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ルボルン在住歴の長い人からは、「なんで今更!?」という声も聞こえそうだが、年末に日本から家族が来たり、身近な人達とディナーを楽しむのに、ブラドスというオプションがあることを知らない人がいたら、気の毒ではないですか。というわけで、知っている人には当たり前にすごいブラドスを改めて紹介することにした。
うっかりすると見過ごしてしまうような、目立たないドアだけの店構え。こういう店は要注意。よほど自信があるに違いない。ガラス越しに店内の様子を見せてアピールする必要がないのだから。初めてではないのに、ドアに近付くだけで、その迫力にちょっとドキドキする。店内に入ると、中はもちろん、窓がないのでかなり薄暗い。しかし、それがひと昔前のヨーロッパのどこかに行ったような独特の暖かい雰囲気を醸し出していて、殺伐としたパント・ロードのすぐ近くだなんてことは忘れてしまう。そう、ここに来たら、他のことは考えなくていい。さり気ない笑顔のウエイターさんが席を用意してくれる。飲み物が決まっている人は、それをオーダーする。迷う人はメニューを頼む。テーブルの上にメニューはない。この店には、ランチもディナーも関係なく、コース料理がひとつあるだけだから。これほどシンプルなレストランも珍しい。席に着いたら、ゆったりとした流れに身を任せるだけ。そんな、いつもと違った気分の、いただきます!
こじんまりとした店内の一番奥には、肉の入ったショーケースがあり、その後で肉を焼く鉄板を守っているのが、創業1964年のブラドスを支える、この店のオーナー、グレゴレック・ブラドさんだ。注文に応じて、大きな肉塊を切り分ける様子は、まさに職人。肉を見詰める眼差しに愛情が溢れていて、すでにおいしい気分になる。
テーブルには大きな丸パンとバター、コールスローが並ぶ。マスタード類も3種類揃っている。家庭料理のような健康的な大盛りだ。ドリンクを口に運ぶあたりで、アペタイザーの自家製ソーセージがやってくる。ぷりぷりと香ばしく、食欲をそそられるが、ここで注意すべきなのは、調子に乗ってパンとサラダを食べ過ぎないことだ。まだまだ序の口なのだから。
2番目に登場するのは、オントレーのミックスミート・セレクション。ポークネック、ミニ・ハンバーグ、アイフィレのグリル。あれ、ちょっと待って、メインはステーキだったよね…と、戸惑う気持ちはわかるけど、これはあくまで前菜の肉。それぞれの肉のバラエティーを楽しめる程良い大きさ。職人の店だけあって、ウエイターのエリオさんも、焼き手のグレゴレックさんも、お客さんの食べるペースをしっかり観察しているらしく、メインに備えてパンや前菜を残しても、スマートなタイミングでお皿を下げてくれる。でも、大きなパンをおかわりしている強者もいたので、自信のある方はご遠慮なく。
メインの前になると、お盆に乗った実物の肉のサンプルがメニューの代役を務める。アイフィレ、ポーターハウス、ランプ、和牛と並び、大小のサイズと焼き具合も選ぶ。和牛だけは特別料金がかかるが、あとはみんな一緒。柔らかいフィレか、大きなポーターハウスかは、お好みだ。ちなみにオーストラリアでステーキをオーダーすると、焼け過ぎのことが多いと聞くが、ここのミディアムには十分な赤みが残っていた。味はもちろん、シンプルに絶妙。
ここまでで満腹にならない人はいないと思うが、コースにはデザートとコーヒー/紅茶も付いている。デザートは、これまたシンプルに、ストロベリー・クレープかストロベリー&アイスクリーム。クレープも薄焼きで、さっぱりと楽しめるので、お腹がいっぱいでも諦めない方がいい。
2階には窓の付いたグループ席もあるが、大人数の場合は予約をした方がいい。また、例年、クリスマスから1月まで長い夏休みを取るので要注意。
ごちそうさまでした!