いつかの駅前の
懐かしい味が待つ店
ちょっと郊外にあるアットホームな雰囲気の日本食レストラン。特別なメニューはないのだが、暖かいおいしさの待っている店。他の店と何が違うのかわからない、でも何かが違う。今月は、そんな不思議な魅力を探求した。
上ちらし $25.50
ほうぼう薄造り$13
てんぷら(オントレーサイズ)$11
ぶりかま$16
寿司刺身盛り合わせ$39
次郎長
和風ステーキ$21.50
次郎長
あんみつ$11
次郎長
次郎長

529 Hampton Street, Hampton
03-9533-1399

営業時間:ディナーのみ
火~日
6:00~10:30pm
(第1日曜日は定休)

前、知人の紹介で初めてこの店に行った時、寿司を食べて驚いた。日本のどこかの駅前の商店街の、のれんをくぐった味がした。オーストラリアでは、この店以外で味わったことのない、まっとうな寿司の味。他の店の寿司がいけないわけじゃない。フレンチ風も、フュージョンもステキだけど、それではやっぱり何かが違う。この寿司を食べるまで、日本の寿司の味を忘れていたような気がして、新鮮な驚きが残った。今回はその謎を解こうと意気込んでの、いただきます!

まず、いきなりご主人のマサさんに聞くと、「いやー、別に普通ですよ」というそっけない答え。奥さんの孝子さんに聞くと「まあ、うちの主人は魚にうるさいから自分で見に行ってるけどねえ」と、少しは役立つ情報。でもやっぱりわからない。

とりあえずと席に着くと、待っていたように最初の1品、これがスペシャルのほうぼう薄造り。寿司バーの後ろでマサさんが作っていたのは、これだったのか。その歯応えと甘みが絶妙。素材の味を存分に活かしている。多分、魚の扱い方で味が違うんだろうなあ。そこがプロなんだろう。寿司の秘密の一端に触れた感じ。冷やした酒でもあれば、完璧。

続いて、てんぷら。カラッと揚がっていて、エビも大きく甘みがあって、野菜もそれぞれの味がして、やっぱり当たり前においしいてんぷら。店を手伝う息子さんが、休む間もなく笑顔でどんどん料理を運んでくれる。次は、スペシャルのぶりかま。肉厚の白身もたっぷり残っていて、脂ののった魚の塩焼き。これも素朴ながら味わい深く、二人でどんぶり飯が食べられる量。お約束の寿司に到達する前に満腹の予感。北海道出身で魚にうるさい同行の編集者は、ここでノックアウト。しかし寿司への期待が高まる。

その期待に応えるかのように寿司刺身の盛り合わせ、大きな船がやって来た。この寿司刺身は二人でもきついと思うほどの大きさ。えっ、試食なのに、もったいないっすよ! と声が出る。しかも日本人奥さん系に人気ナンバーワンメニュー、上ちらしまで一緒に出てきた。まずい、絶対に食べきれない。しかし心を落ち着けて、念願の寿司に手を伸ばす。やはり、記憶に間違いはなかった。編集者も同感。二人で分析したところによれば、まずシャリが適切。そこが基本。ごはんの粒がしゃっきりと輝いている。ネタの厚みや大きさのバランスもぴったり。目立たないところにも、当たり前の顔でしっかりと気を配る、日本料理の深みが感じられて、かっこいい。そして忘れちゃいけないのが、上ちらし。一見小さな丼だが、様々なネタが折り重なるように入っていて、ご飯はしいたけ味で、主役の風格十分。

ここでニコニコ顔のマサさんがやってきて、他に何を出そうかと言われ、もうかなりお腹がいっぱいなので、返答に困った。でも、ここまで読んだ印象は、きっと、「魚のおいしい店」。それじゃあ、魚以外もいってみようということで、和風ステーキ。霜降りの肉だけをいつもの店から特別に買っているというだけあって、柔らかくておいしい。上にのった大根おろし風味のソースは、その昔、銀座の洋食屋さんで食べたような懐かしい甘さ。息子さんに聞けば、「フルーツなんかを入れてお父さんが自分で作っている」そうだ。寿司だけじゃなくて、ソースまで作っていたとは。

デザートのあんみつも、フルーツソースがさっぱりとフレッシュで、通常のデザートの甘いしつこさがなく、日本食の締めとしてはぴったり。こんな、本来、女性の考えそうなソースまでも含め、てんぷらソースから餃子まで、この店の全てがマサさんの手作りなのだそう。この店の料理の一貫する、さり気ない暖かさ。そして家族的なサービス。日本に帰ったような気になる秘密の正体はこれだった。家族経営のこの店では、只今、従業員を募集中。まかないの味は保証付き。これは、うらやましいかも。

 ごちそうさまでした!