〇 マイ・ベジパッチ・オーストラリア 〇

室内の鉢栽培からベランダ栽培、
家庭菜園、そして大型野菜工場まで、
オーストラリア メルボルン農業エキスパートによる野菜のお話し色々、
「マイ・ベジパッチ」

フルーツの甘さ、健康リスクに影響大?糖尿病との関係を徹底検証!””""

  

オーストラリア在住の農業専門家がお届けする、コラム「マイ・ベジパッチ」

今回のテーマは、

フルーツの甘さ、健康リスクに影響大?糖尿病との関係を徹底検証!

  

①フルーツは本当にヘルシー?

フルーツは、ビタミンやミネラル、抗酸化物質が豊富で、美容や健康に良いとされています。しかし、フルーツに含まれる「糖分」について、どれだけ意識していますか?

 

特に日本のフルーツは、平均して糖度が非常に高く、一部の果物では25度を超えることもあります。一方、オーストラリアのフルーツは、日本と比べて低糖度の傾向があり、日本の半分以下となるケースも少なくありません。この糖度の違いは、食文化や品種改良などの影響によるものです。

 

では、糖度の高いフルーツと低いフルーツ、それぞれの特徴が健康にどのように影響を与えるのでしょうか?

 

②日本のフルーツの糖度が高い理由

日本では、「甘さ=高級」という価値観が定着しており、消費者の「もっと甘いものが欲しい!」という需要に応えるために、果物の品種改良が最も重要視されてきました。

 

例えば、日本で大人気の シャインマスカット や 夕張メロン は、極限まで糖度を引き上げる品種改良技術が導入されており、自然な甘さとは異なるレベルの甘味が生まれています。甘い果物の開発競争が進むことで、より糖度の高い品種が次々と登場し、消費者の嗜好に応えています。

 

さらに、近年では 栽培農法の進化 により、糖度を高める工夫が科学的に行われています。例えば、果物に「ストレス」を与えることで、糖の生成を促す手法が用いられています。具体的には、水分を制限して乾燥ストレスを与えたり、温度や湿度を微調整することで果実の糖度を最大限に引き出すのです。

また、光合成の最適化 も糖度を向上させる重要なポイントです。近年の農業技術では、日射量、温度、湿度、二酸化炭素濃度、水分量 を精密に計算し、最も糖が生成されやすい環境を人工的に作り出すことが可能になっています。これにより、特定の条件下で果実の糖度を効率的に高めることが可能になっています。

しかし、その反面、糖分の過剰摂取につながりやすく、健康への影響が懸念されています。

 

③なぜ、日本とオーストラリアの果物はこんなに違うのか?

同じ果物なのに、日本のフルーツは「驚くほど甘い」のに対し、オーストラリアのフルーツは「さっぱりしている」と感じたことはありませんか? これは単なる個人の感覚ではなく、実際に糖度に大きな違いがあるのです。

 

この違いの背景には、食文化や市場のニーズ、流通の要因 が関係しています。

 

日本では、果物の甘さが高級さの象徴とされ、農家は常に「もっと甘い果物」を追求してきました。
 

その一方、オーストラリアでは、果物本来の自然な甘みや酸味を楽しむ文化が根付いています。例えば、いちごやぶどうは、日本では糖度を重視した品種が主流ですが、オーストラリアではフレッシュな酸味や食感を大切にする傾向があります。また、オーストラリアでは長距離輸送を考慮し、甘さよりも耐久性や鮮度保持が重視されることも影響しています。

 

この糖度の違いは、単なる好みの問題ではなく、それぞれの国の食文化や市場のニーズを反映しているのです。

 

「甘さを極めた日本のフルーツ」か、「自然な味わいを大切にするオーストラリアのフルーツ」か。どちらを選ぶかは、あなたのライフスタイルや食の好みによるかもしれませんね。

 

④フルーツの糖分がもたらす健康リスク

フルーツの甘さの主成分である フルクトース(果糖) は、砂糖とは異なり、血糖値の上昇が比較的緩やかですが、過剰摂取すると 脂肪肝や糖尿病のリスクを高める ことが知られています。

 

特に 糖度の高いフルーツを大量に摂取すると、血糖コントロールが難しくなり、インスリン抵抗性や肥満の原因 になる可能性があります。

 

さらに、「甘さ」には習慣化しやすい特性があることも無視できません。甘いものを摂取すると、脳内でドーパミンが分泌され、一時的な快感を生み出します。この作用により、「もっと甘いものが欲しい」と感じやすくなる のです。

実際に、砂糖の摂取は脳の報酬系を刺激することが研究で明らかになっています。この影響は、フルーツに限らず、スイーツや清涼飲料などにも当てはまります。

 

つまり、「甘さ」は単なる嗜好の問題ではなく、無意識のうちに習慣化する可能性がある ということ。だからこそ、意識して適量を楽しむことが大切 なのかもしれません。

 

⑤昔のフルーツはどれくらい甘かったのか?

今では甘くてジューシーな果物が当たり前。ただ、もし100年前のフルーツを食べたら、「えっ、こんなに酸っぱいの?」と驚くかもしれません。実は、昔の果物は今ほど糖度が高くなく、酸味の強いものが多かったと言われています。

 

かつて、甘みは貴族の特権でした。砂糖が貴重だった時代、フルーツの甘さは自然の贅沢として珍重されていました。特に17世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパの列強はカリブ海や南米の砂糖プランテーションをめぐり激しく争い、「砂糖戦争」とも呼ばれる時代がありました。砂糖が一般に普及するまでは、果物の甘みが唯一の甘味料とされることもあったのです。

 

しかし、戦後の日本では状況が一変。「もっと甘い果物が食べたい!」という消費者の声に応え、品種改良などが進みました。かつてのいちごは野生種に近く、酸味が強いものでした。しかし、今では日本全国で約300品種ものいちごが栽培され、「甘さ」が重視されるようになりました。求められる味が変われば、作られる果物も変わる。それが市場の力です。 かつては酸味が強かったいちごも、今では「あまおう」や「紅ほっぺ」のような糖度の高い品種が主流となりました。同じように、昔のりんごは酸味が際立っていましたが、「ふじ」や「サンつがる」など、甘みが引き立つ品種が次々と誕生しました。

 

⑥健康的なフルーツの食べ方とオーストラリアのフルーツの魅力

フルーツは、ビタミンやミネラルが豊富で、健康維持に欠かせない食品です。しかし、糖度の高いフルーツを食べすぎると、血糖値の急上昇を招くこともあります。そこで、自然な甘さが特徴のオーストラリアのフルーツ を上手に取り入れることで、ヘルシーに楽しむことができます。

 

オーストラリアのフルーツは、糖度が低く、フレッシュな甘さと酸味のバランスが取れている のが特徴です。日本のフルーツのように「特別なご褒美」としてではなく、毎日の食生活に気軽に取り入れやすい こともメリットのひとつです。

 

おすすめの低糖フルーツ

美容・アンチエイジング向け

ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ストロベリー) → 抗酸化作用が強く、美肌に!

キウイ(グリーンキウイ) → 食物繊維&ビタミンCたっぷりで、腸活にも効果的!

グレープフルーツ → ビタミンCが豊富で、代謝アップ&脂肪燃焼をサポート!

 

ダイエット・腸活向け

アボカド → 糖質ゼロ&良質な脂質で満足感も!

レモン&ライム → クエン酸が豊富で、疲労回復&デトックス効果!

プラム&すもも → 食物繊維が豊富で、便秘解消にぴったり!

 

水分補給&低糖フルーツ

メロン(ロックメロン・カンタロープ) → 水分補給に最適で、低糖度の品種を選べばヘルシー!

パッションフルーツ → ビタミンC・βカロテンが豊富で、抗酸化作用抜群!

ココナッツ(フレッシュ) → 低糖&ミネラルたっぷり。スムージーにも!

 

フルーツを健康的に楽しむポイント

食後のデザートではなく、朝食やスナックとして取り入れる。

糖度の高いフルーツ(マンゴー、ぶどう、バナナなど)は適量を意識する。

ナッツやギリシャヨーグルトと組み合わせると、血糖値の上昇を抑えながら栄養バランスを向上。

オーストラリアのフルーツは、そのまま食べるのはもちろん、スムージーやサラダに取り入れるのもおすすめです。 酸味と甘さのバランスが絶妙なので、料理にも活用しやすく、毎日の食事に自然に取り入れることができます。

 

フルーツは、ただの「おやつ」ではなく、健康を支える大切な存在。 オーストラリアのフルーツの魅力を知りながら、無理なく楽しめるヘルシーな食生活を試してみませんか?

 

 

 筆者紹介: 

今林丈二 

 豪州在住の農業ビジネス専門家。日本で農業ビジネスに従事後、2011 年に渡豪。

 

三菱ケミカルとビクトリア州政府が共同運営する植物工場プロジェクトや、現地企業が運営する日本いちご栽培プロジェクトに参画。Bisnis Asia のコンサルタント(農業分野)としても活躍中。現在はオーストラリア発祥の植物工場スタートアップのマネジャーとして、農業ビジネスの最前線にいる。

 

共同通信グループNNAオーストラリア発行の農業専門誌「ウェルス」で、「オーストラリアで始める農業ビジネス!」を好評連載中。