お口の健康
歯磨き粉の歴史と使い方

古代エジプト(紀元前1550年頃)の歯磨き粉のことが、パピルスに詳しく記載されています。それによると、エジプトでは、4世紀頃には食塩・黒こしょう・ミントの葉・アイリスの花を混ぜ合わせた粉末の歯磨剤が使用されていたようです。古代ローマでは、動物の骨を焼いた骨灰や卵の殻を焼いた灰を用いて歯磨き粉を作ったとか。14世紀のフランスでは、蜂蜜と焼塩と酢を混合した歯磨き粉を使い、野生のハッカやこしょう入りの白ワインでうがいをしたとのこと。15世紀頃には、ニッキ(桂皮)等を入れたワインでうがいし、その後に、蜂蜜と砂糖の混合物や、野ウサギの頭蓋骨骨灰と焼き塩を蜂蜜で糊剤にしたもので磨いた話があります。歯磨き粉の中にワインや尿や酢を使ったのは、むし歯の原因は「歯を食う虫」であるという発想からでしょう。16世紀には、たばこの灰を歯磨き粉に応用したもの、18世紀のアメリカ合衆国では、焦げたパンを混ぜた歯磨き粉が使われていたことが明らかになっています。また、混合樹脂にシナモンや焦がしたミョウバンを混ぜた歯磨き粉もあったようです。

歯磨き粉が普及したのは19世紀に入ってから。その頃の歯磨き粉の多くは自家製で、チョークの粉・細かく砕いた煉瓦・食塩等がよく混ぜられていました。1900年頃になると、過酸化水素や炭酸水素ナトリウムを含むペースト状の歯磨き粉が勧められるようになりました。ペースト状の歯磨き粉そのものは、19世紀にはすでに売り出されていましたが、粉末状のものに取って代わるようになったのは第一次世界大戦が終わる頃のこと。現在のようなチューブに入ったペースト状の歯磨き粉は、1896年にニューヨークでコルゲート(Colgate)社によって初めて売り出されました。

では、歯磨き粉はどんなものがいいのでしょうか? 基本的には、歯磨き粉を使わなくても正しい歯磨き方をしていれば、歯と歯茎の健康に関しては、支障がないと言えるでしょう。歯を磨き始めた時から歯磨き粉を使うことが当たり前な私達は、歯磨き粉を使わないと歯を磨いた感じがしませんが、虫歯、歯周病の原因になる歯垢を落とすのはブラッシングの物理的擦過によるもの。一般的に歯磨き粉は、研磨剤、発泡剤、香味料、フッ素等を含みます。しかし、粒子が粗い研磨剤だと、歯の表面の大切なエナメルも削られてしまい、知覚過敏の原因になりますし、泡立ちを良くする界面活性剤は、敏感な人は口の中が荒れることもあります。香味料のミントの爽快感から、歯垢が落ちていないのに磨いた気になってしまう人も多いようです。歯磨き粉の種類はかなりありますが、一般的にどれも成分に大差はありません。フレッシュ感の為に使うようなものですから、少なめの使用がお勧めです。
(Dr.Jonathan Hartley)