青い太陽が東の空を照らさなければ 私のこの黒々とした長い影はきっとあなたの元へは 届かないでしょう
今年のメルボルンの冬は、新型インフルエンザだか何だかで、風邪を引いている人が多い。あたしもその1人になっちゃったんだけど、以前なら電車の中とかでセキをしていても、それほど人目を引かなかったのに、新型インフルエンザ登場以来、なんだか警戒されているような、電車に乗っていちゃいけないような圧迫を感じてしまう。ましてやカフェなんかでセキをしていると、申し訳ないような。マスクをしている人はあまりいないので、ハンカチでごまかしているけど。それって考えすぎなのかなあ。
さて、今回はちょっとマジな話。オーストラリアと日本では医療システムや診断の仕方などにずいぶん違いがある。もちろん基本的に英語なのもあり、日常生活はともかく、医療関係の用語や説明には気後れしてしまうこともある。あたしは素人だから専門的なことはわからない。でも素人として受身の立場で感じることは、他の人にも共通していると思うので、あくまで素人の感想として読んでほしいんだけど。そして疑問などがあったら、専門家にきちんと聞いてほしい。手間を惜しまなければ、日本語のわかる医者や医療関係者も助けてくれるはず。
前置きはこのくらいにしよう。この国では場合によって、かなり安易に手術を勧められることがある。日本では、医者の診断は信用して従うものだと思っている人が多いし、英語では質問をするのにもためらいがあって、納得してしまう傾向にあるんじゃないかなあって、ちょっと心配になったので。ここからは、聞いた話。
メルボルンに住んでいる女性が、ちょっとしたきっかけで子宮の検査を受けたところ、子宮筋腫が見付かった。診断をした婦人科の専門医から、ある年齢以上の女性には珍しいことではなく、良性なら問題ないと診断されて安心し、半年後にまた同じ医者の定期検査を受けることになった。この2度目の時、なぜか医者の態度が変わっていて、「どうするつもりなのか」と聞かれ、手術を考えた方が良いような話をされた。その時は更に半年後、また検査をすることで納得した。が、その後、この2度目の検査の結果を見た医者から、筋腫が大きくなっていて心配だと言われ、「セカンド・オピニオン」として、友人だという別の専門医を紹介された。
2人目の専門医は、会った時から「手術をするしかない」という話で、放っておくと大きくなって手術が難しくなるし、腎臓を圧迫する可能性もあるし、ガンに変性する可能性も否定できないし、数が多くて筋腫を個別に取るのは大変だし、どうせ子供も生まないんだし、子宮摘出をしちゃえば楽になると言われた。納得しかねた彼女は、どうして筋腫ができるのかを聞いたところ、「わからないけどアジア人には多いね。(遺伝だから)母親をうらむんだね」と言われ、「軽くなってサッパリするよ」と言い切られた。その場で手術の日付を決められ、子宮筋腫と手術に関するパンフレットを1枚渡されて診断は終わり、受付で入院手続きの書類を渡された。
こんなに簡単に、自分の臓器を諦めていいはずがないと思った彼女は、迷った挙句、友人の紹介で全く別の専門医の診断を仰いだ。この医者は、彼女が検査を受けた検査機関から直接、2回分の検査結果のレポートを取り寄せ、目の前で並べて説明をしてくれた。確かに筋腫は大きくなっているが良性で、自覚症状もないし、問題もない。体調が落ち着くまでに3ヶ月から半年はかかるような、大きな手術を急ぐ理由は全く見当たらない。今後も定期検査を続けていればいい。特にアジア人に多いわけでもない…。
彼女がホッとしたのは当然だが、その後、恐くなった。だって不審を抱いて別の医者の診断を受けなければ、手術を受けていたはずだったから。
その後、手術を受けるはずだったクリニックに電話をして、「今は手術を受ける準備ができていない」と告げると、名前を確認されて、理由も何も聞かれず、「気が変わったら連絡してね」で終わり。まるでヘアドレッサーの予約変更みたいに簡単で、拍子抜けしたという話。
手術を勧めた医者に悪意があったとは言わない。それぞれの医者なりに判断基準が違っただけかもしれない。でも、何かの理由で、手術や難しい治療などを勧められることになった場合、結論を急がず、自分が納得するまで、別の医療機関でも診断を受ける勇気が必要な場合もある、って覚えていてもらえたらなと思って。