クリスのオージースラング教室

英語の歴史や文化をふまえ、オーストラリアのスラングをご紹介。

クリスの使えるオージースラング教室 VOL.7

 ただの比較級だと思われているかもしれませんが、"as" はオーストラリアでは比較だけでなく、強調・確認・疑惑を表すときにも使います。オージースラングには、"as" をベースとしている言葉が多く、トップ5に入るほど多用されています。

 日本語の「めっちゃ」や「超」と同じくらい不可欠な存在で、オーストラリアでは "as" がなければオーストラリアン・イングリッシュがないといえるほど大切です。この "as" の使い方さえ押さえれば、オージースラング達人の道への大きな一歩になると思います。

今回は「as」

 先月、オーストラリアの環境と "She'll be right" 意識の影響で、オーストラリア人はできる限り言う必要がない言葉や表現を使わないことを紹介しました。このリラックスした感覚、簡潔性は "as" にも表れています。

 学校では英語で比較するとき、一つの "As...as..." という文法が教えられています。"As hot as hell"(地獄と同じくらい暑い! )や "It was as fast as a rocket" というように使い、簡単に何かと何かを比べます。

 ところが、常に何かと比較することは面倒臭いようで、そこはオーストラリアらしく短縮。その何かと比べているものは相手の想像力に任せます。たとえば、上記の "As hot as hell" は一般的に、"Hot as!" と使います。短縮すると形容詞の意味も強まり、この言い方で強調と比較は同時にできます。"That chick/guy was hot as!"、"Mate, last night I was drunk as!" というように使用できます。

 上記の(...as)で作られた "Sweet as!" というオーストラリアン・スラングもあります。イギリス、アメリカでも、"Sweet!" は「ナイス!」や「OKです!」という意味で使用されていますが、オーストラリアでは "as" を付けるのが普通。"Do you wanna get a beer after work?" "Yeah. sweet as!" と言う風に使います。

 もう一つは "As if!"。"As if" は口答えの言葉で、子どものころ、大げさに言われたときに使い、相手の話を疑っていることを表すための俗語でした。"As if!" は "As if that could ever happen!" の省略で「ありえない!」という意味です。大人になるとさほど使わないのですが、子どものように冗談ぽく言うこともあり、CMやコメディー番組などで使われています。一般的に、"You'll never guess who I met at the weekend - George Clooney!" "Yeah, as if!" というように使えます。

 最後に、"as you do" という言い方を紹介したいと思います。英語で少し変わっていることや、変なことがあるとき、冗談ぽく普通の振りをして説明することもできます。 "I threw my computer out of the window, as you do, then I realised I had left an important disc in the drive" というように言えます。また、自ら発言する間投助詞としても使えます。友人が面白い話をしているとき、次のように言ってみては? "I was driving down the wrong side of the road" "As you do..."。

 来月は"Mate!"です。お楽しみに!

● オーストラリアで見かけた面白日本語 ●

変な日本語の刺青やTシャツはまだまだたくさんあるので、今月も紹介したいと思います。

● 刺青編

野恐い強い(首の後ろに入れた刺青)もしかして、この人は野原に住む、強くて恐い幽霊みたいな人なのかな。実は "Wild, Scary, Strong" という意味で入れたようです。

(オーストラリア人の上腕部に入っていた刺青)太ってないのになぜ?そのことをみんなに教えたいのでしょうか。意味がわかっているのか不明です。

罪人(オーストラリア人の腕に入っていた刺青)本人に「刺青の意味がわかりますか」と聞くと「Bad boy! だろう!」と誇らしげに言いました。確かに "Bad boy" と言えば言えなくもないのですが…。

● Tシャツ編

馬鹿外人(Tシャツに書いてあった日本語)ネタとして着ていたか、本当に意味が分からなかった、永遠に謎です…

侍の奥さま(オーストラリア人のおばさんが着ていたTシャツに書いてあった日本語)二つの可能性しかありません。一つは、旦那さんが侍のような人でTシャツで誇りたい。もう一つは、タイムマシンを持っていて、本当に徳川時代の人です。どちらにしても面白い。

Chris Nicholls(クリス・ニコルス)

 父はイギリス人、母は日本人。日本で生まれ、幼少期をイギリスで過ごす。その後、家族でオーストラリア移住。英語教師の資格(CELTA)を取得し、日本の英会話学校で英語教師として2年勤務。2007年からはジャーナリストとして活躍。日本語も堪能なので、日本人が間違いやすい英語の指導に自信あり。

(2006年10月号 Dengon Netより更新)