
このケースにおいて、イギリスのワーキングホリデーメーカーであるAddyは、「バックパッカー税は、オーストラリア市民権を持たない英国人の自分への差別行為である」とし、一度は、敗訴したものの、昨年11月3日に、この判決は覆り、Addyが勝訴しました。この勝利は、日英租税条約第26条「無差別待遇」に基づくものです。「無差別待遇」においては、相手国の国民に対して、課税上同様の状況にある自国民に与える待遇より不利益な待遇を与えてはならないことを規定しています。
条件を満たせば、居住者と同様の税率が適用
Addyの勝利を受けて、ATOは、一部のワーキングホリデーメーカーへの課税について、条件が合えば、オーストラリアの居住者と同様の税率が適用されると、ホームページで述べています。
この条件は2つあります。
1.税金上の居住者であること: 納税者が、永住権やオーストラリアの市民権を持たない場合、税金上の居住者であるかどうかを定義しにくいケースが多々あります。一般的には、オーストラリアに住み続けている、または永久的に住み続ける意思を持って渡豪している場合や、オーストラリアに6ヶ月以上居住し、その間、同じ場所に居住し、同じ職場で就労しているという場合、税金上の居住者だと考えられます。但し、いろいろなケースがあるので実際の判断は難しいかもしれません。判断ができないという場合には、4つのテスト(Resides test, Domicile Test, 183-day test, commonwealth superannuation test)を確認するか、会計士にご相談下さい。
2.第26条「無差別待遇」という条項が設けられている租税条約を締結している国から来ていること:
現在、この租税条約をオーストラリアと締結しているのは、チリ、フィンランド、ドイツ、イスラエル、日本、ノルウェー、トルコ、そしてイギリスの8ヶ国です。
タックスリターンはどうなる?
2つの条件のうち、どちらかしか当てはまらない場合には、これまでと同様、雇用主は、ワーキングホリデーメーカーの給与から15%の源泉徴収を行います。その人の所得が、$45,000未満の給与のみである場合は、タックスリターンの必要はありません。
両方の条件に当てはまる場合にも、引き続き、給与から15%の源泉徴収がされます。しかし、タックスリターンでは「オーストラリア居住者」として申告します。こうすることでバックパッカーではなく、税金上の居住者として査定されることになります。税金上の居住者である場合には、最初の$18,200までの所得は非課税となります。$18,200を超える所得について$45,000までは、19%の税率が適用されます。
過去の修正申告も可能
最後に、過去に申告したタックスリターンの修正申告も可能かもしれません。査定書が発行されてから2年以内の過去の申告であれば、修正申告という方法を取ることができます。しかし、修正可能なタイムリミットを過ぎている場合には、異議申し立てをする必要があります。
なお、既に日本に帰国されている方でも、条件を満たしていれば修正申告は可能です。オーストラリアの銀行口座を閉めてしまっている方も、会計事務所の信託口座を利用することで、還付金を受け取ることができます。
ワーキングホリデーの皆さん、現在と過去のご自身の税率について、ちょっと考えてみるのはいかがでしょうか?
ブリース洋子公認会計士事務所
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