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を留める
一杯のコーヒー ブラジル、Caxambu地区の農園
ひと粒の豆
第2回 コーヒー豆の生まれるところ
石渡 俊行〈いしわた・としゆき〉
聞き手・構成:田部井紀子 写真提供:Market Lane Coffee
<石渡俊行プロフィール>
1977年神奈川県生まれ。05年ワーキングホリデー・ビザで来豪、
地元レストランなどを経てサウス・メルボルンのカフェ『St. Ali』
でバリスタを、また09年より『Market Lane Coffee』でヘッド・
ロースター兼クオリティー・コントロールを勤める。国内の各大会
で数々の受賞歴を持つ。メルボルンのコーヒー業界で活躍する日
本人としては、パイオニア的存在。
スペシャルティ・コーヒーは、よくワインに比されます。例え ボリビアは細い未舗装の山道、崖から落っこちたら絶対死ん てしまうし、収穫量も減ってしまいます。特に温暖化の影響
ばアロマ。チョコレートとかナッツ、それからストーンフルー
ツなどと表現される味わいのことです。このアロマがワインは じゃう、みたいな道をずーっと行ったところに農園があったり か、ここ数年は収穫量がすごく減ってしまったと農園の人が
150種類あるのに比べて、コーヒーは800種類以上もあるんで
す。それからテロワール、気候や地形によって味が変化するの します。 話していました。
もワインと似ているところ。これに関しては歴史の長いワイン
の世界に見習う部分がたくさんあるのですが、豆とテロワール ボリビアの農園は小規模の家族経営が多く、1年の生産量が そこで農学博士のような人をコスタリカから呼んで、アド
の関係は、スペシャルティ・コーヒーの世界でもどんどん明確
になってきています。今回は、そんな豆が生まれる農園の話の ほんの数袋から300袋程度。そういった農園の豆は「マイクロ・ バイスをしてもらったそうなのですが、家族で代々、ずっと同
話をしましょう。
コーヒー豆の産地は、ブラジル、コロンビア、グアテマラなど ロット」、現地では「ナノ」と呼ばれています。数袋というところ じ栽培方法にこだわってきた農園さんは、なかなか新しい方
の中南米、エチオピアに代表されるアフリカ、ベトナムやイン
ドネシアなどのアジアと、世界各地に存在しますが、コーヒー は知り合いや兄弟でまとめて出荷するのですが、Market Lane 法には変えられない。もちろんフレキシブルな人もいて、半分
豆を育てるのに大事な条件が、まず高度があること。それに
よって豆の実(チェリーと呼ばれます)がなってから熟すまで Coffeeで入れているママ二・ファミリーもそのひとつです。 は新しい方法、あと半分は昔の方法でやっている農園もあり
の時間が長くなり、豆の甘味、フレーバーが増すんです。
具体的には標高1,000~2,000mのところにある農園が多 コーヒー栽培だけでは食べていけない農園ももちろんあって、 ました。ボリビアの農園は、今、こうした変化の時を迎えてい
いのですが、高度があるということはアクセスも大変。僕はブ
ラジルとボリビアのコーヒー農園に行ったことがあって、特に 収穫期以外の時はタクシー・ドライバーをしている人もいま ます。
す。逆にブラジルは大規模なところが多く、ある農園の生産高 ボリビアの豆は、大きくいうとフローラルのアロマがありま
はボリビア全土の収穫量に匹敵するほどです。 す。それからナッツとチョコ。でも農園によって、味はまったく
僕が去年ボリビアに行った時は、5日間で7ヶ所の農園を訪 違います。ワインも、例えばこの地域のシャルドネはこういう
問、生産者の人達と栽培方法について話を聞いたり、収穫後の 感じっていうのはあっても、一本いっぽんの味わいはまったく
精製を見たりしました。ボリビアは他の国にはない条件の優 異なる。それと同じです。
れた農園が多く、特に有機にこだわりがある。もともと標高が 今Market Lane Coffeeには、ボリビアの農園の豆が入って
ある上、すごく肥沃な土地なんです。それで、量は少ないなが います。フィルター用がニコラスクロッケという農園、それか
らこれまでとてもクオリティーの高い豆が取れていた。ただ らエスプレッソ用のブレンドには、あの小さな農園のママニ・
有機栽培の木は敏感で、気候が安定しないと病害虫にやられ ファミリーが50%。是非味わいに来て下さい。
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一杯のコーヒー ブラジル、Caxambu地区の農園
ひと粒の豆
第2回 コーヒー豆の生まれるところ
石渡 俊行〈いしわた・としゆき〉
聞き手・構成:田部井紀子 写真提供:Market Lane Coffee
<石渡俊行プロフィール>
1977年神奈川県生まれ。05年ワーキングホリデー・ビザで来豪、
地元レストランなどを経てサウス・メルボルンのカフェ『St. Ali』
でバリスタを、また09年より『Market Lane Coffee』でヘッド・
ロースター兼クオリティー・コントロールを勤める。国内の各大会
で数々の受賞歴を持つ。メルボルンのコーヒー業界で活躍する日
本人としては、パイオニア的存在。
スペシャルティ・コーヒーは、よくワインに比されます。例え ボリビアは細い未舗装の山道、崖から落っこちたら絶対死ん てしまうし、収穫量も減ってしまいます。特に温暖化の影響
ばアロマ。チョコレートとかナッツ、それからストーンフルー
ツなどと表現される味わいのことです。このアロマがワインは じゃう、みたいな道をずーっと行ったところに農園があったり か、ここ数年は収穫量がすごく減ってしまったと農園の人が
150種類あるのに比べて、コーヒーは800種類以上もあるんで
す。それからテロワール、気候や地形によって味が変化するの します。 話していました。
もワインと似ているところ。これに関しては歴史の長いワイン
の世界に見習う部分がたくさんあるのですが、豆とテロワール ボリビアの農園は小規模の家族経営が多く、1年の生産量が そこで農学博士のような人をコスタリカから呼んで、アド
の関係は、スペシャルティ・コーヒーの世界でもどんどん明確
になってきています。今回は、そんな豆が生まれる農園の話の ほんの数袋から300袋程度。そういった農園の豆は「マイクロ・ バイスをしてもらったそうなのですが、家族で代々、ずっと同
話をしましょう。
コーヒー豆の産地は、ブラジル、コロンビア、グアテマラなど ロット」、現地では「ナノ」と呼ばれています。数袋というところ じ栽培方法にこだわってきた農園さんは、なかなか新しい方
の中南米、エチオピアに代表されるアフリカ、ベトナムやイン
ドネシアなどのアジアと、世界各地に存在しますが、コーヒー は知り合いや兄弟でまとめて出荷するのですが、Market Lane 法には変えられない。もちろんフレキシブルな人もいて、半分
豆を育てるのに大事な条件が、まず高度があること。それに
よって豆の実(チェリーと呼ばれます)がなってから熟すまで Coffeeで入れているママ二・ファミリーもそのひとつです。 は新しい方法、あと半分は昔の方法でやっている農園もあり
の時間が長くなり、豆の甘味、フレーバーが増すんです。
具体的には標高1,000~2,000mのところにある農園が多 コーヒー栽培だけでは食べていけない農園ももちろんあって、 ました。ボリビアの農園は、今、こうした変化の時を迎えてい
いのですが、高度があるということはアクセスも大変。僕はブ
ラジルとボリビアのコーヒー農園に行ったことがあって、特に 収穫期以外の時はタクシー・ドライバーをしている人もいま ます。
す。逆にブラジルは大規模なところが多く、ある農園の生産高 ボリビアの豆は、大きくいうとフローラルのアロマがありま
はボリビア全土の収穫量に匹敵するほどです。 す。それからナッツとチョコ。でも農園によって、味はまったく
僕が去年ボリビアに行った時は、5日間で7ヶ所の農園を訪 違います。ワインも、例えばこの地域のシャルドネはこういう
問、生産者の人達と栽培方法について話を聞いたり、収穫後の 感じっていうのはあっても、一本いっぽんの味わいはまったく
精製を見たりしました。ボリビアは他の国にはない条件の優 異なる。それと同じです。
れた農園が多く、特に有機にこだわりがある。もともと標高が 今Market Lane Coffeeには、ボリビアの農園の豆が入って
ある上、すごく肥沃な土地なんです。それで、量は少ないなが います。フィルター用がニコラスクロッケという農園、それか
らこれまでとてもクオリティーの高い豆が取れていた。ただ らエスプレッソ用のブレンドには、あの小さな農園のママニ・
有機栽培の木は敏感で、気候が安定しないと病害虫にやられ ファミリーが50%。是非味わいに来て下さい。
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