クリスの使えるオージースラング教室 VOL.12(最終回)

 今月紹介する俗語は、第2回の "Bugger" と共に、オージスラングの中で最もオーストラリアらしい単語です。1894年、オーストラリアの当時有名であったニュース誌 "The Bulletin" の8月18日号でこの俗語を「オーストラリアの形容詞」と述べて以来、テレビCM、政治家の発言、新聞記事などに何回も登場しています。

 

今月は「Bloody」

 その言葉は "Bloody" です。17世紀イギリス生まれの言葉ですが、母国では1750年代から1970年代、大変下品な言葉だと思われていました。40年代では、家の外で使うと警官に捕まって罰金をとられてしまうほど悪く思われていました。

 しかし同年代にオーストラリアのある離婚裁判で、裁判長が「Bloodyはあまりにも多く使われており、無礼な言葉だと思われていない」と発言し、イギリスとオーストラリアの考え方の違いを明らかに示しました。

 形容詞や名詞を強調するために使用されている "Bloody" ですが、本来 "Bloody" は、「血まみれの」という意味で使用されていました。けれど、現在のような使われ方のはじまりは残念ながら不明です。語学者によると、「血というもの自体が痛々しいから、現在の使い方になった」という説明が最も事実に近いのではと推測されました。

  「なぜイギリスでは失礼な言葉だったのに、オーストラリアでは普通に使われていたのか」というと、イギリスの階級社会とオーストラリアの歴史に理由があります。昔、イギリスでは "Bloody" は低階級の人達の言葉とされ、中・高階級の人達はまったく使わず、その代わりに "Blasted" などを使いました。最初に来豪した白人はほとんど低階級の人達や囚人だったため、「階級のない社会を作ろう」という気持ちから、"Bloody" の使用が許されたのです。

 そして、現在もオーストラリアでは、"Bloody" が通用しています。きっと最も有名な使われ方は2006年に始まった、Tourism Australia(オーストラリア政府観光局)の "Where the bloody hell are you?" の海外観光客誘致キャンペーン・スローガンで、テレビCMや看板などで世界中に大々的に使われました。残念ながらたったの2年間で終了しました。大失敗という結果で、恐らくスローガンよりも「1800万ドルの無駄使い」という快挙が最終的には覚えられてるかと思いますが、それこそオーストラリア人と他の英語圏内の言葉使いの考え方を示した事柄だったとも言えるかもしれません。

 使い方は次のように名詞の前に置いて、その名詞を強調する使い方です。"That’s a bloody lie!" というと「なんという嘘だ!」というように強い表現になります。そして、伝説的な表現の "You bloody beauty!"、あるいは "You bloody legend" にも使われ、「最高!」という場合に使います。気がきいた友達が、タイミングよくビールを持ってきくれたらこういうふうに "Mate, you’re a bloody legend!" と言ってみては。ちなみに、女性は普段 "Bloody" を使いませんが、怒っているときは、ほかの名詞の前につけて使う場合もあります。

同じ意味で言葉の真ん中に入れることもできます。"Absolutely" は "Abso - bloody - lutely"、"Too right!"(そのとおり)は "Too bloody right" と言い換えられます。同意するときの俗語は "Bloody oath!" です。もともと "My blood oath"(血の約束)という意味で "You can have my blood oath" から来ました。
もちろん、"Bloody hell!" という表現もあり、「くっそー!」か「ゥア!」(びっくりするとき)にも使えます。

今月号で「オージースラング教室」の最終回となります。1年間読んでいただき、読者のみなさんに心から感謝しています。少しでも役に立てたなら幸いです。では!

● 最終回クイズ ●

最終回を飾って、すべての復習です!

1. "I’ll give it a bash" と言う表現ってどういう意味なのでしょうか。

A. ぶん殴るぞ!
B. やってみようではないか!
C. ブッシュに行きます!

2. オージールールズフットボールでは、どうやってチームを応援すべきですか?

A. "Carn the (チームのあだな)"
B. "Up there Kazaly!"
C. "Allez allez!"

3. 自分の友達の名前が“John”の場合、オージーらしい省略方法とは?

A. Johnny
B. Johnno
C. John-Thomas

4. 知人の名前を一瞬忘れてしまったら下記の代替え用の言葉は全て使えますが、どれが最もオージーらしいのでしょうか。

A. Mate
B. Dude
C. Bruh

5. 「いいね!」はオージーらしく言うと…

A. Good stuff
B. Top work
C. Sweet as!

答え:
1. (B)
2. (A)
3. (B) ちなみにCの“John Thomas”は古い英語で「男の性器」という意味でしたので気を付けましょう。
4. (A)
5. (C)

Chris Nicholls(クリス・ニコルス)

 父はイギリス人、母は日本人。日本で生まれ、幼少期をイギリスで過ごす。その後、家族でオーストラリア移住。英語教師の資格(CELTA)を取得し、日本の英会話学校で英語教師として2年勤務。2007年からはジャーナリストとして活躍。日本語も堪能なので、日本人が間違いやすい英語の指導に自信あり。

(2007年3月号 Dengon Netより更新)