取
材に行く時は、いつも最初に店の人にお勧めを聞くことから始まり、その店の自慢料理や、これから売り出したい料理を出してもらって紹介するのが定番。でも八兵衛の取材では、話が違った。マネージャーさんから、「うちには特別なメニューはなくて、普通の居酒屋ですから…メニューを見て、好きなものを頼んでください」と言われて、ちょっとびっくり。
2階の席に案内されてメニューを開いてみれば、実はかなり豊富な内容。注文を取りに来たスタッフに助けを求めれば、親切な笑顔で彼自身のお勧めや人気メニューを教えてくれる。この店で働くことを楽しんでいる感じがいい。 スタッフを大切にする店は良い店だ。しかも、マネージャーさんの奥ゆかしさに反して、結構あるではないか、オリジナルメニュー。日本で友達と立ち寄る近所の居酒屋気分そのままに、気軽に食べたいものを選んでいるうちに、気分はワクワク。これぞ、居酒屋の本領発揮。そんな気分で、いただきます!
まずやって来た‘はちべえチップス’は、ひと味違った味付けでビールにぴったりだし、なすのはさみ揚げも天ぷら系で、今までにはなかったさっぱり味。焼き物も充実していて、店内の網で焼いているのが香ばしく、食欲をそそられる。その中からお勧めに従って、つくねと牛串を選んだ。香りに負けない満足感がお皿に乗ってやってきた。関西風のダシが自慢という天ぷらうどんも、関西出身の同行記者の期待を裏切らない味だった。
ウエイター君おすすめの和風ステーキも、げそから揚げも、十分な大盛りで、健康的なおいしさの居酒屋気分を盛り上げてくれる。メニューの品目と値段と味に裏切りのない安心感がいい。メルボルンにありそうでなかった、懐かしい日本の楽しさが並んでいく。
あさりバターにたこキムチ、肉じゃが、おひたし、焼き魚、もろきゅう、焼きそば、焼きうどん、野菜炒めにしょうが焼き、牛丼、かつ丼、うな玉丼にカルビ丼お茶漬け各種にしゃけおにぎり。ほら、なんでも揃っている。もちろん、すしや刺身もすしバーで本格的に作っているのが見える。
さらに三重の酒屋と独占契約をして、店名を冠した本格日本酒、焼酎の酒屋八兵衛シリーズのボトルも並ぶ。かなり本気で「居酒屋」を追及しているんだなあと認識し、ここに至って、最初のマネージャーさんの発言こそが、実はこの店自慢の「普通の居酒屋」の力の抜け具合なのかとなんだか納得。敬意を表して酒屋八兵衛も味見して、欲張って和風デザートまで満喫して、気分はすっかり盛り上がった。
取材に行った次の週、友人と連れ立って再び行ってみたら、金曜日だったこともあり、広い店内はすぐに満席。日本人グループはもちろん、普通のオーストラリア人のカップルや、アジア系学生グループも多く、幅広い客層の誰もが笑顔で楽しんでいるのが印象的だった。かなり混んでいるのに、日本人スタッフがマメに店内を歩き回り、追加注文への対応も早いので、安心して楽しめる居心地の良さを生み出している。これぞ複合文化国家オーストラリアに日本文化が貢献している図式で、ほほえましい。でも、開店して間もないのに、早くもこれほど人気が高まっているのは、ちょっと心配。予約をしておかないと、気軽に立ち寄れないかも。
さらに八兵衛では、お得なランチメニューも用意している。メイン、サイドディッシュ、サラダの3品を自分で選んで作るランチボックスも楽しくておいしいし、丼物やうどんも並ぶ。しかし、ここで注目なのは、女性限定のメニュー。丼物にミニうどんかそばが付いたメューも良いが、何と言っても、おすすめはミニちらし。このミニちらしは、ご飯こそ確かに少な目だが、上にのったネタは豊富で、「女性で良かった」という小さな幸せを約束してくれる。楽しい日本の庶民的食文化を味わえる場所ができたのは、嬉しいことだ。
ごちそうさまでした!