Page 12 - 201603
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を留める
一杯のコーヒー
ひと粒の豆
最終回 Market Lane Coffee
石渡 俊行〈いしわた・としゆき〉
聞き手・構成:田部井紀子
<石渡 俊行 プロフィール> 写真:Kristoffer Paulsen
1977年神奈川県生まれ。05年ワーキングホリデー・ビザで来豪、地元レ
ストランなどを経てサウス・メルボルンのカフェ『St. Ali』でバリスタ
を、また09年より『Market Lane Coffee』でヘッド・ロースター兼クオ
リティー・コントロールを勤める。カッピングとロースティングのクラ
スを開いています。お問い合わせは E: hello@marketlane.com.au
まで。instagram.com/toshiishiwata
僕がMarket Lane Coffeeで働き始めたのは、2010年。今年 く違う飲み物でした。そして店のスタッフは、一杯のコーヒー が作り、どこからやってきて、どんな風に焙煎したか、そういっ
で6年目です。その前、St Aliでもロースターとして働いていた の向こうにあるストーリー、産地や生産者の話を聞かせてくれ た情報をすべて明確にした『透明性』を持って、本当に質の良
のですが、ビジネスが大きくなるにつれて、僕の仕事もどんど た り 、当 時 メ ル ボ ル ン で は め っ た に 見 ら れ な か っ た フ ィ ル い、おいしいコーヒーを提供したい」。その2人の夢を形にした
ん増えて行き、焙煎に集中することが難しくなっていました。 ター・コーヒーを彼女に紹介してくれました。シンプルなのに、 のが、Market Lane Coffeeでした。
毎日10時間以上働いて、家でも仕事をしたりと頑張っていた より繊細なフレーバーを引き出せるこの抽出方法に「恋して」 僕は早速プラーン・マーケットの一角にあるこの店に行って
けれど、それでも追いつかない程でした。 しまい、それと同時にスペシャルティ・コーヒーの魅力に引き みました。メルボルンではまだごく珍しい、マイクロ・ロース
その頃St Aliでは、できたばかりの豆の卸会社、Melbourne 込まれたフラーラは、当時やっていたマーケティングの仕事を ターを兼ねたカフェ。そして1杯のコーヒー、ひと粒の豆がど
Coffee Marchants(MCM)から、コーヒー豆を仕入れるよう 辞めMonmouth Coffeeで働くようになりました。そこでコー こからやってきたかと言う情報を人々とシェアすることに、こ
になりました。MCMのオーナーとSt Aliの以前のオーナー、 ヒーへの知識と更なる情熱を育てた後、オーストラリアに戻 こまでのこだわりを持っている店は、初めてでした。
マークが知り合いだったこともあり、この会社が輸入した一番 り、MCMを立ち上げたのです。 そしてフラーラの扱うグリーンの素晴らしさを、僕は既によ
最初の豆を買ったのですが、そのクオリティーの高さに、マー MCMスタートから2年程、僕がまだSt Aliで忙しく働いてい く知っていました。そのクオリティは、メルボルンで当時入手
クも僕もとても驚きました。 た時、フラーラともう1人ジェイソンという男性で、MCMの できた他の豆に比べてダントツに良かった。仕事における僕の
この会社のオーナーは、フラーラと言う若い女性。フラーラ コーヒーを焙煎、提供もするマイクロ・ロースター兼カフェを ファースト・プライオリティーは「豆のクオリティー」でした。
はメルボルンで大学を卒業後ロンドンへ渡り、あるカフェでス オープンしたと耳にしました。 Market Lane Coffeeを見て、この店でこの豆を焙煎したい、
ペ シ ャ ル テ ィ・コ ー ヒ ー に 出 会 っ た そ う で す 。そ の カ フ ェ ジ ェ イ ソ ン は 、実 は フ ラ ー ラ と 同 じ 時 期 に M o n m o u t h と強く思いました。それができたら最高だ、と。
「Monmouth Coffee」で提供しているコーヒーは、チョコレー Coffeeでロースターとして働いていたオーストラリア人。帰 それから6年。1番やりたかった仕事を続けています。
トのようなフレーバー、ワインやフルーツ、花の香りがするも 国してから再会し、コーヒーに対して共通の夢を持っている、
のなどさまざまで、それまでメルボルンで飲んでいたいわゆる と言うことに2人は気が付いたそうです。 来月号より、石渡さんと彼のよく知るメルボルンのカフェを紹介する新連載がス
「コモディティ―」、大量生産・大量流通のコーヒーとはまった 「最上のクオリティーのコーヒーを提供したい。その豆を誰 タートします。お楽しみに!
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一杯のコーヒー
ひと粒の豆
最終回 Market Lane Coffee
石渡 俊行〈いしわた・としゆき〉
聞き手・構成:田部井紀子
<石渡 俊行 プロフィール> 写真:Kristoffer Paulsen
1977年神奈川県生まれ。05年ワーキングホリデー・ビザで来豪、地元レ
ストランなどを経てサウス・メルボルンのカフェ『St. Ali』でバリスタ
を、また09年より『Market Lane Coffee』でヘッド・ロースター兼クオ
リティー・コントロールを勤める。カッピングとロースティングのクラ
スを開いています。お問い合わせは E: hello@marketlane.com.au
まで。instagram.com/toshiishiwata
僕がMarket Lane Coffeeで働き始めたのは、2010年。今年 く違う飲み物でした。そして店のスタッフは、一杯のコーヒー が作り、どこからやってきて、どんな風に焙煎したか、そういっ
で6年目です。その前、St Aliでもロースターとして働いていた の向こうにあるストーリー、産地や生産者の話を聞かせてくれ た情報をすべて明確にした『透明性』を持って、本当に質の良
のですが、ビジネスが大きくなるにつれて、僕の仕事もどんど た り 、当 時 メ ル ボ ル ン で は め っ た に 見 ら れ な か っ た フ ィ ル い、おいしいコーヒーを提供したい」。その2人の夢を形にした
ん増えて行き、焙煎に集中することが難しくなっていました。 ター・コーヒーを彼女に紹介してくれました。シンプルなのに、 のが、Market Lane Coffeeでした。
毎日10時間以上働いて、家でも仕事をしたりと頑張っていた より繊細なフレーバーを引き出せるこの抽出方法に「恋して」 僕は早速プラーン・マーケットの一角にあるこの店に行って
けれど、それでも追いつかない程でした。 しまい、それと同時にスペシャルティ・コーヒーの魅力に引き みました。メルボルンではまだごく珍しい、マイクロ・ロース
その頃St Aliでは、できたばかりの豆の卸会社、Melbourne 込まれたフラーラは、当時やっていたマーケティングの仕事を ターを兼ねたカフェ。そして1杯のコーヒー、ひと粒の豆がど
Coffee Marchants(MCM)から、コーヒー豆を仕入れるよう 辞めMonmouth Coffeeで働くようになりました。そこでコー こからやってきたかと言う情報を人々とシェアすることに、こ
になりました。MCMのオーナーとSt Aliの以前のオーナー、 ヒーへの知識と更なる情熱を育てた後、オーストラリアに戻 こまでのこだわりを持っている店は、初めてでした。
マークが知り合いだったこともあり、この会社が輸入した一番 り、MCMを立ち上げたのです。 そしてフラーラの扱うグリーンの素晴らしさを、僕は既によ
最初の豆を買ったのですが、そのクオリティーの高さに、マー MCMスタートから2年程、僕がまだSt Aliで忙しく働いてい く知っていました。そのクオリティは、メルボルンで当時入手
クも僕もとても驚きました。 た時、フラーラともう1人ジェイソンという男性で、MCMの できた他の豆に比べてダントツに良かった。仕事における僕の
この会社のオーナーは、フラーラと言う若い女性。フラーラ コーヒーを焙煎、提供もするマイクロ・ロースター兼カフェを ファースト・プライオリティーは「豆のクオリティー」でした。
はメルボルンで大学を卒業後ロンドンへ渡り、あるカフェでス オープンしたと耳にしました。 Market Lane Coffeeを見て、この店でこの豆を焙煎したい、
ペ シ ャ ル テ ィ・コ ー ヒ ー に 出 会 っ た そ う で す 。そ の カ フ ェ ジ ェ イ ソ ン は 、実 は フ ラ ー ラ と 同 じ 時 期 に M o n m o u t h と強く思いました。それができたら最高だ、と。
「Monmouth Coffee」で提供しているコーヒーは、チョコレー Coffeeでロースターとして働いていたオーストラリア人。帰 それから6年。1番やりたかった仕事を続けています。
トのようなフレーバー、ワインやフルーツ、花の香りがするも 国してから再会し、コーヒーに対して共通の夢を持っている、
のなどさまざまで、それまでメルボルンで飲んでいたいわゆる と言うことに2人は気が付いたそうです。 来月号より、石渡さんと彼のよく知るメルボルンのカフェを紹介する新連載がス
「コモディティ―」、大量生産・大量流通のコーヒーとはまった 「最上のクオリティーのコーヒーを提供したい。その豆を誰 タートします。お楽しみに!
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