ハーブのある暮らし 後編

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ハーブとは一般的に、根、茎、葉、花などが食用、薬用、香り付けなどに使われる植物を指します。料理用にスーパーで買い求め、使いきれずに冷蔵庫の中でダメにしてしまった…という経験がある方も多いのでは。ハーブはそれぞれの特徴に注意さえすれば、実は育てるのは簡単。自分で育てれば、新鮮なものを必要なときにいつでも収穫できるし、オーガニックで育てるのも簡単、そして何より経済的です。広い庭がなくても、ベランダやキッチンの窓辺に置いたポットで十分育てられます。

これからはハーブを育て始めるのにぴったりの季節。たくさん種類がありますが、どんな料理に使いたいかを考えて自分好みのハーブを選び、そのハーブが好む環境を作ってやるように心掛けましょう。ぜひ、ハーブのある暮らしを楽しんでみて下さい。


OREGANO オレガノ

語源はギリシャ語で山を意味する『oros』と、喜びや美を意味する『ganos』で、文字通り訳せば「山の喜び」。ギリシャでは王冠に編み上げられ、結婚するカップルが身に付けます。グリークオレガノ、スイートマジョラム、ウィンターマジョラムなど種類も豊富。

育てる耐寒性のある多年草で、収穫の時期は、初夏から秋にかけて。種から育てられる種類もありますが、春に挿し芽や株分けで増やすのがお勧めです。日当りが良くて水はけの良い乾燥した場所を好みます。ポットでもうまく育ちますが、水のやりすぎに注意しましょう。多湿を嫌うので、花が咲いた後に刈り込んで風通しを良くします。冬になると地上部は枯れてしまうことがありますが、土中の部分は元気なので春になるとまた育ち始めます。冬になったら土から6cm程度の高さに刈り込み、ポットで育てている場合は屋内に取り込みましょう。マジョラム種は半耐寒性のため、冬を越さずに1年草として育てられることが多いですが、オレガノは強く、数年にわたり収穫し続けられます。

食べる新鮮な葉を肉料理、トマト料理、ピザなどに加えたり、乾燥や冷凍して保存できます。消化を助け、防腐剤や保存剤の役割を果たします。ブーケガルニの材料にも使われています。オイルやビネガーを作ったり、開いたばかりの花をドライフラワーにもできます。


ROSEMARY ローズマリー

地中海が原産ですが、今では温暖な地域で広く育てられています。古代ラテン語で海の滴を意味する『rosmarinus』が語源だと言われています。針のような形の濃い緑色の葉は強い香りを放ちます。初春から初夏、時には初秋まで淡い紫色の花をつけます。

育てるローズマリーは耐寒性で常緑の多年草。1年を通じて収穫することができます。春まきで種から育てることもできますが、発芽温度は27-32度なので充分に暖かくなってから行いましょう。春に新芽を15cm程の長さで切って挿し芽にするか、夏に花の咲いていない枝を挿し木にして育てるのが一般的です。水はけが良くて日当りの良い、乾燥した場所で育てます。水のやり過ぎは嫌うので注意しましょう。コンテナでもよく育ちます。木化するのを避けたい場合は、短く刈り込むようにします。ただし、霜の降りる季節や秋に短く刈り込むとダメージを受けやすいので避けて下さい。20年から30年育つこともありますが、味は若い株の方が良いので、5年程で植え替えると良いでしょう。

食べる羊料理などの肉料理によく使われるほか、ローストした野菜に混ぜたり、シチューに加えて香りを楽しみます。夏の間にたくさん収穫した時は、酢やオイルに入れて香りをつけたり、乾燥させて保存します。


TARRAGON タラゴン

タラゴンとは小さなドラゴンを意味するラテン語の『dracunculus』がもとになっています。根の形がドラゴンに似ているため、あるいは風味が強いためなど諸説あります。毒蛇などに噛まれた傷を癒すと考えられていました。

育てるタラゴンは半耐寒性の多年草で、収穫は初夏から秋にかけて。タラゴンにはフレンチタラゴンとロシアンタラゴンの2種類あります。香りが秀でているのはフレンチタラゴンです。フレンチタラゴンは花が咲かず種ができないハーブなので、苗、株分け、挿し木、または地下茎で増やします。ロシアンタラゴンは種からでも育てられます。暖かく乾燥した場所でよく育ち、寒くて湿り気のある環境を嫌います。ポットでもよく育ちますが、土中の根が水平に長く育つので、根詰まりしないように十分な大きさのポットに植えるようにします。夜の水やりは避け、日中にしっかり行います。肥料をやりすぎると葉の味が落ちてしまうので注意が必要です。冬になり休眠状態に入ったら水はやらずに、土が乾燥した状態のまま霜の心配のない場所で育てます。成熟すると味が落ちてくるので、数年経ったら春に掘り返し、地下茎で増やすようにしましょう。

食べる鶏肉、子牛などの肉料理や魚料理、米料理などにも使われます。また、白ワインビネガーに2週間程浸して作ったタラゴンビネガーを、ドレッシングやマヨネーズに使うのもお勧めです。


PARSLEY パセリ

古代ギリシャでは、食べずにお墓の装飾に使われた一方、古代ローマでは好んで食用とされた他、宴の招待客のために花輪や冠が編まれました。明るい緑色で端が丸い葉のカーリーパセリと、濃い緑色の平たい葉で香りが強いブロードリーフパセリがあります。

育てるパセリは耐寒性の2年草で、1年を通じて収穫することができます。春から夏にかけて種をまきます。発芽には十分な湿り気と暖かさが必要で、発芽までやや時間がかかります。日当りの良い肥えた土と水を好みます。過剰な太陽光は苦手なので、夏は湿り気があり少し陰になる場所で、冬は日当りが良く寒気を防げる場所で育てると良いでしょう。ポットで育てるのにも適しています。十分に水をやり、常に葉を摘むようにすればキッチンの窓辺でもよく育ちます。黄色くなった葉は取り除いて新しい葉の成長を促します。2年目は早くから花を咲かせ種をつけてしまうので、1年草扱いで育てられることが多いです。翌年分の種が取れたらすぐに掘り起こし、翌春また新たに種を植えます。

食べるパセリは料理に幅広く使われるハーブで、味だけでなく栄養面でも優れています。ビタミンCなどのビタミンが豊富に含まれるほか、鉄分その他のミネラルも抱負で殺菌クロロフィルも含まれています。保存には冷凍がお勧めです。


SAGE セージ

「庭にセージのある家に住む人は老いない」という古い諺に用いられたり、古代ギリシャでは蛇に噛まれた時の治療などにも使われていました。古代ローマでは神聖なハーブとして儀式と共に収穫が行われたそうです。

育てるセージは耐寒性で常緑の多年草。1年を通じて収穫することができます。春まきで種から育てるか、春の終わりから初夏に挿し芽で育てます。種は霜の心配がなくなってから育てる場所に直接まきます。水はけが良くて日当りの良い、できれば乾燥している場所で育てましょう。葉が茂った状態を保つため、春に剪定して香りの強い新しい芽が出るのを促します。葉の成長を妨げないように、花はこまめに切り取ります。秋に剪定すると枯れることがあるので避けて下さい。木化するので4-5年で新しいものに植え替えましょう。水のやり過ぎに注意すれば、種類を問わずコンテナでよく育ちます。乾燥しやすい植物ですが、乾燥すると味が悪くなるので注意が必要です。葉の味は土の栄養度に応じて変わります。

食べる保存効果が高く、昔からソーセージ作りによく使われています。ハンバーグなど肉料理に加えたり、セージバターにして、パスタやニョッキに絡めて食べる方法があります。高温の油でさっとカリカリになるまで揚げれば、リゾットやスープの飾りになります。


THYME タイム

地中海地方からグリーンランド、東アジアまで世界中で生息しており、形も多種多様なハーブです。また歴史も古く、古代エジプトではミイラ作りにタイムオイルが使われました。また、古代ギリシャでは入浴や寺院に焚く香として使われたそうです。

育てるタイムは耐寒性で常緑の多年草。1年を通じて収穫することができます。コモンタイムとワイルドクリーピングタイムは種から育てられます。春の初め、霜の心配がなくなってから20cm間隔で浅くまきます。発芽まで少し時間がかかります。挿し芽で育てる場合は、春先から夏にかけて5-8センチの長さで。香りの良いタイムを育てるポイントは、水はけの良い痩せた土で育てることです。肥えた土で育てると柔らかくなってしまい、味が損なわれます。乾燥を好む植物です。日当りの良い場所で育て、水やりはぎりぎり乾燥する程度に行います。花が咲いたあとは、新しい芽の成長を促し、木化を防ぐために剪定します。寒い時期は屋内に入れるか、庭で1年草として育てましょう。冬の水やりは特に必要最低限にとどめます。ポットで育てるのにも適しています。

食べるタイムは常緑なので1年中収穫できます。保存用は、花が咲く前に収穫します。乾燥させたり、ビネガーや油に漬けておきます。タイムは消化に良く脂肪の分解を助けます。ブーケガルニの材料のひとつで、ストック、マリネ、シチューなどにもよく使われます。

(2013年10月号 Dengon Net)