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知っているようで、意外と知らない

は のお手入れ

虫歯が痛かったり、歯茎が腫れたり…。お口の問題を抱えていると、おいしく物を食べられ
ないし、眠れなかったりして、なんだか毎日が楽しくなくなりますね。いつまでも自分の歯
でちゃんと食べたい。健康な歯を守るために大切なケア。今日からしっかり始めませんか。

協力:柴田歯科医院(W: www.shibatadental.com.au) まとめ:金井幸子

虫歯のこと おさらい 実践編 上手な磨き方

■どうして虫歯になるのか? ■歯磨きは重要!
 虫歯とは、酸によって歯のエナメル質が溶けて、その下の象牙質に穴が開いたり変色したり  歯周病や虫歯の原因となる歯垢は生きた細菌の塊です。歯とほぼ同じ乳白色で水に溶けに
する病気です。専門用語では、う蝕(しょく)とも呼ばれ、英語では「Caries」、「Decay」または くく、歯の表面に粘着しているため、ゆすぐだけでは取り除くことはできません。食後のしっ
「Cavity」と呼ばれます。虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、元々はヒトの口腔内には存在 かり歯磨きで、歯垢を取り除くことがとても大切です。睡眠中は唾液の分泌が減り、細菌が繁
していません。ミュータンス菌を持っている人の唾液が食器の共有や口移しによって感染し 殖しやすい状態になるので、眠る前は特に丁寧に磨きましょう。
ます。このミュータンス菌が、きちんと磨かれずに残った食べかすと混じり合って歯垢(プ
ラーク/ plaque)となり、糖分をエサに酸を作り出します。そして歯の表面にあるエナメル質 ■歯磨きのタイミング
を溶かしてしまうことで虫歯になってしまいます(これを「脱灰(だっかい)」といいます)。食  歯の表面は、エナメル質という硬い組織でできていますが、炭酸飲料や肉類などの酸性の強
べかすが溜まりやすいところや、歯の溝や歯間などの磨きにくいところに特に虫歯ができや い物を食べた後は、口内環境が酸性になり、歯が削れやすくなっています。食後すぐに歯を磨
すいのです。 くのは避け、唾液の働きによって口の中が中和、再石灰化されるように、30分程度時間をおい
てから行いましょう。時間をおけない場合は、できるだけ野菜や果物などのアルカリ性のもの
■虫歯にならないためのポイント を食べて口内環境を中和するようにしましょう。アルカリ性のものを食べた後はすぐに磨い
ても問題ありません。大事なのは酸化状態ですぐに磨かないことです。歯磨きは「食後30~40
① 糖分を含む食べ物を控える 分してから」と覚えておきましょう。また、どうしても食後の歯磨きができない場合は、口をゆ
 糖分が含まれている食事はすべて虫歯の原因になります。糖分は、甘い物だけではな すいでガムを噛むことで唾液の循環を良くしましょう。但し、ガムを噛んだり口をゆすぐこと
く、ご飯やパンなどの主食や多くの加工食品などさまざまなものに含まれているので、甘 は、歯磨きの代わりにはなりません。歯垢・食べかすの除去をしなければ虫歯の予防に繋がら
い物を控えれば虫歯にならないと考えるのは間違いです。糖分をたくさん含む食品や飲 ないので、基本的にはしっかりと歯磨きをして歯垢を取り除くことを心掛けましょう。
料をやめて、シュガーフリーのものを選ぶようにしましょう。炭酸ドリンクは、虫歯のリ
スクをぐんと高めてしまう危険があります。また、フルーツジュースも食事の時間だけに 【酸性が強い食べ物】
し、食間は水で薄めたシュガーフリーの果汁ドリンクなどにしましょう。飲み物は水や牛 アルコール、コーヒー、紅茶、ジュース、ジャム、蜂蜜、ココア、イースト、マスタード、
乳がお勧めです。キシリトール配合の飴やガムには虫歯を予防する効果があります。 酢、しょうゆ、卵、牛肉・鶏肉・豚肉、養殖の魚、チーズ、ドライフルーツ、きのこなど
【アルカリ性が強い食べ物】
② 食事・間食の回数を見直す きゅうり、ほうれん草、パセリ、ブロッコリー、芽の野菜、ケール、海藻類など
 口腔内は通常pH6.8~7.0で中性を保っていますが、pH5.5以下になるとエナメル質が
溶け出して虫歯になります。食後の口腔内は酸性に傾きますが、唾液の緩衝機能によって 豆知識 酸性の食べ物とアルカリ性の食べ物
約30~40分で中性に戻ります。しかし、食事や間食の回数が増えると、口腔内が酸性に傾 肉類などの動物性タンパク質や穀物は酸性。野菜や果物はアルカリ性と覚えましょう。
いた状態が長くなるので、虫歯になりやすい環境が続いてしまいます。そのため、間食は
控えて1日3食の食事にすることが好ましいでしょう。歯の健康には、糖分の摂取量だけ ■歯ブラシの選び方
ではなく、摂取回数が関係しているということを覚えておきましょう。甘いものを食べる  軟らかめの歯ブラシの方が毛先がきちんと歯に当たって効果的に磨けます。ヘッドの大き
のは食事の時間に留めておき、間食は、糖分をあまり含まない食べ物にしましょう。 さは、各人の口の大きさや歯の大きさに合わせて、奥歯まで磨けるものを選びましょう。

③ 唾液の分泌量が減らないようにする ■歯磨き粉の選び方
 唾液は、歯が脱灰しても(初期虫歯になっても)、酸を中和して洗い流したり、溶け出し  自分の歯や歯茎の状態に合う歯磨き粉を使いましょう。例えば知覚過敏の症状がある時
たカルシウムやリンを歯の表面に戻す働きをします。これを「再石灰化」といいます。しか は知覚過敏用を、幼児には子供用の歯磨き粉を選びます。歯磨き粉はフッ素が含まれている
し、唾液の量が少ないと再石灰化が行われず、虫歯になるリスクが高くなってしまいま ものがお勧めです。但し、小さな子供で歯磨き粉を飲み込んでしまう心配がある場合は、
す。唾液の量が減る原因は、内服薬の影響や咀嚼回数の減少などいくつかあります。水を フッ素の量ができるだけ少ないものを選びましょう。電動歯ブラシを使う場合も通常の歯
飲んだり、ガムを噛んだりして、唾液の分泌を促しましょう。 ブラシの時に使用しているものを使います。歯磨き粉に配合されている研磨剤は、歯への影
響をチェックしたものを使用しているので、正しくブラッシングすれば、歯を傷付けること
④ クリーニングと定期検診が最高の予防策 はありません。
 オーストラリアでは、多くの人が半年に一度、歯の定期検診とクリーニングを行って
います。痛みや腫れなどの自覚症状が出た時には、既に状態が悪化していることが多く、 ■正しい歯の磨き方
その分治療時間や費用も多く掛かる場合が殆どです。そういう意味でも、半年に一度の検 ●薬用成分の効果を充分に発揮させるため、歯ブラシにのせる歯磨き粉は少な目で十分です。
診は大切です。虫歯にならないよう定期的に歯科医に通いましょう。
1~2cm(約1g)を目安にしましょう。
半年に一度はクリーニングと定期検診を!

●歯に良い食べ物 ○グミ、キャラメル、ソフトキャンディー、ドライフルーツ:
○牛乳・ヨーグルト・チーズの乳製品やアーモンド、ブロッコリー 砂糖を含み歯にくっつきやすいので、長い時間、歯が砂糖の刺激を受ける。
虫歯予防にとても大切な栄養素カルシウムが多く含まれる。成長過程にある子供には
特に大切。 ○ポテトチップス:
○サーモンやサバなどの油の乗っている魚 歯にくっついたり歯の間に詰まりやすく、食べたあと口に残ったもの
ビタミンDが多く含まれ、カルシウムの吸収を高めてくれる。 が糖に変わり細菌の繁殖や酸化を促す。
○オレンジやグレープフルーツなどの柑橘系のフルーツ・イチゴ
ビタミンCを多く含み、歯肉炎などの炎症を抑えてくれる働きがある。 ○アルコール:
○りんご・にんじん・セロリなど食物繊維が多く含まれる野菜や果物 体内水分を奪い、口の乾燥をもたらすため唾液の量が減り、虫歯になりやすくなる。
繊維質の食べ物が唾液を促し、虫歯から歯を守ってくれるミネラルを生成。
○スポーツドリンク:
●歯のために気を付けるべき食品 ジュースや炭酸飲料などと同じように、かなりの砂糖が含まれている。
 砂糖不使用と表示のある商品でも、甘味料が含まれて
いるものがあります。この機会に見直してみましょう。 ○味が付いているヨーグルト:
多量の砂糖が既に含まれている。毎日食べるなら、ナチュラルヨーグルトに切り替えま
しょう。

○ソース、冷凍・レトルト食品:
意外と大量の砂糖が使われている場合があるので気を付けましょう。
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