クリスのオージースラング教室

英語の歴史や文化をふまえ、オーストラリアのスラングをご紹介。

クリスの使えるオージースラング教室 VOL.2

 2006年、オーストラリア観光事業委員会のCM "So where the bloody hell are you?" が "bloody" の使用により、イギリス、カナダ、そしてシンガポールで禁止され、一気に注目を集めました。オーストラリアらしさを表すために使われた "Bloody" は、本来17世紀にイギリスで生まれ、70年代までイギリスでは下品な言葉として扱われていましたが、オーストラリアでは19世紀末から日常会話によく使われていましたのでオーストラリアのメディアは "Bloody" の禁止を大きく取り上げ、話題になりました。

今回は「Bugger!」

 上記のCMに続き、今回はまた話題となった昔のCMに出てきた言葉に集中します。それは "Bugger" です。1999年トヨタ・ハイラックスのCMの使用により、"Bloody" のごとくこの言葉が一気に注目を集めました。
CMでは日常のよくある出来事が、車にパワーがあるために、大事になってしまい、主人公たちは問題が起きる度に "Bugger!"(この場合は「しまった!」と言う意味)を発言。元々New ZealandのCMでしたが、主演の農業経営者と、彼の妻はオーストラリア人で、上映後NZでは新聞やラジオ局への抗議が数々ありました。
一方、昔から "Bugger!" が日常会話で使われていたオーストラリアではこのCMが爆発的にはやり、バンパーステッカーや数百種のパロディなどが作られました。

 CMのごとく、"Bugger!" は問題が起こるときに使われていますが、万能語として、広く使い道があります。

 パブやレストランで友達同士、他の人に関する話をするとき "He's a funny bugger." や "He's very intelligent, but can be a stupid bugger sometimes." といった使い方を耳にしたことはありませんか。名詞として「奴」か「野郎」という意味で、少し冗談ぽく言います。

 また、動詞としても "Bugger" が使えます。"Bugger" や "Bugger up" とは「失敗する」や「ぶっ壊す」という意味で、"They buggered it up!" とも言えます。"Frank buggered up the printer by using the wrong paper" 「Frankは間違った用紙を使って、プリンターをぶっ壊しちゃった」は無作法な言い方ですが、仕事に問題が起こったときに耳にしたり、自分が言うことがあるかもしれません。

 上記の使い方を、とてもオーストラリアらしいと思ったベストセラー・ファンタジー作家のTerry Pratchett氏は1998年に発行した小説に出てくるオーストラリアみたいな国の首都を "Bugarup" と名づけました。

 他にも何もやってないときにも "Bugger" が使えます。"Bugger around"「うろうろする・遊ぶ」はよく使われている表現で、"You two! Stop buggering around and help me!"(お前ら、遊ぶんじゃなくて俺を手伝うんだ!)というようにオージーの会話によく出てくると思います。

 多方面な俗語で「難しい」や「つらい」、形容詞として仕事を失敗してしまうときにも言います。"It's a bugger of a job" はつらい仕事に取り組んでいるときに発言し、簡単な家事をするときにも言えます。例えば、"This jam jar's a bugger to open" 「空けにくッ!」。オージーらしく "It's a bugger!" (例:"It's a bugger to open")と短縮してもOKです。

 もちろん、家で勉強中に間違いがあれば、英語で "Bugger!" を言ってもいいし、最後にどうしても頭が働かないとき、"Bugger this!" 「もう、いい!」と言って少し休憩してもいいでしょう!

Chris Nicholls(クリス・ニコルス)

 父はイギリス人、母は日本人。日本で生まれ、幼少期をイギリスで過ごす。その後、家族でオーストラリア移住。英語教師の資格(CELTA)を取得し、日本の英会話学校で英語教師として2年勤務。2007年からはジャーナリストとして活躍。日本語も堪能なので、日本人が間違いやすい英語の指導に自信あり。

(2006年5月号 Dengon Netより更新)