルボルン、シドニー、キャンベラをはじめとした各都市から酒造関係者、輸入業者、レストランオーナー、業界関係者が続々と到着した。
日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に正式登録されたことにより、これを祝う式典が海外、特に南半球のオーストラリアで開催されることは極めて珍しく、日豪間の文化交流の深まりを象徴する一日となった。
公邸での歓迎と、総領事・来賓による祝辞
午後2時30分、会場は総領事の挨拶で幕を開けた。
主催者である 古谷篤郎 総領事 は、日本酒が日本文化を象徴する存在として世界から高い評価を受けていること、そしてその祝福をオーストラリアの皆と共有できる喜びを語った。
Ros Spence 議員(農業担当大臣)
Bridget Vallence 議員(財務担当大臣)
David Davis 議員(資源担当大臣)
の3名も出席し、いずれも日本酒の持つ文化的価値や日豪交流の意義に触れ、祝意を込めた挨拶を寄せた。
この日の出席者には、Victoria州議会議員、日本食レストランのオーナー、飲食業界の代表、酒類専門家、インポーター企業関係者など、多彩な顔ぶれが並んだ。
日本・豪州から集まった、個性豊かな酒造・インポーター
祝辞の後には、各酒造・企業によるショートプレゼンテーションが行われた。
登壇したのは次の通り。
・HEIGO
・GOJIN ENTERPRISE
・Daiwa Food
・Uknowwho
・Tokyo Food
・YoiYoi
・TRYBER
・JQWS
各社は取り扱う日本酒・焼酎の特徴や醸造の背景、現地市場への思いなどを紹介し、参加者は造り手の情熱がこもったストーリーに聞き入っていた。
会場全体を使ったテイスティング
ショートプレゼンが終わると、公邸全体を活用したテイスティングセッションがスタート。
各ブースには、以下の酒造による選りすぐりの銘柄が並んだ。
-
中本酒造(長屋王 Prince Nagaya)
-
楯の川酒造(楯野川 本流辛口)
-
七賢(アラン・デュカス スパークリング日本酒)
-
黒龍酒造(黒龍)
-
土佐酒造(桂月 Keigetsu)
-
重家酒造(麦焼酎 ちんぐ)
-
茨木酒造(来楽 別誂)
-
宝酒造(澪 Mio)
地域性を反映した銘柄が一堂に会し、日本酒の多様性と奥行きを感じさせた。
多様な業界が交流し合う、価値ある時間
今回のレセプションの特徴は、参加者層の広さにあった。
Victoria州政府関係者、日本食レストラン、ワイン・酒類の専門家、食品輸入企業、IT・サービス業、日本関連団体など、多方面の関係者が参加し、日本酒に関する意見交換や新たな協業の可能性を探る姿が見られた。
業界の垣根を越えて集まった参加者たちは、日本酒を中心にしながら、食文化・事業・都市の魅力など幅広い話題で交流を深めていった。
テイスティングが生む対話とネットワーキング
— 日本酒を通じて広がる日豪の未来
午後3時頃からは、ネットワーキングがさらに活発化した。
造り手から醸造の哲学や商品のこだわりを直接聞ける貴重な場となり、参加者は新たなメニュー提案やイベント企画、商品導入の相談など、具体的な話を熱心に交わしていた。「これほど多くの日本酒を一度に味わえる機会は珍しい。しかも造り手の説明を聞きながら味わえるのは本当に貴重」という声も上がり、日本酒文化がもたらす価値の大きさを改めて感じさせた。
日本酒は今、オーストラリアで確かな存在感を持ち始めている
近年、日本酒の輸入量はオーストラリアで増加しており、和食店のみならずバー、カクテルシーン、ファインダイニングでも存在感を高めている。
今回のレセプションは、単なる祝賀ではなく、
「日本酒という文化を、日豪の食・産業・コミュニティをつなぐ架け橋として広げていく場」
として非常に意義深いものとなった。
ユネスコ無形文化遺産への登録は、日本の酒造りが持つ価値と歴史が世界的に認められた証であり、今後の海外展開にとって大きな追い風となる。
イベントを終えて — 静かに、しかし確かに広がる日本酒の未来
午後4時、総領事公邸での祝賀会は静かに幕を閉じた。
参加者の多くは、日本酒が生み出す新たな可能性と、日豪の文化交流が広がっていく未来への期待を胸に会場を後にした。
日本酒は、単なる飲料ではない。
風土と技術、歴史、そして人々の思いが詰まった文化そのものだ。
その文化がこの地で祝われたことは、日豪関係の新たな可能性を開く象徴的な出来事と言える。
これから日本酒がオーストラリアでどのような広がりを見せ、どんな出会いや創造が生まれていくのか。
その未来は、今回のような交流の場から着実に育まれていくだろう。

