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わたしにもできる 冷たい風が吹くこの季節。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 寒いから家にこもりがち+徒
歩圏内の用事も車で済ませたりしている人も多いのでは。と、問い掛けている私自身が、万年運
冬から始める 動不足だったりするのですが…。つい最近、久しぶりに水泳でもと思いプールに行ったら衝撃
的な出来事が。数年前までは200mを5本、1km程度泳いでいたのに、100m泳いだだけでヘト
ヘトに。体力の衰えに愕然として、しばらくの間プールサイドに立ち尽くしてしまいました。

お家でかんたん 「ダイエットより、まずは体力促進だわ!」と思ってはみるものの、ウォーキングならできそうだ
けど、天気の悪い日が多く、寒いこの季節だと3日坊主になる可能性大。ジムやプールに定期的
に通うのは、わざわざその場所に行くこと自体が面倒など、考えられる限りの言い訳を並べて
実行しない私がここにいる。このままではいけないことは、頭では分かっている。でも、そもそ

トレーニング も運動が好きじゃないし、飽き性で根性がない。そんな人はどーすりゃいいの。教えてよ。そこ
で、年齢や体力に関係なく、家でできるエクササイズをご紹介。筋力・体力促進だけでなく、美容
やダイエットにも効果があるので、運動不足な人もそうでない人もお試しを。
(取材・撮影協力/湯川久美子 文/冨)

はじめに スロートレーニングの実践

本題に入る前に、皆さんにとってどんなエクササイズが理想的ですか? 個人的には、特別な用 スロトレの基本は、今まで普通に行ってきた腕立て伏せや腹筋、スクワットなどをゆっくり行
具が要らず、簡単で覚えやすく、思いついた時や空いた時間に短時間でできること。更に、比較 うことです。しかし単にゆっくりやるだけではなく、呼吸と動作を合わせることが大事なポイ
的早い段階で運動の効果が分かると、達成感や充実感が得られて精神的にも良さそうだし、モ ントです。呼吸の基本は、力を入れる時に息を吐き、力を抜く時に息を吸います。
チベーションも保てると思うのですが、どうでしょうか。そこで、誰でも、どこでも、気軽にでき
ると数年前から耳にするようになった『スロートレーニング』を紹介したいと思います。 スクワットなら、両足を肩幅程度に軽く開いて、頭の後ろで手を組み、膝を軽く曲げて立ちま
す。息を吸いながら、膝が90度位に曲がった状態になるまでしゃがみます。息を吐きながら、最
スロートレーニングとは 初の姿勢にゆっくり戻します。

スロートレーニング(以下スロトレ)とは、文字通りひとつひとつの動作をゆっくり行うト スロトレは、ひとつの動作に大体3秒掛けるといわれていますが厳密に何秒という決まりがあ
レーニングで、加重トレーニング(筋トレ)のひとつです。筋トレと聞くと、運動と縁の無い私 るわけではないようです。何秒で上げて何秒で下げることだけを意識するのではなく、筋肉の
は「腹筋500回!」のような、汗まみれになって、歯を食いしばりながら行うスポ根的なイメー 緊張を解かないことが大切です。一連の動作の中で、筋肉の力が抜けないようにすること、動き
ジしかないのですが、どうやらスロトレはこんな偏見的なイメージを覆すトレーニングのよ に合わせて呼吸することを意識しながら行って下さい。
うです。
スロートレーニングのルール
ゆっくり動く筋トレとはどのようなものかピンとこないのですが、関節や体勢を固定せず、ひ
とつひとつの動きをゆっくり行うことにより、筋肉への血流を制限して筋肉に大きな負荷が掛 ①正しいフォームで:スロトレに限らず、どんなエクササイズでも正しい姿勢で行わなければ
かっていると錯覚させることで筋肉の成長を促します。簡単にいうと、軽い負荷なのにハード 意味がないどころか、けがに発展することもある基本中の基本ルールです。
な運動をしたと筋肉を勘違いさせている訳ですね。 ②ゆっくり動かす:エクササイズ中は、筋肉に力を入れ続けること。筋肉の力を抜かないため
に、ひとつひとつの動作をゆっくり行います。反動をつけないように注意して下さい。
具体的な例として、スクワットを取り上げてみましょう。通常は、しゃがむ(膝を曲げ切る)→立 ③ノンロック:エクササイズ中に筋肉を休ませないために、関節をロックさせない=伸ばしき
ち上がる(膝を伸ばし切る)という動作を繰り返しますが、スロトレではしゃがむ(膝を90度位 らない、曲げきらない(ノンロック)が鉄則です。
に曲げた状態)→中腰(膝を伸ばし切らない)の動作をノンストップでゆっくり行います。 ④呼吸を意識:ふーっと息を吐き始め、その1秒後にエクササイズを開始します。力を入れる時
は息を吐く、力を抜く時は息を吸う、を意識して下さい。
スロトレのメカニズムを簡単に説明してみします。筋肉はグッと力を込めると硬くなり、血管 ⑤無理をしない:5~10回繰り返せるくらいの負荷が適切です。スロトレは回数、強度よりも安
を圧迫するので血液の流れが悪くなります。なので、スクワットでしゃがみ切らない立ち上が 定した正確なフォームで行うことが重要なので回数よりも姿勢を気にして下さい。
り切らないで動き続けるスロトレ方式は、血流が制限された状態で行う運動になります。血流
が制限されると、筋肉内の筋酸素化レベルが下がります。このような低酸素環境状態での運動 スロートレーニングの頻度・タイミング
では、乳酸などの無酸素性の代謝物が多量に筋肉内に蓄積します。乳酸が多量に蓄積すると、浸
透圧を一定にする働きから体脂肪の分解に役立つ成長ホルモンの分泌が高まります。これが、 スロトレは毎日行っても問題はありませんが、1日10分程度、1週間に2~3回行うのが効果的と
筋肉にハードな運動してると、勘違いさせている状態になります。だから、通常の筋トレより軽 いわれています。それは、筋肉に負荷を掛けて成長させる過程で、休息期間が必要になるから。
い負荷と少ない回数で筋肉を鍛えることが可能になる訳です。 私のように最初のうちは毎日やっていたのに、ある時1日サボったのをきっかけにそのまま
フィードアウトしまうタイプの人(私だけ?)には、「まぁ、明日やれば良いかぁ」と開き直れるの
苦行のように回数をこなしたり、マシーンで長時間トレーニングをしなくても効率良く筋肉を が、継続していく上で重要なポイントになりそうですね。
鍛えられるなんて、私のような人には朗報なのでは。また成長ホルモンは、肌の弾力を維持する
働きがあり、アンチエイジング効果も期待できるので、女性には魅力的なおまけ付きと、いえる スロトレを行うタイミングは、トレーニングによって体脂肪を分解しやすい状態になるので、
のではないでしょうか。 できるだけ身体を活動させる前、1日のスタート時や外出する前、または入浴前などに行うこと
がベストです。更に脂肪を燃焼したい人は、スロトレ後に有酸素運動を行うと脂肪燃焼効果が
スロートレーニングのメリット 大きくなるので、組み合わせてみて下さい。

スロトレのメリットの前に、まずは筋トレ全般のメリットを紹介します。まず筋肉がつき、エネ 個人差はありますが、スロトレを2~3ヶ月継続して行うと、筋肉量の増加、身体全体が引き締
ルギーを効率良く消費する体になること。そして、体力がついて普段から活動的に動けるよう まったことを実感する人も多いようです。筋肉が増えれば基礎代謝もアップし、それだけ太り
になること。 にくい身体になるし、ちょっと動くのも苦にならないから活動的になる。そうすると、更に運動
量が増えて筋力・体力が向上するという好循環が生まれてきます。
人間は、生命活動の基本的サイクルである基礎代謝機能が衰えると、健康な体のメカニズムが
崩れ、結果としてさまざまな生活習慣病を引き起こします。筋トレを継続的に行うことは、生活 まとめ
習慣病の予防に繋がるといえます。
トレーニングは、始めるより継続することの方がはるかに難しい(って私だけ?)。そこで、どう
しかし通常の筋トレは、鍛える部位になんらかの方法で重い負荷を掛けるため、筋肉や関節の して継続できないか、どうしたら継続できるかについて考えてみました。運動が好きでない人
故障を招くリスクが伴います。また筋トレ中、力んだ状態の時に一時的に血圧が上がるので、高 にとってトレーニングは楽しくないし、運動が好きでも忙しい人はトレーニングをする時間が
血圧の人にはお勧めできないといった欠点もあります。 取れないのが原因ではないのでは?

そこで、従来の筋トレの欠点をカバーしたスロトレに注目。一番のメリットは、小さな負荷で効 楽しくないけど、頑張ろうという気持ちにさせるモチベーションは、トレーニングの爽快感
率良く筋肉に働き掛けるので、関節などへの物理的な負担が少なく安全でけがの心配が少ない や達成感、効果が実感できた時なのではないでしょうか。スロトレは、負荷が小さいのにト
ことです。更に、少ないセット数で効果が得られるので、トレーニングに掛かる時間が短縮でき レーニングの充実感が味わえ、効果も比較的早く実感できるし、何より毎日行わなくても大
ること。動作をゆっくり行うことで正確なフォームを保ちやすく、普段あまり使われていない 丈夫なので、運動嫌いな人にもグッとハードルが低くなるハズ。更に、特別な器具が要らない
筋繊維にも刺激を与えることなどが挙げられます。 し、1部位のトレーニングだけなら時間も取らないので、オフィスでの気分転換や家でテレビ
を見ている時など、工夫次第で隙間トレーニングができるのもうれしい限り。生活リズムを
以上のことから、既に筋力の落ちている人やけがのリスクが高い高齢者、高血圧の人だけでな 崩さずに取り入れられるスロトレなら、私でも長期継続が可能かも。日頃から、体を鍛えてい
く、運動をするまとまった時間が取れないという人にもピッタリではないでしょうか。 る人も、私のようにな~んにもしてない人も、試す価値アリな気がします。
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