〇 マイ・ベジパッチ・オーストラリア 〇

室内の鉢栽培からベランダ栽培、
家庭菜園、そして大型野菜工場まで、
オーストラリア メルボルン農業エキスパートによる野菜のお話し色々、
「マイ・ベジパッチ」

【野菜の美容力】発酵で引き出す、野菜の底力ぬか漬けが“食べる美容液”になる理由 ””""

 オーストラリア在住の農業専門家がお届けする、コラム「マイ・ベジパッチ」

 

 

今回のテーマは、

 

 

【野菜の美容力】発酵で引き出す、野菜の底力ぬか漬けが食べる美容液になる理由

 

日々の食事で野菜を意識して摂っていても、「なんとなく肌がくすむ」「胃腸の調子が不安定」そんなお悩みを感じたことはありませんか? 実は、野菜は食べ方によって、美容効果に大きな差が出る食材です。

今回のテーマは、日本の伝統食「ぬか漬け」。 きゅうりやにんじん、大根といった馴染みのある野菜たちが、ぬかに漬けるだけで美容力を倍増させるというのは、あまり知られていないかもしれません。 オーストラリアの食卓でも手軽に実践できる、野菜を活かす美容習慣としてのぬか漬け。 その秘密を、詳しく紐解いてみましょう。

 

ぬか漬けの正体とは?

ぬか漬けとは、米ぬかに塩や水を加え、発酵させた「ぬか床(ぬかどこ)」に野菜を漬け込んだもの。 漬けておくだけで、野菜に含まれる栄養価が高まるだけでなく、乳酸菌や酵素が自然に加わり、腸や肌にうれしい働きをしてくれます。

発酵によって野菜の味わいはまろやかに、そして体への吸収力もぐっとアップ。 ぬか漬けは、まさに発酵が引き出す野菜の底力なのです。

 

美容のために、なぜ「ぬか漬け野菜」なのか?

植物性乳酸菌が腸に届く

ぬか漬けの一番の魅力は、腸まで届く「植物性乳酸菌」。 腸内環境が整うことで、肌荒れやくすみの原因となる老廃物の排出がスムーズになり、自然と肌の透明感が生まれます。

 

ビタミンとミネラルが倍増

発酵によって、きゅうりや大根に含まれるビタミンB1やビタミンEが大幅にアップ。 ビタミンB群は代謝を促進し、疲れた肌を内側からサポート。 ビタミンEは「若返りビタミン」とも呼ばれ、肌の酸化(老化)を防いでくれます。

 

酵素と食物繊維でデトックス

ぬか漬けは加熱しないため、野菜本来の酵素や食物繊維を生きたまま摂取できます。 これらは腸内の不要なものを掃除し、肌にも疲労にも効果的な自然のクレンジングになります。

なぜ、ぬか漬けは美容につながるのか? 日本人の体質と「発酵野菜」の歴史的関係

ぬか漬けがここまで美容に効果的だと言われる背景には、単なる栄養価や腸活効果だけでなく、私たち日本人の体質や食文化に深く根差した相性の良さがあります。

 

精進料理にも見る「野菜と発酵の知恵」

古くは仏教の影響を受けた精進料理においても、動物性の食材を用いずに身体を整える手段として、発酵された野菜は欠かせない存在でした。 味噌、醤油、漬物などの発酵食品と、旬の野菜を組み合わせて摂るという日本独自の食の知恵は、「身体を内側から整える」という思想と密接に結びついています。

つまり、ぬか漬けは単なる副菜ではなく、美容や体調管理を目的とした和の機能性食品でもあるのです。

A plate of vegetables on a blue surface

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腸が整えば、肌が整う日本人の敏感な腸にフィット

日本人の多くは欧米人と比べて、胃腸がややデリケートと言われています。 脂肪や動物性たんぱく質の多い食事よりも、植物性・発酵・低脂肪な食材の方が吸収・代謝に適している体質が多く、これは長年の食文化によって築かれた腸内環境と深く関係しています。

ぬか漬けに含まれる乳酸菌は、動物性ヨーグルトの菌とは異なり、野菜とともに育った植物性乳酸菌。 この乳酸菌は日本人の腸になじみやすく、より効果的に腸内フローラを整えてくれます。

「控えめだけど、芯から効く」まさに日本的な美容食

ぬか漬けは、派手な美容サプリやスーパーフードのように目立ちはしません。 ですが、地味だけど確実に身体の内側に届き、じわじわと体質を整えてくれるという点で、非常に日本的なアプローチとも言えます。

こうした静かな力こそが、肌荒れしやすい季節の変わり目や、心身のリズムが乱れがちな現代生活の中で、大きな違いを生んでくれるのです。

 

美容目的ならこの野菜!おすすめラインナップ

オーストラリアでも簡単に手に入る野菜から、特に美容におすすめのものをご紹介します。

野菜

主な美容効果

補足説明

きゅうり

むくみ・美白・水分補給

カリウム豊富

にんじん

抗酸化・ターンオーバー促進

βカロテン

大根

便秘改善・くすみ対策

食物繊維と酵素

ズッキーニ

疲労回復・代謝サポート

ビタミンB

セロリ

自律神経の安定・ストレス肌対策

香りのリラックス効果

どれもColesWoolworthsで入手できる身近な野菜です。 ぬかに漬ける時間は、冷蔵保存なら624時間程度が目安。 忙しい日々でも、前日の夜に漬けておけば翌朝には美容野菜として食卓に並べられます。

 

食べ方も自由に、自分らしく

ぬか漬け=白ごはんのお供というイメージが強いかもしれませんが、実は食べ方も自由自在です。

  • ●アボカドと和えてぬか漬けディップに
  • ●オリーブオイルとレモンでサラダ仕立てに
  • ●チーズやナッツと合わせてワインのおつまみに

「美容のため」と堅苦しく考えず、ライフスタイルに合った食べ方で気軽に取り入れることが、継続のコツです。

 

オーストラリアでも「ぬか漬け生活」はできる?

できます。 日系スーパー(Fuji Martなど)やオンラインで米ぬか(rice bran)は手に入りますし、冷蔵庫で管理できるぬか床パックを使えば手間も最小限。 また、初めての方には「乳酸発酵ぬかの素」などもあり、ぬか床づくりに失敗しにくいキットも人気です。

ぬか床に漬けるだけで、日々の野菜が美容食に早変わり。 特別な技術も道具も不要です。

 

おわりに:野菜の美容力を最大限に引き出すには

肌も腸も、日々の積み重ねで変わります。 毎日欠かさず化粧水をつけるように、食べる美容液としてのぬか漬け野菜を、少しずつ食卓に取り入れてみてください。

美容は、肌だけの話ではありません。 内臓の調子、代謝のリズム、気持ちの安定、すべては「食べたもの」からつくられています。

 

 

筆者紹介: 

今林丈二 

 豪州在住の農業ビジネス専門家。日本で農業ビジネスに従事後、2011 年に渡豪。

 

三菱ケミカルとビクトリア州政府が共同運営する植物工場プロジェクトや、現地企業が運営する日本いちご栽培プロジェクトに参画。Bisnis Asia のコンサルタント(農業分野)としても活躍中。現在はオーストラリア発祥の植物工場スタートアップのマネジャーとして、農業ビジネスの最前線にいる。

 

共同通信グループNNAオーストラリア発行の農業専門誌「ウェルス」で、「オーストラリアで始める農業ビジネス!」を好評連載中。