ちょこっと まめ知識

知っておくとためになる、少し役に立つ雑学集

オーストラリアのお菓子な話 後編

 今回は、諸説ありながらも” 一応はオーストラリア発祥”といわれるお菓子全13種類を、その由来やエピソードと共に紹介する。”オーストラリアの甘くない歴史”を甘いお菓子と一緒に辿ってみよう。
今回は前編に引き続きのお菓子紹介だ。


意外なこんなものまで
パンプキン・スコーン - Pumpkin Scones

 よく店頭で見かけたり、食べたりしているものが、実はオーストラリアならではのスイーツだったりする例として、まず挙げられるのがパンプキン・スコーン(Pumpkin Scones)。

スコーンそのものはスコットランド発祥のもので、小麦粉、バター、牛乳、ベーキングパウダーなどで生地を作り、オーブンで焼くおやつまたは軽食。そこに、つぶしたカボチャを混ぜるとオーストラリア風となる。これは、クイーンズランドのジョー・ビヤルキ=ピータセン(Joh Bjelke-Petersen、第31代1968-87年)州首相の夫人、フローレンス(Florence Bjelke-Petersen)が、公邸を訪れる記者や高官を紅茶とパンプキン・スコーンでもてなしたことから有名になったものだ。後年、夫人が出版したレシピ本にも掲載されている。ちなみに、スコーンをフライパンで焼くパフタルーン(Puftaloon)はオーストラリア独自のもので、その昔、アウトバックを旅する人々が、オーブンの代わりにフライパンを使ったことから生まれた。


ラズベリー・ジャムがアクセント
ニーニッシュ・タルト - Neenish/Neinich/Nenische Tart

 ニーニッシュ・タルトは、ラズベリージャムとバタークリームが詰まったチョコとピンクまたはバニラ色のタルト。砂糖の甘味以外は殆ど感じられず、ラズベリー・ジャムの甘酸っぱさが唯一のアクセント?  最初のレシピは、1903年、タスマニアのDaily Telegraph紙上といわれている。初期のレシピでは、クリームにはとろみのついたカスタードが使われ、アイシングもコーヒーと白の2色(The Bunbury Herald、1913年)。

 その後、レシピはクリームはゼラチンで固めたもの、アイシングはピンクと白(Miss Drake’s Home Cookery 1929年)、カスタードクリームにコーヒーと白のアイシング(Miranda's Cook Book1932年)、カスタードクリームにチョコレートと白のアイシング(Country Women’s Association Cookery Book and Household hints 1941年)、と変遷を遂げ現在に至る。スペルも1964年まではNienish Tartsと綴られていた。1988年にSydney Morning Herald紙上でのその由来に関して”オーストラリアのアウトバック発祥の新事実発見”との記事が掲載された。これによると、NSW州の田舎町のRuby Neenishという夫人が1913年に発明したものとされている。おもしろいのは、突然のパーティー用に作ったため、ココアが足りず、チョコとバニラが半々になったというもの。Neenish夫人も話の真偽も未確認のままだそうだ。


ベーカリーでも見かける
ヘッジホッグ・スライス - Hedgehog Slice


ベーカリーでも見かける
ジェリー・スライス - Jelly Slice

 ヘッジホッグ・スライス(Hedgehog Slice)は、砕いたビスケットやナッツが入ったチョコレート味のスライスで、オーブンを使わずに手軽に作れることで人気がある。オランダ、ドイツにも類似のスイーツがある。そして、ゼリー、クリームゼリー、ビスケットベースの3層構造のジェリー・スライス(Jelly Slice)も、オーストラリア独自のものといわれている。砕いたビスケットに溶かしバターを加えたベース、コンデンスミルクベースのゼリー、クリスタルゼリーと3段階に分けて冷蔵していく。手軽なデザートミックスも販売されている。


緑のカエルはヘリテージ・アイコンに
フロッグ・ケーキ - Frog Cake

 ロッグ・ケーキ(Frog Cake)は、ジャムをはさんだ四角いスポンジケーキの上にバタークリームをドーム状に絞り、フォンダンで覆ったカエルの形のケーキで、アデレードのバルフォー・ベーカリー(Balfour Bakeries、1856年創業)で製造・販売されている。1922年にヨーロッパ旅行帰りのバルフォー家の1人がスウェーデンのプリンセスケーキにヒントを得て作ったといわれている。2001年には商標登録されると共に、南オーストラリア・ナショナル・トラスト(National Trust of South Australia)による南オーストラリア銀行(Bank South Australia)ヘリテージ・アイコンに選ばれた。

*写真:State Library of South Australia B 69989


簡単に作れるものも

オーストラリアのお菓子は、その風土のせいか大らかな国民性のせいか比較的簡単に作れるものが多いようだ。中でも、とびきり簡単でかつ(特に)子供のパーティーやイベントで定番のレシピ3つを紹介しよう。

難易度①

フェアリー・ブレッド - Fairy Bread

 白い食パンに塗ったバターまたはマーガリンの上にハンドレッド・アンド・サウザンド(Hndreds and Thousands)と呼ばれるカラーのスプリンクルをかけたもの。国内での最初のレシピは1979年出版のもので、1885年に出版された‘Robert Louis Stevensonの詩集A Child’s Garden of Verseの中のFairy Breadという詩のタイトルがヒントになっているといわれている。

作り方

 スライスした食パンの片面に、柔らかくしたバターまたはマーガリンを塗り、ハンドレッド・アンド・サウザンドを散らす。対角線上で半分、または4等分する。または、好みのクッキーカッターなどで型抜きをする。


難易度②

チョコレート・クラックルズ - Chocolate Crackles

 もうひとつ、ちょっとした騒ぎがあったのが、子供絡みのイベントでは定番のチョコレート・クラックルズ(Chocolate Crackles)。ライス・バブルとココナッツファインをチョコレート味のオイルで固めたもの。カリカリサクサクとしていて、日本ではロングセラー商品の” チョコフレーク”に似ている。
子供でも簡単に作ることができバリエーションの幅も広いことから、材料のコファ(Copha、1933年にオーストラリアで発売された、植物性油脂を原料としたショートニング)の広告にそのレシピが紹介されて以来、幅広い年齢のオージーに絶大な人気を誇ってきた。
レシピが最初に紹介されたのは、1937年のAustralian Women’s Weekly誌上のコファの広告内。コファはチョコレート・クラックルズ作りには、ライス・バブルと共に欠かせない材料で、しかも代用がきかないため、チョコレート・クラックルズの人気はそのままコファの売り上げに繋がっているともいえる。

 1940年代に料理本にレシピが紹介されているが、1953年にケロッグ(Kellogg’s)社が“チョコレート・クラックルズ”という名前を朝食シリアルとして商標登録。2003年には同社のライス・バブルのパッケージに長年印刷されていたレシピも登録申請されたことから、“自由にレシピが使えなくなる”とオーストラリア国内でちょっとした騒ぎになった。ライス・バブルの類似品対策だったと思われるが、結局、申請は却下されている。

作り方

 ライス・バブル2カップに対して、アイシングシュガー1、ココナッツファイン1、ココアパウダー1/4カップ、Copha1/2本(125g)の割合で、鍋または電子レンジで溶かしたコファにココアパウダー、振るったアイシングシュガーを加えて解かし、ココナッツ、ライスバブルを加えて混ぜる。パティケースなどに小分けに盛り、固まるまで置く。


難易度③

チョコレート・リップル・ケーキ - Chocolate Ripple Cake

 チョコレートビスケットとホイップした生クリームを交互に重ねて冷やしたもの。クリームの水分をビスケットが吸収し、ケーキのように柔らかな食感になる。冷蔵庫で冷やすことから、アメリカではアイスボックス・ケーキ、イギリスでは切り口の模様からゼブラ・ケーキと呼ばれている。

作り方

 チョコレート・ビスケットと、砂糖を入れて硬めに泡立てた生クリームを交互に重ねていく。最後に全体をクリームで覆い円柱形に整え、冷蔵庫で約半日冷やす。食べる前にココアや刻んだチョコレートで飾り、斜めに2センチほどにスライスする。


参考ウェブサイト: W: https://slll.cass.anu.edu.au/centres/andc, W: https://anzacday.org.au/, W: http://www.australian-information-stories.com/, W: http://australianlamingtons.blogspot.com/, W: https://balfours.com.au/, W: https://www.cooksinfo.com/, W: https://www.food.com/, W: https://www.glamadelaide.com.au/, W: http://www.heatherbraeshortbreads.com.au/, W: https://ifood.tv/, W: https://www.kelloggs.com.au/en_AU/home.html

(2015年1月号 Dengon Net)