便利な花器を使う
茶道の起源は比較的よく知られているようですね。ところが生花の起源となると、実に様々な説があります。仏教起源説、神道起源説、道教起源説、いずれもひと癖あっておもしろい。生花の流派は千以上あるようですが、中にはかなり無茶な起源説を主張するところもあって楽しいものです。
実は、学者の間でも事情はさほど変わりません。ある華道史研究者の文章に驚いたことがあります。2002年に講談社から再刊された英書に収録されています。この方は生花の起源は神道だと主張されています。古事記でイザナギが穢土のイザナミから逃げる際、黒御鬘(くろみかずら)を投げつけます。これはつる草で作った飾りのようですが、これが生花の起源だというのです。ですから、仏教伝来時よりはるか以前、神話時代まで起源は遡るのだ、というのですね。「なるほど」などと感心していてはいけません。
古事記が撰録されたのが711年。仏教伝来以降です。古事記の随所に道教、仏教の影響がみられるのです。話の内容が神代のことであっても、話が記録された時点ですでに神道以外の影響があるわけですから、それほど単純な結論はできません。では、例えば「生花はどう始まったの?」と外国人に尋ねられたら、どう答えたらいいのでしょう。それについては、また次回。
今回の作例は、ちょっと横道にそれます。この欄では「花を留めることが大切だ」と言ってきました。しかし、「留めること」をそれほど気にせずに花を生ける方法はないものでしょうか?
実は、いくつかあるのです。最も手軽な方法は便利な花器を使うこと。例えば、細口の一輪挿し。特に工夫しなくても、思い通りの位置に花が留まってくれます。作例の花器も使いやすい物です。口が細いので花を2つ、3つ合わせて挿し込むと、ほぼ固定できます。あとは思い通りに挿すだけ。すっきり仕上げることもできるし、この作品のようにたっぷり盛ってもいいでしょう。
たくさんの花を使う時は、ごちゃごちゃにならないよう注意しましょう。全体がまとまり、つながりができるように工夫します。ここではガーベラのピンクとアスパラガスの緑がまとめ役を果たしています。