「離婚・DV・財産分配の基礎知識」セミナー 【在メルボルン日本国総領事館】

 

「離婚・DV・財産分配の基礎知識」セミナー
  在メルボルン日本国総領事館で開催

2026年2月16日、在メルボルン日本国総領事館にて、H&H Lawyersの上田大介弁護士による「オーストラリアにおける離婚・DV・財産分配」セミナーが開催されました。
当日は多くの参加者が集まり、メルボルン在住の日本人の間で、離婚や財産分配といったテーマへの関心の高さがうかがえる機会となりました。
日本とは異なるオーストラリアの制度について、実務に基づいた解説が行われました。

オーストラリアで生活する日本人にとって、離婚制度は日本とは異なる部分が多く、「何から始めればいいのか分からない」「財産はどう分けるのか」「子どものことはどう決まるのか」といった不安を抱える人も少なくありません。

今回のセミナーでは、離婚の基本的な法律構造から、親権・養育、財産分配の考え方まで、実務に基づいて分かりやすく解説されました。

オーストラリアの離婚は「3つの手続き」に分かれる

まず最初に説明されたのは、離婚問題を整理するための基本構造です。

離婚は一つの手続きではなく、以下の3つに分かれます。

① Divorce Application(離婚申立て)

法律上の婚姻関係を終了させるための手続き。
財産分配や子どもの問題とは別に扱われます。

② Property Settlement(婚姻財産分配)

結婚中に形成された財産をどのように分けるかを決める手続き。

③ Parenting Responsibility(子どもの養育責任)

離婚後の子どもの生活や養育に関する取り決め。

なお、養育費(Child Support)は別制度として管理されます。


オーストラリアの離婚制度の特徴:No-fault Divorce

オーストラリアでは「No-fault Divorce(無過失離婚)」が採用されています。

これは「どちらが悪いか」を争うのではなく、婚姻関係が破綻しているかどうかを基準に離婚が成立する仕組みです。

また、離婚申立てには原則として12か月以上の別居が必要とされます。

Parenting(子どもに関する判断)の最優先事項

子どもに関する問題では、「The Best Interest of the Child(子の最善の利益)」が最も重要な考え方として示されました。

判断要素として挙げられたのは次の通りです。

  • 子どもと養育者の安全

  • 子どもの意見(年齢や理解力に応じる)

  • 子どもの成長や心のニーズ

  • 親の養育能力

  • 安全が確保できる範囲での家族関係維持

感情的な対立よりも、子どもの生活環境を中心に考えることが基本となります。


Parenting問題の解決方法

子どもに関する問題は、段階的に解決を目指します。

  • 口頭による Parenting Plan(法的拘束力は低い)

  • 調停(Mediation / Family Dispute Resolution)

  • 書面による Parenting Plan

  • Consent Orders(裁判所命令化)

  • 裁判

いきなり裁判へ進むのではなく、合意形成を重視する流れが一般的です。

養育費(Child Support)はどう決まる?

養育費は裁判所ではなく、法令に基づく計算制度によって算出されます。

セミナーでは、支払額の目安を確認できる Child Support Estimator の存在も紹介されました。

婚姻財産分配は「3ステップ」で考える

最も関心が高かったテーマのひとつが、財産分配です。

オーストラリアでは、次の3段階で分析されます。

Step1:婚姻財産の確定(完全開示)

双方の財産をすべて開示することが法律上の義務とされています。

  • 名義に関係なく開示対象

  • 海外資産も含む

  • 負債も対象

収入や支出そのものは財産ではありませんが、分配割合を分析する資料として考慮されます。

Step2:双方の「貢献(Contribution)」の分析

次に、財産形成への貢献が検討されます。

  • 金銭的貢献(Financial Contribution)

  • 非金銭的貢献(Non-financial Contribution)

  • 結婚開始時の持込み財産(Initial Contribution)

外で働いて得た収入だけでなく、育児や家事なども重要な貢献として評価されます。

そのため、「必ず50対50になる」という考えは誤解であることが強調されました。

Step3:将来的な要素による調整

最後に、離婚後の生活への影響が考慮されます。

例として、

  • 年齢や健康状態

  • 収入を得る能力

  • 子どもの養育によるキャリアへの影響

  • 経済的な将来見通し

などが挙げられました。

過去の貢献だけでなく、将来の不公平を補正する視点が存在するのが特徴です。


財産分配の解決方法は4つ

婚姻財産分配には次の方法があります。

  1. 婚姻財産分配訴訟

  2. Consent Orders(合意を裁判所命令化)

  3. Binding Financial Agreement

  4. 当事者間のみの合意(法的効果は弱い)

訴訟は時間と費用が大きくかかるため、実務では合意による解決が多いことも説明されました。

まとめ|オーストラリア離婚制度を理解するために

今回のセミナーでは、離婚に関わる問題を次のように分けて理解する重要性が示されました。

  • 婚姻関係の解消(Divorce)

  • 財産分配(Property Settlement)

  • 子どもに関する取り決め(Parenting)

  • 養育費(Child Support)

特に財産分配では、

  1. 財産の確定

  2. 貢献の分析

  3. 将来要素の調整

という流れで判断されることがポイントです。

制度を正しく理解することで、不必要な誤解や不安を減らすことにつながります。

本記事は、当日のセミナー内容および配布資料に基づき要点をまとめたものです。個別事情により結論や手続きは異なり得ます。必要に応じて専門家へご相談ください。

主催: 在メルボルン日本国総領事館

企画: Dengon Net / DN Media Australia

協力: H&H Lawyers
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