光と影の間に揺らめくあの浮遊物は、烏の黒光りする羽が持つ、あのやわらかさと恍惚感が吐き出した、私の愚痴のように見える。
さて、先月号のチャーリーくんエンコ事件の続き。メカニックから引き取られ、仕事に向かう途中で、またしてもエンコしてしまったチャーリーくん。
場所はセントキルダ・ロード。シティ行きの車線は4車線あって、右折しようとして一番右側の車線にいたので、大ピンチ。下がっていくスピードメーターをにらみつつ、最後の力を振り絞って、左側への車線変更をめざしたものの、一つ左へ動いたところで、押し寄せてくる後続車の波に押され、中央の2車線と脇の2車線が合流する、ちょっと広めのV字の辺りで、ブレーキを引く。なんとか斜めに止めるのが精一杯。一応、どちらの車線からも半分ぐらいは身を引いているものの、邪魔なことに変わりはなく、泣きそうな気分。唯一の救いは、土曜日の朝で、交通量が普段よりずっと少ないことだったが、交通量が少ないと制限速度なんか気にしない飛ばし屋がブンブン来るのも事実。試しにエンジンをかけてみるが、プスンともいわない。こんな時、頼りになるのが携帯電話。ほんの何年か前なら、ここで公衆電話を探すハメになっていたかと思うとありがたい。
修理を頼んだメカニックは、実は土曜日は休み。前日、仕事の後、相棒君が支払いをして、カギを受け取っておいてくれた。その朝は、彼の車でメカニックの所に取りに行って、ちゃんと発進するのを確かめて別れたばかり。家に電話をしても出るわけがなく、携帯にも反応がない。そうこうするうちにも、大型トラックが警笛を鳴らしながら、スピードも下げずに、横をすり抜けていく。「ごめんなさーい、でもどうしょもないんだよー!」と叫びたい気分。
頼みの綱は、RACV。電話に出た女性は、最初はちょっと事務的だったが、止まった場所を説明すると心配してくれ、すぐに牽引車を手配してくれる。40分以内に来るはずだから、がんばってねとやさしい言葉。彼女と話すうちに気分が落ち着いてきて、それまで自分がパニック気味だったことを自覚。「他に何かできることは?」と聞かれたので、「この状況では、車内にいるべきか、避難するべきか」と今更の間抜けな質問。「あなたの判断次第だけど、安全を確認したうえで、少なくともボンネットを開けた方がいい」と教えてくれた。なんて役に立つアドバイス。電話を切って、さっそく車の流れを見ながらボンネットを開ける。
やや安心と思って間もなく、白バイがゆっくりと隣に止まる。「えー、だって、何も悪いことしてないのにー!」と、またしても泣きそうな気分で窓を開けると、「もう連絡は付いているの?」と聞かれ、「RACVを頼んだ」と報告。「じゃあ、とりあえず脇まで押してやるから」だって。すごい、警察はやっぱり正義の味方だったのね!
この頼もしい警察官、白バイに青いライトを点灯させて安全を確保してから、車の後ろにまわって、うんしょって感じで押してくれるんだけど、これがちっとも動かない。一人じゃ無理なのかと思ったら、戻って来て、「サイドブレーキ」と渋い声。そうだよねえ、ブレーキがかかったままじゃ、動くわけないよねえ。苦笑してあやまって、再度、押してもらう。今度は無事、あっという間に道路の端に到着。「良かったね」とやさしい一言を残して、去って行く白バイ。かっこええー。まるでヒーロー映画。(つづく)
話が盛り上がったところで、また中断で申し訳ないんですが、ここで、ちょっとまじめな提案です。2月にビクトリア州で大山火事があったことは、ご存知の通りです。
ヤラバレー周辺でも大きな被害が出ましたが、実際には無事だったワイナリーや観光果樹園では、山火事報道の影響で観光客の足が遠のいて、苦しい状況に陥っているそうです。山火事で被害に遭った方々への義援金も大切だと思いますが、こういった長期的な影響も見逃せません。私が知っているのはヤラバレーの話だけですが、他の場所でも似たような状況だと思います。今月は、ちょうど実りの秋を迎えて、イースターやスクールホリデーもあります。観光に出掛けるついでに、山火事で苦労している地域を選んで、できる範囲で助けるのは、どうでしょう。もちろん、ちゃんと下調べをして、安全であることや、行き先の施設がちゃんと営業していることを確認した上での話ですが。家族や友人と楽しい時間を過ごすだけでなく、地元の人達とも暖かい交流ができるチャンスだと思います。