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一杯のコーヒー
ひと粒の豆

第11回 スペシャルティ、日本とメルボルン

石渡 俊行〈いしわた・としゆき〉
聞き手・構成:田部井紀子

<石渡 俊行 プロフィール> 左:SCAJのイベントで 右:青山フードフレアの様子 写真提供:石渡俊行
1977年神奈川県生まれ。05年ワーキングホリデー・ビザで来豪、地元レ
ストランなどを経てサウス・メルボルンのカフェ『St. Ali』でバリスタ
を、また09年より『Market Lane Coffee』でヘッド・ロースター兼クオ
リティー・コントロールを勤める。カッピングとロースティングのクラ
スを開いています。お問い合わせは E: hello@marketlane.com.au
まで。instagram.com/toshiishiwata

 去年の9月、1ヶ月程日本に帰国しました。トークをしたり、 ので、この種のスペシャルティは今の段階ではありません。雑 の友人もたくさんいて、盛り上がっていました。
 日本の若いロースターさんの中には、真面目にスペシャル
日本スペシャルティ・コーヒー協会(SCAJ)のイベントに参加 味があってカフェインも強くアラビカの2~3倍。スペシャル ティと取り組んでいる人がたくさんいます。彼らは情報をシェ
アしイベントにも率先して出店して、お互い協力しながらスペ
したり、充実した滞在でした ティ以前のメルボルンではロブスタを10~20%くらい配合し シャルティ・コーヒーを広めようとしています。すごく熱いな、
と見ていてうらやましく感じました。メルボルンも10年前、僕
 今日本では、「スペシャルティ・コーヒー」という言葉が少し たブレンドが主流でしたが、今はすべてアラビカです。ちなみ がSt. Aliで働き始めた頃はこんな感じだったけれど、今はスぺ
シャルティがある程度定着して大きな業界になっているので、
ずつ一般の人達の間で知られるようになってきています。それ にもう1つの品種のリベリカというのはその中間的な豆です コミュニティーとしてシェアしながらやっていく、と言うこと
はあまりない気がします。その点、日本の若手は柔軟性があっ
には昨年2月東京にオープンしたアメリカのコーヒー店「ブ が、どちらかと言うとロブスタに近いものです。 て仲良くやっているように感じました。こういう、みんなで
いっしょに盛り上げていく感じ、ずっと続いて行って欲しいと
ルーボトル」の影響が大きいようです。ブルーボトルが話題に  話を日本に戻しましょう。ブルーボトルを筆頭に、ニュー 思います。
 今回の日本滞在では、本当においしいコーヒーにたくさん出
なったおかげで、スペシャルティ・コーヒーの存在を知っても ジーランドの「オールプレス」や、シドニーの「シングルオリジ 会いました。びっくりして感動するようなコーヒーも。自分で
作った料理と同じように、自分で焙煎し、淹れたコーヒーに感
らえるようになった、それだけでうれしい、と、日本の友人が話 ン」も日本進出したりと、興味が広がっていていいなと思うの 動することはありませんが、誰かが作ったコーヒーが本当にお
いしかった時、僕はもう、1日中幸せです。そこが、スペシャル
していました。それからコンビニ・コーヒーに助けてもらった、 ですが、「ファッション」「おしゃれ」と言うイメージからカフェ ティ・コーヒーという飲み物の魅力なのかな、と思います。

と言う人も。缶コーヒーとの違いに気が付いて、そこからスペ をやる人、ベンチャー企業なども増えていて、一時のブームで

シャルティの存在も知ってもらえるようになった、と。 終わってしまわないか、少し心配だな、とも思いました。

 そもそもスペシャルティ・コーヒーとは何か、少し説明しま  そのブーム的な流れとは別に、すごく良かったのが、オニバ

しょう。コーヒー豆には、大きく分けて「アラビカ」「ロブスタ」 ス・コーヒーの坂尾篤君が案内してくれた「青山フード・フレ

それから「リベリカ」の3種類がありますが、スペシャルティは ア」と言うイベントです。青山大学の構内スペースを使った

すべてアラビカ種。中でも、アメリカ・スペシャルティ・コー ファーマーズ・マーケットで、主催者の方はアメリカの西海岸

ヒー協会(SCAA)などきちんとした基準によるスコアが80点 で見たマーケットに影響を受けたとのこと。農産物、食べ物の

以上のものだけを「スペシャルティ」としています。ロブスタと 他、スペシャルティ・コーヒーのスタンドも数多く出店、トラン

いうのは、缶コーヒーやインスタント・コーヒーに使われるも ク・コーヒー、ポール・バセット、オブスキュラ、ノージーなど僕

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