春 ―― 。日本では春になると、ぴかぴかの新入社員が真新しいスーツで社会人になる季節です。その前には、就職部、資料請求、会社説明会、OB・OG訪問など、日本の就職活動では耳慣れた言葉も、オーストラリアではまるで耳にしませんね。なぜか?オーストラリアには日本式の就職活動がないからです。じゃあ、どうすればいいの? ―― そんな留学生、ワーキングホリデーの皆さんのために、「就職のプロ」に聞いたオーストラリアでの就活、仕事探しをご紹介します。
求められる人材は経験者 ―― 英語力がないと非常に厳しい
アメリカのサブプライムローンに端を発する世界的な金融危機以降、オーストラリアでも就職状況はかなり厳しくなってきています。もっとも、シドニーやメルボルンといった都市部では人材募集の数は横這いなものの、「日本人向け」の募集となると少ないのが現状です。メルボルンの産業の特徴としては、日系の自動車工場があることから製造業、特に自動車関連が強いため、日本で製造業界での職歴があると有利と言えるでしょう。
TAFE、大学生は、週20時間という就労制限があるため、アルバイトがメインとなります。ただし、卒業後の将来を視野に入れての仕事探しをするならば、インターンシップ(就業体験)は非常に有益なうえ、募集もかなりあります。日本のような一斉就職活動の慣習がないオーストラリアでは、ローカルの学生は在学中のインターンシップやアルバイトを通じて、卒業後の就職につなげていくのが一般的。無給が大半ですが、「経験をお金で買う」という意味で、自分の専攻や目指すキャリアでのインターンシップを探してみましょう。
「生活しながら、働きながら英語を学ぼう」という考えで渡豪してきた人は、英語力の問題から、希望の仕事を見つけるのは難しいでしょう。しかも人事担当者には「ホリデー」のイメージが定着しているので、採用にはあまり積極的にならない傾向にあります。仕事を見つけた人は、すでにかなりの英語力を持っていた人と言えますが、ただし、ある程度の英語力があり、非常に特殊なスキルや知識、特にIT、自動車のメカニック、調理師、美容師などの分野で長年の経験があれば、可能性は大。または、努力とがんばりで道は開けるでしょう。
学生ビザのため就労制限があり、語学習得が目的の留学なので、英語があまり話せないとなると、日本食レストランなど、働ける業種はかなり限られてきます。それよりも渡豪目的に立ち戻って、学校での語学習得に集中した方が得策と言えるでしょう。コース修了後に日本に帰国するのであれば、TOEICのような(IELTSは日本ではあまり知られていません)目に見える英語の資格を手土産に、半年後、1年後の就・転職活動に挑んでいきたいものです。

英語力って、どれくらい必要なの?
就活では「英語が話せる」は大前提。ローカル企業ではもちろん、日系企業でも面接は英語がほとんど。そのレベルはというと、ネイティブ同士の交渉事をそばで聞いていて理解できる、意見できればなお可。生活上、何かトラブルが発生した時(例えば電話回線や電気・ガスの不具合など)に、先方に電話で連絡して自分で解決できるレベルであること。この時、自分の主張を通し、言いなりにならず、相手が悪ければ非を認めさせられる程度。語学学校のアドバンスレベルでは、実社会では通用しないことを忘れずに。

知っておこうオーストラリアの雇用形態
オーストラリアの雇用形態は、大きくフルタイム、パートタイム、カジュアルの3つに分けられます。フルタイムは日本でいう正社員で、週5日、38時間勤務。有給休暇や特別手当などが受けられます。パートタイムはフルタイムより就労時間が短くなる以外の労働条件はフルタイムとほぼ同じ。カジュアルはいわゆるアルバイトで、身分保障の類は一切ないものの、賃金はフルタイムより高めです。
クチコミが有効 ―― 人間関係を広げておく
大学在学中に皆がほぼ一斉に始める就活がないオーストラリアでは、頼りにできるのは自分だけ。ひと昔前に主流だった新聞の求人欄も今はインターネットとリンクしたうえ、取って代わられる状況になっています。情報戦は就活でも重要なポイントではありますが、よりレアな情報を求めるのなら「クチコミ」が威力を発揮。クラブや同好会、習い事などに積極的に参加して、友達の輪をどんどん広げておきましょう。
メルボルンならThe Age、Herald Sunなどの大手新聞の求人欄をチェック。特に水・土曜日の情報量が豊富。地元のコミュニティーペーパーやフリーペーパー、専門業界誌、日本語フリーペーパーなどからも、情報を得ることができます。
フルタイムからアルバイトまで、幅広い分野での仕事を紹介してくれます。専門の業種や職種別のエージェンシーも。電話帳で“Employment Service”の項目を参照。日系大手では、国内7つの支店を持つスタッフソリューション・オーストラリア。
ショップ販売、カフェ、レストラン、ホテルなどの接客業を中心として、店頭に求人募集の貼り紙のある店なら、基本的に履歴書持参でGO。ただし、事務職系はアポなしの訪問を「非常識」とみなされるので要注意です。
オーストラリアでは、実は最も成功率が高いのがこの方法という話も。学校の先生や知人・友達の紹介など、いわゆるコネクションの活用。多くの人が目にするマスメディアの情報よりも、自分独自の情報ソースの方が競争率も低く確実です。
在学中から職歴+コネ作りに励む ―― 自己分析で養う客観視点
学生時代がすべて就活 ―― オーストラリアに関していえば、決して過言ではありません。卒業証書を手にしてから、ビザを申請してから、では就活は遅過ぎます。卒業後の将来に向けて職歴を積むべく、長期休暇中の日本帰国を我慢して、インターンやアルバイトに精を出すのはもちろんのこと、徹底した自己分析をして自分を知り尽くしましょう。面接時の人事担当者に思い知らされる前に、「思い知っておく」のが得策です。
前述したように、オーストラリアでは経験がモノを言うため、新卒といえども在学中の職務経験は不可欠です。学期中は勉強で忙しいとしても、ホリデー中は学生ビザでもフルタイムで働くことができるので、インターンなりアルバイトで将来自分の進みたい方向の職種の企業で経験を積みましょう。3年間の学生生活で、通算1年分の経験になります。しかもその職場で先輩社員と仲良くなればコネもでき、卒業後の就活も断然有利に。
そして、徹底的な自己分析を。これは日本の学生は当然のようにしていること。これまでの自分中心の見方から、一歩下がって、第三者の視点で客観的に自分を評価してみます。それはまた、人事担当者という第三者の視点にもなるわけです。そのうえで、自分はどんな道に進み、何をしたいのか、目標の会社に入ったらどう貢献できるのか、と具体的に考えてみます。そして、最もポイントとなるのは「なぜ、オーストラリアに留学したのか?」。その必然性を説明できないと、面接ではマイナスポイントになります。
また、希望する企業から逆算して考えていくことも大切。自分の経験や生活を「その企業が求める人材」(企業のウェブサイトなどからリサーチできます)に近付けていきます。「私は、御社で働きたいので、こういうことをしてきました」と、具体的に説明できるようにしておきましょう。

485ビザって何?
正式にはSkilled-Graduate Temporaryビザ(サブクラス485)と言います。これは2年間の就学条件を満たしながら、Permanent General Skilled Migrantビザの条件に達しない留学生が、職業経験や英語力を身に付けるために18ヶ月間オーストラリアに滞在できるもの。申請時には、45歳以下であること、過去6ヶ月以内に2年間の就学条件を満たしている、技術職リスト(SOL)の50~60ポイントの専門職資格を持つなどの条件が必要ですが、就労や就学の制限がないので、新卒者の就活には非常に嬉しいビザです。

日本人に有利な業種・職種ってあるの?
男女問わずに“日本人がいい”職種として秘書または受付があります。これらは日本人独特の“気配り”“察する”といった、心の機微を読みとる文化的背景のある能力を評価したもの。はっきりとものを言う、言わないとわからない欧米人には、なかなか備わっていないものです。日本人ならば、とっさの時の通訳や翻訳業務もこなしてくれるので、使い勝手が良いという点もあることから、日本人が求められます。
一貫性のあるレジュメ作りを ―― とにかく会いたい気持ちにさせる
オーストラリアでは、大学生が一斉に就活を始めることがないので、就活に関する学生間の情報交換はできないと思っていましょう。誰もが個人で、しかも学生時代を通して就活をしていると言っても過言ではありません。
ご存知のように、オーストラリアには日本のような定型の履歴書はありませんが、ウェブサイトで様々なサンプルを検索することができます。とはいえ、「レジュメ作りに手を抜くほど就活は長期化する」ということを念頭に入れ、応募するポジションによって最低3種類の履歴書は作っておきましょう。
内容は、過去の経験や職歴(新卒者はアルバイトやインターン経験など)を、応募のポジションに向かって、「いかに一直線に導き、筋の通ったものにするか」です。具体的には、例えば、これまで営業や販売などの経験しかない人が、一般事務職に応募する場合、その営業職や販売職の中から、どんな小さなことでもいいので一般事務の部分をなんとか見つけ出し、履歴書の中でアピールする作業です。それは、サプライヤーと交渉したことや会議資料をまとめたことなどでも構いません。企業側は、募集職種に関係する部分しか読まない傾向にあるので、とにかく募集職種に重なる部分を集めて、相手に読んでもらい、会いたい気にさせる工夫をします。
(1)服装:男性はスーツにネクタイ着用、女性はかならずしもスーツである必要はありませんが、オフィスで働いて不自然ではない服装で。
(2)質問:志望動機、転職理由は必ず聞かれます。専門職ではかなり具体的な質問もされるので準備を。
(3)応答:オーストラリア人に対しては多少自信がなくても、「できる」と言いましょう。質問に答えながら、逆に質問をしていく要領で会話を作っていく努力も。好印象を与える、感じの良い受け答えをすることは言うまでもありません。
(4)評価:即戦力となるかどうか、その企業のカラーに合うかどうか、一緒に働きたい、または部下にしたいかどうかを見ています。面接官も人であることを忘れずに。
(5)時間に遅れる、ネガティブな発言(転職理由に、給料への不満、人間関係など)は避けましょう。
学生ビザからSkilled-Graduateビザを取得
日本の大学で電子工学を勉強した後、日本で約1年間、システムアドミニの契約社員として働きました。その後、オーストラリアの大学院でITを勉強し、去年の12月に卒業。最近新しくできたSkilled-Graduate Temporaryビザを申請したのと同時に就活を始め、就職先が見つかったのは約5ヶ月後です。インターネットのジョブサーチを中心に、自分の在籍する大学向けの求人募集を主な就活情報源にしていました。結局、応募したのは40社近くで、ほとんどの企業は電話やエージェントとの面接が第一段階。この時点で働けるビザがないと先へは進めません。日系、ローカルの企業共に、「英語力と永住ビザは持っていて当然」という感覚でいることに、遅まきながら驚かされました。英語力には自信があったし、IT、Web系の仕事はいくらでもあるとは思っていたものの、予想していた以上に苦戦をしたメルボルンでの就活でした。でも大切なことは、諦めたり、へこんだりしないこと。大学在学中から「自分の好きなIT関連の仕事をしながら、絶対にメルボルンで暮らしたい」という強い信念を持っていたことは、何よりも励みになっていたと思います。
昨年の11月にワーキングホリデービザで来てすぐに仕事探しを始め、ウェブサイトで約20社にレジュメを送り、唯一返事の来た1社は、ビザの種類で断られました。その後、レジュメを持って小売店を中心に15軒程回り全滅。諦めかけていた頃に、登録していたスタッフソリューションからオファーがあり、面接、採用になりました。今はアドミニストレーション・アシスタントとして働いています。日本では大学で英米文学を学んだ後、事務職を2年、フリーター、アジアの日系企業で広告営業、その後派遣社員として働いていました。英語力は、子供の頃にイギリスに6年間いたので、外国に住むことも併せてまったく抵抗はありませんでした。今回はチャンスがあって、仕事を見つけることができましたが、「どんな人でも努力していれば必ずチャンスがあり、そのチャンスも自分の決断力次第」ということを、メルボルンの就活を通して実感しました。と同時に、レジュメの書き方をしっかりと身に付けておけば、もう少し企業からの反応も良かったのではないかと反省もしています。就職の秘訣は、「事務職であれば何でもいい」くらいの気持ちで構えていたことかもしれませんね。
オーストラリアでの経験 ―― それを活かして日本で働く
何が何でもオーストラリアで就職したい人がいる一方で、やっぱり就職は日本で、という人も少なくないはずです。「オーストラリア=ホリデーの国」という、日本企業の固定観念を払拭すべく、就活支援団体を賢く活用してみましょう。
ワーキングホリデーや語学留学生は、英語圏のオーストラリアにいたからには、英語力が一番有利な資格といえます。渡豪前にそれなりの職歴があるならば、+αとして、キャリアアップにつながる可能性も大。まずは英語力を目に見えるものにするため、TOEICを受験しましょう。1年間の滞在なら800点、2年間なら900点以上が目安です。
「日豪就活支援会inメルボルン」は、「メルボルンで就活中の留学生同士のネットワーク作りに役立てたい」と、2006年に発足。これまでに、就活の概要、自己分析などをテーマに、ワークショップやセミナーを開催してきました。「日本人留学生の就活への意識は非常に低く、そのうえ、日本人人事担当者のオーストラリア留学生への偏見は根強い」と、代表の小川尊さん。「日本人留学生として誇りを持って就活に挑んで欲しい」というのが、同会の目標です。
詳細:
http://ngssmelb.blogspot.com
「オーストラリア留学生の就職活動必勝法」として、9月4日(金)にセミナーがあります。事前登録が必要。詳細: マイナビ国際派就職 http://global.mynavi.jp