抹茶のちゃちゃちゃ

紀元前中国から遣唐使の時代へ

 “お茶”の発祥は紀元前中国の雲南省南部地方といわれている。漢代の医学書に既にお茶の記述があり、その後、四川の王褒(おうほう)が記した『僮約(どうやく)』(主人と奴隷との間で交される契約文)の中では、当時の飲茶の習慣や茶葉の売買の記述があり、同書は茶具に関する最初の文献とされている。その後、お茶が文化として広がるのは唐代に入ってからで、茶葉はすでに全国で栽培されるようになっていたが、運搬に便利なように、蒸した茶葉を搗き固めて乾燥させた餅茶(へいちゃ=固形茶)を使っていた。この頃に記された文筆家・隆羽による『茶経』は世界で最も古いお茶の本、【お茶のバイブル】ともいわれている。

 宋代になると、貴族の飲み物だったものが、役人や富裕市民へと広がり、竹製の“茶筅(ちゃせん)”が使われるようになる。宋代のお茶には固形茶(唐の餅茶、宋の片茶、研膏茶)と、製茶の際に固めない散茶があり、どちらも粉に挽いたものをお湯に溶かして飲んだと考えられている。この粉末を“末茶”と呼び、これが日本で“抹茶”と呼ばれるようになった。

 日本では奈良・平安時代に遣唐使の最澄が中国から茶の種子を持ち帰り、比叡山麓の坂本に植えている。これは、現在の日吉庭園(滋賀県大津市・日吉大社の近く)として残っている。平安初期の『日本後記』には、日本初の日本茶の喫茶の記述がある。当時はまだ、僧侶や貴族階級などの限られた人々だけのもので、茶の製法も茶経にある餅茶であったらしい。

 その後、宋で禅宗を学んだ臨済宗(禅宗の一派)の開祖である栄西が、中国の禅院で飲茶が盛んに行われているのを知る。帰国後、日本初の茶の専門書『喫茶養生記』でお茶の効能を説き、お茶を武家社会に広めていった。同書には、製茶法についても記述があり、これは宋で作られていた蒸し製の散茶であり、碾茶(てんちゃ)の原型ともいえる。安土桃山時代になると、宇治で覆下栽培が始まり高級な碾茶に加工されるようになる。これは、武家や僧侶、公家などの間で茶の湯の嗜みとして定着するとともに、富裕な町人にも広がっていった。やがて、千利休らによって完成した“茶の湯”は、豪商や武士達に浸透していった。茶の湯は江戸幕府の儀礼に正式に取り入れられ、武家社会に欠かせないものとなる一方で、一般庶民には、簡単な製法で加工した茶葉を煎じたお茶が飲まれるようになる。

抹茶とは

 さて、お茶は、その製造方法によって大きく3つに分類することができる(下図参照)。お茶の関係団体を中心に組織された、日本茶業中央会によると、抹茶とは「覆下栽培した茶葉を、もまずに乾燥させ茶臼で挽いて微粉状に製造したもの」と定義されている。

粉のお茶、3種の違い

 “粉状”の緑茶としては、他に“粉末緑茶”や“粉茶”が市販されているが、抹茶とは栽培方法に違いがある。

抹茶碾茶(茶葉を蒸して乾燥させたもの)を石臼などで粉末状にしたもの。覆下栽培のため、タンニンが少なく、茶葉独特のまろやかな旨味がある。手間ひまが掛かるため高価で、上等なものほど鮮やかな緑色。飲み方には薄茶と濃茶の二通りがあり、薄茶の倍量の抹茶を使う濃茶には上級品が良いとされている。主に茶道で使われる。

粉末緑茶煎茶(普通に飲まれている緑茶)を粉末にしたもの。普通に育てた茶葉(露天栽培)なので、旨味成分は少なくカテキンは多い。急須がなくても、お湯をそのまま注いで飲むことができる。安価。

粉茶煎茶を製造する過程でお茶の茎と葉を裁断する時に出る粉を集めたもの。網目の細かい深蒸し用急須やティーバックで飲む。寿司屋で出される濃いお茶。

手間ひまかけた栽培&製造工程

① 新芽の生育中(4月中旬頃)に、コモや葦簀で畑全体を覆う(覆下栽培)。直射日光を遮ることで、葉が太陽光を求めて真上に伸び、葉肉を厚くする栄養分が枝の成長に使われるため、葉は薄く柔らかくなる。また、根の部分で作られるテアニン(旨み成分)が、葉に移動するときに日光に当たってカテキン(渋み成分)に変わるのを防ぐことができる。
② 立春から八十八夜(5月2日前後)が過ぎた頃に、茶摘みを始める。生葉は柔らかいので必ず手で、一番茶(その年に最初に生育した新芽)だけを摘む。
③ 摘まれた茶葉は、鮮度が落ちないうちにすぐ(半日~20時間以内)に蒸す。この時、若葉の新鮮な色や香りが損なわれないように、約15~20秒蒸すことで茶葉の酸化酵素の働きを止める(紅茶やウーロン茶にはない緑茶独特の工程)。
④ 大型の乾燥機でゆっくり水分を抜くことで乾燥茶にする(碾茶荒茶)。ここに、“揉み”の作業(茶葉によりをかけうまみをとじこめる)が入ると玉露になる。
⑤ 乾いた茶葉を細かく切り、風力で茶葉と茎に分ける。
⑥ ふるい分けによって、茶葉の形を整える。
⑦ 再乾燥させる(専門的に「煉り」といい、この煉りが抹茶に碾きあげた時の品質に影響する)。
⑧ 電気選別、色選別された碾茶(抹茶の原料)を精製し、茶臼にかけて完成。

栄養丸ごと摂取のスーパーフード

 緑茶はお湯で煎じて飲むため、水に溶けやすい成分しか摂取することができないが、抹茶は茶葉をまるごと摂取するので、茶葉に含まれる良質な栄養素をすべて取り入れることができる。また、旨み成分であるテアニンの含有率が高く、逆に渋み成分のカテキンは少なく、まろやかな味わいが特徴となっている。このカテキンには体脂肪を効率よく燃焼させる効果のほか、解毒作用があるので食中毒の予防に。テアニンは、気分をやわらげるリラクゼーション効果をはじめ、集中力や記憶力を向上させる。その含有量がみかんの4~7倍といわれるビタミンCは、疲労回復や風邪の予防の働きがあり、カテキンと協働してメラニン色素を抑制するので肌が白くなると共に、肌の水分減少を防いで弾力を保つ。ほかに、リフレッシュ効果のカフェイン、虫歯予防、口中消臭に効くフッ素化合物、利尿作用やデトックスに優れるカリウム、腸の働きを良くする食物繊維などが含まれている。

Enjoying Matcha!!

 今や抹茶を使ったドリンクやスイーツは、日本国内だけでなくオーストラリアでも定番となっている。まずは、薄茶と抹茶ラテを味わってみて。そして、いつもの一品を抹茶でアレンジした伝言ネットのオリジナルレシピにトライ!

自宅で気軽に薄茶を楽しむ

①大きめのカップに、茶こし(※1)を通して小さじ山盛り1杯(=約2g(※2))の抹茶を入れる。
②沸騰したお湯を一旦他の器に入れ(※3)、更に抹茶の入ったカップの3分目まで注ぐ。
③“m”の字を書くように茶筅(※4)で素早くかき混ぜる。抹茶と同量の砂糖を入れても良い。

(※1) 茶こしを通すことでダマにならない。
(※2) 濃茶の場合は倍量。
(※3) 器に移すことでお湯が80度程度まで下がり、適温となる。
(※3) 茶筅は必須。金属の泡立て器は匂いが付く上、お湯が冷めやすい。茶杓があれば尚良し。

抹茶うどん

定番のそばをうどんで試してみると…。

【材料】 (1人前)

100g plain flour(中力粉)
1 tsp (お好みのよって、少し少なめもOK) 抹茶パウダー
3g 塩
60ml 水

【作り方】
① 中力粉と抹茶を混ぜ、塩を溶かした水を加えて全体を混ぜ合わせる。
② 粉っぽさがなくなったら捏ね、丸くまとめて30分ほど寝かせる。
③ ビニール袋に入れ、踏んで畳む作業を30分ほど続ける。
④ 四角に成型し、ラップに包んで2時間ほど休ませる。
⑤ 打ち粉をしながら3~4ミリの厚さに伸ばし、三つ折りにして端から切っていく。
⑥ 沸騰したお湯で茹でる。

抹茶ピザ

チーズの塩加減とあんこの甘味が絶妙なデザートピザ。

【材料】 (30cmほどのピザ)

生地:
250g strong flour(強力粉) (bread flour や pasta flour など)
抹茶 (上記使用粉の2%)
2 tsp ドライイースト
2 tsp 砂糖
1 tsp 塩
60ml ぬるめの水
30ml ベジタブルオイル

トッピング:
あずき、モッツァレラチーズ等

【作り方】
① 小麦粉(ピザ用)、抹茶、ドライイースト、砂糖、塩を大きめのボウルに入れて混ぜる。
② 粉類の真ん中にくぼみを作り、ぬるま湯、油を注いで混ぜ、生地がまとまったら、捏ねる。
③ 生地を丸くまとめてボールに入れ、ラップをかけて暖かい場所で一次発酵させる。
④ 生地が2倍に膨らんだら、空気を抜いて直径約30㎝の円に成型し15分ほど休ませる。
⑤ 生地の上にあんこを広げ、上にチーズを散らして、220℃に温めたオーブンで約15分焼く。

参考:www.alit.city.iruma.saitama.jp, www.aoiseicha.co.jp, www.ippodo-tea.co.jp, www.kyocha.or.jp, www.matcha.co.jp, www.marukyu-koyamaen.co.jp, www.nihon-cha.or.jp, www.o-cha.net, www.ocha.tv

(2016年1月号 Dengon Net)