RichmondのSwan Streetでトラムを降りるとすぐ、同行のマーケティング担当者のヘリーさんが指し示したのは、かわいいケーキ店でした。「5年前から提携して、この店のキッチンを実習用として使っています」との説明を聞きながら入っていくと、洋酒とケーキの甘い匂いが漂ってきました。
「今日はフルーツケーキを作っているんですよ」と迎えてくれたのは、パティシエ歴22年、この店のオーナーでもあるピーター先生。学生の一人が特大のボールに入ったケーキの生地を型に流し込むと、他の学生達が重さを量ったり、天板に並べたりして作業が進んでいきます。このケーキのデコレーションは翌日。学生達は器具の片付けや作業台の掃除を手際良く済ませると、11時前にはランチタイム。朝7時から始まった授業は、この後、前日に焼いたチョコレートマッドケーキのアイシングへと進むそうです。
調理実習はもちろん、配達された材料の受け取りから管理、ケーキの在庫管理、受注、発送処理、店舗での接客など、ケーキの製造販売をトータルで学べるのは、実際のケーキ店を使っているからこそ。「このキッチンの設備は最先端のものではなく、ごく一般的な業務用。だから、どんな現場に就職してもすぐに仕事ができますよ」とピーター先生。
続いては、昨年オープンしたばかりの同校自慢のSouth Melbourneのキッチンも訪ねてみました。
「シンク、オーブン、ストーブを1セットとして学生各人に与えています」という、ピカピカのステンレスが眩しいワークステーションでは、同時に83人が実習できます。先生のデモンストレーション用キッチンも二つあり、複数のクラスで同時に授業もできます。また、1階のカフェは、学生のワークエクスペリエンスの場として、週3日間、一般の人にも開放されているそうです。
同コースは1年間で Certificate Ⅲ in Hospitality(Patisserie)、更に半年間学ぶとCertificate Ⅳ in Hospitality(Patisserie)、最長の2年間でAdvanced Diploma of Hospitality Management(Patisserie Stream)の資格が取得できます。授業は週3日のフルタイムのみで、年4回の入学日が設定されています。
「卒業生のほとんどは就職先が見つかっていますし、在学中から9割以上の学生は関連業界でアルバイトをしながら経験を積んでいます」と、ヘリーさん。これはピーター先生の「オーストラリアのスタンダードに忠実に沿った、素晴らしいプログラム」という話を証明しています。
「教えることに必要なのは、情熱と忍耐力。特にいろいろな国からの留学生に教えることは、それぞれに理解の仕方が違うし、一番の壁は“言葉”かな。でも、デモンストレーションで解決できるからね」と豪快に笑うピーター先生。その横で、「留学生に対して細やかな指導ができ、先生と学生が相互に理解できる点は、ローカルの学生が大半を占めるTAFEのコースにはできない点ですね」というヘリーさんの言葉には、開校約100年の余裕が感じられました。