クリスのオージースラング教室

英語の歴史や文化をふまえ、オーストラリアのスラングをご紹介。

クリスの使えるオージースラング教室 VOL.3

 6月に入り冬本番になってきました。暖かいベッドから出にくくなったり、厚着と暖房が親友になったり、湯船が恋しくなったりするメルボルンの冬。

 しかし、オーストラリア全土、特にメルボルンには冬の到来で熱くなる人々がいます。なぜかと言うと冬はAFL(オーストラリアン・フットボール・リーグ)の本番です。AFL通称フッティーは1858年、メルボルン生まれのスポーツで、1896年のビクトリア州リーグの成立以来、多くの市民から熱狂的に支持されているスポーツです。メルボルンの第2の宗教といえるほど大事な存在です。

今回は「フッティー・スラング」

 フッティーは歴史、文化共に強い結びつきがあるので、オージースラングにも影響を与えています。今月は、そんなフッティーにまつわるスラングを皆さんに紹介したいと思います。

 1つ目の言葉は "Carn" です。テレビや生でAFLを見るたびに "Carn the Cats!" とか "Carn the Hawks!" などチームの名前の前に必ず出てくる言葉ですが、いったいどういう意味なのでしょうか。ビックリするかもしれませんが、実はこれ、応援で最も使用されている言葉 "Come on!" 「行けー!」の省略です。
皆さん、"Come on!" を大声で "m" を抜いて言ってみてください。"Carn" と似ているような気がしませんか。はい、それは "Carn" の元なのです。AFLを好きになって、自分の贔屓なチームが登場したら、同じように応援してみましょう!

 2つ目の言葉は、その贔屓チームについて尋ねられる際に出てくる言葉です。"Which team do ya barrack for?" と聞かれたら「Barrack、兵舎?」と考えてしまう人がいるかもしれませんが、実はもう一つの「応援」という意味の言葉です。(あるいは"Which team do you support? "という意味です)。オージールールのルーツがアイルランドのゲーリック・フットボールなので、このような北アイルランドの方言から来たスラングがあるのです。

 フッティーという言葉自体も、州によっては違うスポーツの意味になるので注意してください。New South Wales州とQueensland州では「フッティー」といえばラグビーで、多くの人々はAFLには興味がありません。以前あった「The Footy Show」というテレビ番組はビクトリアではオージールールズに関するものでしたが、NSWとQLDではラグビーの番組でした。

 次はAFLの生中継によく出てくる言葉です。最初は "Screamer"。"Screamer?" 「叫ぶ人?」と考えてしまう人がたくさんいるかもしれませんが、実はこれ、フッティーの特徴的な技に関する言葉です。チームメートの蹴ったボールを綺麗にキャッチすることは "Mark" と言いますが、宙へ高く飛んで、見事なキャッチをしたときは、"Speccy"(Spectacularの省略)と呼ばれ、さらに素晴らしい "Speccy" は "Screamer"(素晴らしさに叫んでしまう)と言われています。

 AFLは、社会への影響も非常に強く、"Handball" という技は政治や会社用語として使用されています。"Handball" とは片手でボールを持ち、空いている手をボールの先端に当てパスする技で、政治家や社員を批評する時に、「自分の責任をとらず、別の人に押し付ける」という意味合いで使います。仕事で無責任な同僚に対して意見する時 "He/she just keeps handballing the problem to someone else!" と言ってみては?

Chris Nicholls(クリス・ニコルス)

 父はイギリス人、母は日本人。日本で生まれ、幼少期をイギリスで過ごす。その後、家族でオーストラリア移住。英語教師の資格(CELTA)を取得し、日本の英会話学校で英語教師として2年勤務。2007年からはジャーナリストとして活躍。日本語も堪能なので、日本人が間違いやすい英語の指導に自信あり。

(2006年6月号 Dengon Netより更新)