Page 8 - Dengonnet Magazene 2025
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書の魅力とは                                                                     プロフィール・活動紹介

           書道は単なる文字を書く術ではなく、                                                        荒木 美帆
         筆、墨、紙、硯の「文房四宝」を用い、一筆
         一筆に心を込めて文字を表現する芸術で                                                           高校卒業後、オーストラリアに単身で住み始め
         す。同じ文字でも、書き手の心境や技量、                                                        た時は英語ができず、コミュニケーションに困って
         目的によって全く異なる表情を見せるのが                                                        いました。しかし小さい頃から習字を習っていたた
         書の最大の魅力と言えると思います。                                                          め、日本語に興味のあるオーストラリア人との会話
                                                                                    のきっかけとして書道を活用。中華街で中国製の筆
         筆を持つ至福の瞬間                                                                  と墨を買ってきたのが最初の活動でした。

           想像してみてください。背筋をまっすぐに                                                        私は日本での書道教室に通っていた程度で、免
         座り、手を紙の上にそっと置き、もう一つの                                                       許もなく全くの素人です。しかし「好きこそ物の上手
         手で筆を取ります。墨汁を筆先にたっぷり                                                        なれ」のように、書くことが本当に好きでたまりませ
         含ませて、余分な墨を硯の角で取り、筆の                                                        ん。そしてその文化を異国で発信できる私は、小さ
         先をピンと尖らせます。紙全体を視野に入                                                        い頃から「そろばんと書道だけは行きなさい」と諦
         れてバランスを確認し、筆を紙におろしま                                                        めずに通わせてくれた母に感謝しています。
         す。一呼吸置いてから、ゆっくり筆先を動
         かし、優しく丁寧にまっすぐ線を引く。                                                         メルボルンでの活動

                                                                                      現在はMornington半島に移り住み、筆文字が必要な方へのお手伝いをさせていただ
           ただこれだけの動作なのですが、真っ白い紙に真っ黒の墨。線と点。本当にシンプル
         なアートですが、そのシンプルさが無心にする要因です。墨の香りを嗅ぎながら、少し                                    いています。武道関係の表彰状や訓示、商業用看板、イベント会場での名前書きなど、
         だけ肩の力を抜いて1本の線を丁寧にまっすぐ書くという動作は、頭も心も空っぽにし                                    様々な場面で活動しています。
         てくれます。
                                                                                      創作的な筆文字を専門にしており、海外のインテリアに馴染みやすいよう、キャンバ
                                                                                    スに書いたりしているのが私の特色です。書いた作品には英語でその意味を添えてお
          文字を書くことが少なくなった現代、筆で字を書くという行為は瞑想に近いものがあり
         ます。毛筆でなくても、鉛筆でも一度ゆっくり丁寧にご自分のお名前を書く時間を持っ                                    り、目で楽しんで読んで楽しんでという、日々の生活に取り入れていただけるような気さ
         てみてください。ご自分でびっくりするほど素敵に書けて、本当に気持ちよくなります。                                   くなアート作品を目指しています。

                                                                                      いつか、ご友人宅のリビングや、行った先のレストランの看板などで、私の筆文字とお
         書道の歴史と発展                                                                   会いできたら光栄です。

           書道の歴史は古く、中国で生まれた漢字文化が日本に伝来したのは6世紀頃とされて
         います。最初は仏教の経典を写すことから始まり、平安時代には日本独自の美意識が                                                                       お問い合わせ
         加わって発展しました。                                                                                                  ウェブサイト: www.ebisudesign.com

                                                                                                                      インスタグラム: ebisudesign
           平安時代の三筆(空海、嵯峨天皇、橘逸勢)、三跡(小野道風、藤原佐理、藤原行
         成)といった名人たちによって、日本の書道は独自の境地を開いていきます。特に平安                                                                      メール: miho@ebisudesign.com
         時代後期には、漢字とひらがなを調和させた「和様」の書風が確立され、これが現在
         の日本書道の基礎となっています。


                                           筆の魅力は一期一会

                                             筆の魅力は、1本の筆で線の強弱、太さ
                                           細さ、かすれが自由自在に作れることで                                                         ウェブサイト         インスタグラム
                                           す。その線が反映されて、日本語を読め
                                           なくても伝わるメッセージ性の高い創作
                                           ツールなのです。そして1本の線は二度と
                                           同じものが書けず、消すこともできないの
                                           で、それこそ一期一会。


                                             イベント会場などで書いていると、よく一
                                           心に見ている人たちに囲まれます。私が気
                                           持ちよく書いていると、見ている方々もとっ                    検眼、コンタクトレンズ、眼鏡
                                           ても気持ちが良くなるそうです。今でも日                      メルボルンで約 50 年の実績
                                           本の学校では書道の授業があり、美しく
                                           書くだけの目的ではなく、こういった意味
                                           のためにもあるのだと思います。                          Suite 3 12 Collins Street Melbourne    日本語でのお問い合わせ :
                                                                                    9650 9852
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