Page 5 - 201608
P. 5
経絡上にあるツボ に、身体中をめぐっています。経絡には、それぞれ司っている内 ある時に無意識のうちに触るところがあり、それを長い時間を
臓や器官があり、それが経絡の名前となっています(左図参照)。 掛けて伝承、整理してきました。それが、陰陽五行説などの自然
 ツボは“経絡”という、身体にとって大切な血液や水分 (代謝物  例えば、手の陽明大腸経は、手の指→肘→肩→肺に掛け、口か 哲学と結びついて、ツボや経絡の名前が付けられたと考えられ
質) を運ぶ通り道上にあります。“経絡”には血液や水を運ぶため ら鼻の横に抜ける道です。この手の陽明大腸経上には、陽谿、手 ています。
の“気 (エネルギー)”も流れています。例えて言うなら“経絡”は 三里というツボがあり、これらのツボを刺激することで、手から  今回の“冬のツボ”と言えるは、冷えや冷えに伴う肩こりなど
街道のようなもので、要所要所に関所があり、それをツボと考え 遠く離れた場所で起こっているトラブルを解消できる、という に効くツボで、“陽”の字がついたツボが多いです。“陽”の字がつ
ると分かりやすいと思います。また、血液や水を運ぶ“気”は、街 ことになります。肩こりのあるときは、経絡の繋がりで手三里に いたツボは、陽谷(ようこく)、飛陽(ひよう)など手足に多く位置
道を行きかう人や車だと思うといいでしょう。“気”がスムーズ へ こ み が 現 れ ま す 。そ の へ こ ん だ ツ ボ を 刺 激 す る と 、「 こ こ が しており、刺激をすると身体を温める効果があります。
に働かないと、どこかで詰まったり、少なくなり過ぎて必要な血 弱っているよ。“気”を働かせなさい」と知らせて、肩こりを治せ
液や水が届きにくいところが出てきて、身体にトラブルを起こ るというわけです。胃の調子が悪い時に、足先のツボを刺激する 冬のトラブルに効く
します。そこで要所要所にあるツボを「ちゃんと働け」と刺激す のも同じことが言えます。
ることで、“気”が動き出し、スムーズに働くようになる、つまり  冬のトラブルは、冷えだけではありません。気温が低く湿度が
健康な状態になるのです。 ツボの見付け方 高くなると、関節痛が出やすくなります。雨の続くような憂鬱な
お天気で運動不足にもなりがちです。身体は寒さや湿度、気圧の
身体をめぐる経絡  ツボの場所は人それぞれ、その時の身体の状態によっても微 変化に反応しようとし、自律神経の働きがうまくいかなくなっ
妙に違います。下の写真では、標準的な位置をオレンジ色のシー たりして、関節痛も起きやすくなります。まずは身体、関節を冷
手の陽明大腸経 ルを張って示しています。シールの位置を目安に、そのあたりを やさないようにすること。関節痛に聞くツボを温め、マッサージ
手の太陰肺経 自分の指を当てて探すと、周りの部分と違うへこみがあり分か しましょう。
足の陽明胃経 ります。そこをやさしく押すと、じわじわとイタ気持ち良く感じ  また、寒い時期には、塩気を多く摂る傾向があります。塩気が
手の厥陰心包経 る場所が、あなたのツボです。 多いものを摂ると血圧が維持され身体が温まるからなのです
足の少陰腎経  ツボを探す時には、骨や関節が目安になります。例えば、手首 が、そのためにのどが渇いて水を多く飲む、飲みすぎた水分のせ
の関節を曲げるとシワができますが、シワの上にツボがありま いでむくみが出る、ということが起こりやすくなります。
経絡の一部を表わしていま す。関節を曲げたところから指3本分の位置にあったり、指の骨 そんな時はむくみをとるツボを刺激しましょう。
す。経絡は身体中に走ってい の間、足首のぐりぐりした関節の下、膝を曲げたシワから指6本  冬だけではありませんが、立った時におへそを前に出すよう
るので、手や足の先にできる 分のところ、といった具合です。 にすると横隔膜が開いて、経絡の流れが良くなります。姿勢が良
経絡上のツボを刺激すること  また、ツボ探しに役立つのが手の指です。写真にもあるよう くなると身体全体の調子も良くなるということです。寒いから
で、弱っているところまで気 に、自分の指の幅が物差し代わり“尺”になります。親指の横幅は と背中を丸めて縮こまるのは今すぐやめて、背骨がS字に伸びて
が届きます。 1寸、人差し指から薬指までの横幅が2寸、人差し指から小指まで いる状態を作りましょう。
の横幅を3寸と数えています。
  “経絡”の経は、経脈(縦の脈)を表し、絡は絡脈(横の脈)を表し  ツボの位置は、関節を曲げたところから、指3本分(2寸)という 自分でできるツボの刺激の方法
ています。“経絡”は主要なものが左右対称に12本ずつあり、その ふうに探すことができます。ツボの位置は、個人差があるとは
他にも身体の中心の正面と背中側にも1本ずつ、といったよう いっても、自分の身体を自分の指で測るので、探すのはそう難し  ツボを見付けたら、さすったり、マッサージをするといでしょ
くはありません。 う。指でぎゅうぎゅう押すのはよくありません。イタ気持ち良い
程度でとどめておきます。リラックスして、シャワーや温風を当
ツボにはそれぞれ名前があります てて温めてからするとより効果的です。
 自分のツボを知ることは、自分の身体を知り労わる良いチャ
 古代人も身体の痛いところに手を当てたり、張っているとこ ンスです。この冬は、道具も何も要らないツボマッサージをし
ろを叩いたりしていたことでしょう。人間は身体のトラブルの て、快適にお過ごし下さい。

陽陵泉(ようりょうせん) 衝陽(しょうよう)

膝横関節の出っ張り下。 人差し指と中指の間、根元。

ふくらはぎを刺激する

飛陽(ひよう) 通谷(つうこく) 申脈(しんみゃく)

くるぶしの外側と膝横関節の 小指の根元。 くるぶしの外側の出っ張り下。
出っ張りを結んだ線上。ふく
らはぎの横上、真ん中あたり。 さすったりマッサージしなくて 至陰(しいん)
も、椅子に座り、つま先をつけた
ふくらはぎ まま、かかとを数回上下するこ 小指の爪の根元。
とで陽陵泉や飛陽が刺激されて
公孫(こうそん) 温かくなります。 

親指の根元の盛り上がった 足の甲
所から指3本下。
照海(しょうかい) 風門(ふうもん) 首の後ろのツボをあたためる

くるぶしの下。 第2、3頚椎の間にできるへこ
み。背骨を挟んだ両側。
首の後ろ

足首の内側 大椎(だいつい) 風邪を引いた時は、市販の温めシー
トやウィートバッグなどを使って
下を向いた時にできる出っ 大椎や風門を温めるといいでしょ
張り(第7頚椎)の下。 う。ツボの位置より、やや上の方を
温めるのが効果的です。
   1   2   3   4   5   6   7   8   9   10