チャーリーくんエンコ事件は、まだ終わっていなかった…。
かっこいい白バイを涙目で見送って間もなく、反対側から、超大型の、見間違いようもない牽引トラックが登場。外に出て手を振ると、大きくUターンして目の前に止まる。出てきたのは、気の良さそうなおじさんで、「ちょうどリッチモンドにいたんだよ、運が良かったな」と笑顔で、「あんたの無事が何よりだったよ、それが第一だからね」と何度も繰り返し、なぐさめてくれる。「ちゃっちゃっと乗せちゃうから、助手席で待っててね」と言われ、大型トラックの見晴らしの良い助手席に乗る。ここで本当にホッとした。
作業を終えたおじさんにメカニックの名を告げると、何度か行ったことがあるから大丈夫との返事。おじさんの朗らかな人柄のお陰で、仕事に遅刻したことも「たいしたことじゃない」と思え、ちょっとしたドライブを楽しむことができた。やがて無事にメカニックの裏の駐車場に到着。そこで、おじさんは、RACVのサービスの一環のタクシーを無線で呼んでくれただけでなく、のんびり新聞を読むふりをして、タクシーが来るまで、ちゃんと見守っていてくれた。
チャーリーくんは止まっちゃったけど、やさしい人達に助けられて、心の暖まる体験ができた。やっぱり、メルボルンって、いかした所だねえ。
ちなみに、チャーリーくんのその後。休日のメカニックの裏に車を止めて、カギを入口のシャッターの下から押し込んで、月曜日の朝一番に電話をした。察しの良いメカニックのクライブは、電話に出るなり、「一体どうしたんだ? 俺はちゃんと中まで運転できたぞ」と言う。土曜日の顛末を話して、再度チェックしてもらった。彼は優秀なメカニックなので、かなりプライドが傷付いたに違いない。修理が終わったと聞いて、車を取りに行ってみると「情けない話だ」と言う。取り替えたコイルが不良品だったことが判明したそうだ。ちゃんと仕事をしても報われない時ってあるんだよね。もちろん彼は、作業を全部やり直して、でも請求書はなく、「お前のせいじゃないから」と追い払われた。それはそうだが、クライブのせいでもない。後日、冷えたビールを差し入れした。だって、休みの日にカギを挟んだだけで、ちゃんと意味をわかってくれるメカニックなんて、オーストラリアでは稀な話だもん、大切にしなきゃね。
友人のおっぽくんも似たような目に遭っていた。彼の場合はチャリくんだった。自転車通勤をしている彼は、わざわざ早起きをして、前日のパンクを近所の自転車屋で修理してもらい、仕事場に向かった。途中で変な感じがして、止まってみたら、修理したばかりのはずのチューブがはみ出し、危険な状況になっていて、それ以上、走ることはできず、戻ることもできず、結局、チャリくんはそこら辺に止めて、トラムに乗るしかなかった。仕事には遅刻するし、修理は次の日までおあずけ。自転車屋は、チューブを直してはくれたものの、迷惑に関してはチャラ。こーゆーことは、オーストラリアでは、よくある話なので、そんな時は諦めて、それをネタにビールでも飲むしかない…。
最後は、ほのぼのした話題で締めようかと思っていたら、別の友人のかえるちゃん(仮名)にも事件が起きた。しかも、あたしの目の前で。本人のリクエストもあって、ここで、その話を始めることになった…。
ある日の昼下がり、かえるちゃんは友達のあなごちゃん(これも仮名)とGPOのカフェでおいしいアイスチョコレートを飲んでいた。あたしが参加した時には、もう飲み終わっていて、場所を変えようという話も出たが、「まあいいか」と、そこで話を続けることにし、ドリンクを追加した。後で考えると、これが間違いだったが、まあ、しょうがない。
しばらく話した後、席を立とうとした、ら、かえるちゃんのバッグが消えていた! 足元のテーブルの下に置いてあったはずなのに、なくなっている。あたしも、あなごちゃんも、目の前に座っていたけど、不審な人物を見た覚えが全くない! あたしは、いつも神経質すぎるかもと自分で思うくらい、絶対、自分のカバンを身体から離さない。この時も、自分のカバンは足の間に挟んでいた。しかし、この事件を「目撃できなかったこと」を考えると、犯人があたしのカバンを持って行っても気付かなかったかもしれないと思うのだった。ボーゼン、で、つづく。