【在メルボルン日本国総領事館】【メルボルン日本人支援団体と外務省による意見交換会レポート】

 【メルボルン日本人支援団体と外務省による意見交換会レポート】

 
2025年8月1日、在メルボルン日本国総領事館にて、古谷総領事の司会の下、メルボルンの日本人コミュニティーを支援する現地団体と、外務省の岩本領事局長との意見交換会が開催されました。現地で生活する邦人が直面するさまざまな課題を政府に直接伝える場として、13の団体が参加し、活発な議論が交わされました。
 
■ 詐欺やトラブルの被害の深刻化
岩本領事局長からは、ワーキング・ホリデー制度の利用者を含め渡豪する日本人が増加するなかで、詐欺やトラブルの被害が深刻化しているとの発言がありました。特に、SNSやネットを利用した国際的な詐欺の手口が、オーストラリア国内でも確認されており、「官民連携による啓発と対策の強化が不可欠である」との認識が示されました。
 
■ 高齢者支援の現場から寄せられた切実な声
高齢者支援を行う団体からは、現地に長く住む日本人高齢者が直面している深刻な問題が共有されました。
高齢者の中には、言葉の壁や社会的孤立に加え、家族や周囲からの「経済的コントロール」や「言葉による威圧」にさらされており、いわゆる“シニア・アビューズ(高齢者虐待)”の兆候が見え隠れしている人もいると指摘されました。
また、帰国を希望しても「日本での受け入れ先(保証人や支援者)がいない」ために断念せざるを得ないケースも少なくなく、経済的・精神的に追い詰められている人々の存在が明らかになりました。
さらに、オーストラリアの医療・介護サービス制度が非常に複雑であることから、必要なサポートにアクセスできていない高齢者も多く、日本語で話ができる弁護士・医師や相談先の紹介の必要性が強く訴えられました。

■ 教育現場における課題
補習校や日本語教育機関からは、「教員不足」や「外国人児童・生徒に対する教科書配布」、「日本人学校教員の帯同配偶者の就労可否」など、教育現場における課題が報告されました。
 
■ 若者・高齢者を問わず深刻な“孤立”の問題
ワーキング・ホリデーや留学で渡豪した若者たちは、到着直後に「住居の確保」「職探し」「情報不足」「友達作り・人間関係」といった課題に直面することがあります。
 
特に、英語力に不安を抱える人々は孤立しやすく、詐欺被害や精神的ストレスのリスクが高まっています。
また、セクハラやドメスティック・バイオレンス(DV)などの被害も報告されており、「日本語で安心して相談できる体制の整備」が急務であるとの声が複数の団体から寄せられました。
こうした状況は若年層に限らず高齢者層にも共通しており、年齢を問わず「頼れる相手がいない」状態に置かれている邦人が一定数存在していることが浮き彫りとなりました。また、渡豪前に一定程度の英語力をつけてくることを日本において一層呼びかけることの重要性を指摘する声もありました。
こうした状況を改善する一助として、ワーキング・ホリデー等で滞在する若手の生活を立ち上げる支援や日本人同士が交流できる場を提供するなど、ボランティアによる在留邦人の支援活動についても紹介がなされ、岩本領事局長から活動への謝意が示されました。
 
■ 日本語図書館や交流拠点「ジャパンコミュ二ティーセンター」への期待
子育て中の家庭からは、「日本語の絵本を手に入れるのが難しい」との声があり、不要になった絵本などを持ち寄れる日本語図書館や児童館のような拠点の整備が望まれていることが紹介されました。
また、「地域にジャパン・コミュニティー・センターのような拠点があれば、世代や背景を超えて自然な交流が生まれるのではないか」という提案もあり、コミュニティー全体の“居場所づくり”の重要性が改めて示されました。
 
■ Dengon Net / DN Media Australia の役割と責任
情報が氾濫する現代において、「誰が、何の目的で発信している情報なのか」が明確な、“信頼できる情報源”の存在が求められています。
Dengon Net Webでは、一方の要請だけで対応することの難しさはあるものの、詐欺的な投稿への削除対応や、問題情報の精査などを日々行い、日本語で安心して暮らせる情報インフラの維持に取り組んでいます。また、2025年度版として紙面の復刊を果たしたことにも触れ、デジタルとアナログの両面から情報を届けることの意義を強調しました。
 
Dengon Net 誌面 では、学校や日本人をサポートする多くの団体、企業、日本文化の継承者が紹介されており、日本政府に「メルボルンに住む邦人の活動実態の参考資料」として提出し、関係者内でのシェアをお願いいたしました。
      
■ 外務省による新たな取り組みと支援方針
これらの意見を受け、岩本領事局長から、メルボルン在留邦人の方々の抱える課題につき忌憚ないご意見をいただいたことに感謝し、いただいたご意見については関係者にもしっかりと伝達する旨発言がありました。その上で、外務省の取組として、孤独・孤立及びDV、性的被害等それに付随する問題でお悩みの方に対応する24時間対応の日本語チャット相談窓口を整備していること、現地で日本語対応可能な弁護士等の専門家との連携を強化していること、様々な形態の邦人保護にも臨機応変に対応すべく、本年8月1日に外務省領事局内の体制を再編したことなどが紹介されました。具体的には、邦人の生命・身体等に重大な被害が生じ得る政情変化、大規模自然災害、テロ等の緊急事態に対応する「海外邦人緊急事態課」と、緊急事態以外の邦人保護事案及び海外安全に関する広報・啓発活動を担当する「海外邦人安全支援室」を新たに立ち上げたことにつき、説明がありました。また、在留邦人への安否確認や支援を行うためにも、3ヶ月以上滞在される方は在留届の提出を(提出は法的義務です)、3ヶ月未満の滞在となる方は「たびレジ」の登録を必ず行っていただきたいとの要望がありました。
 
■ 態勢の実態
実際には、すでに、日本政府による多くの邦人に対してのサポート体制や、サービスが存在しているものの、本当にそのサポートやサービスを必要としている人に届きづらいというのが実情です。この課題の解決には、その国々の日本人コミュニティーの力は欠かせません。
メルボルンにおいては、Dengon Netも、日本政府との緊密な連携を続け、その役割を果たす必要性を強く感じています。
今回の意見交換会は、多様な立場や世代から、メルボルンで暮らす邦人の実情を、行政に直接届けられる貴重な機会となりました。今後も継続的な対話と協力を通じて、一人でも多くの邦人に必要な支援が行き届く体制づくりが期待されます。
 
Dengon Net / DN Media Australia Pty Ltd
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